- 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
- 小論文のネタを探している
- 合格者のアドバイスを受けたい
ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題文および設問は、下記にてご確認ください。
解答例
設問ア
1.ITサービスの概要と障害の状況
1.1.ITサービスの概要
私が担当したITサービスは、大手通販会社向けのコールセンターサービスである。私はITサービスマネージャとして、その品質とコストに全責任を負っていた。しかし、当サービスは、業界全体の競争激化を背景とした経営層からの厳しいコスト削減圧力下にあり、品質向上のための新規IT投資には極めて消極的な経営環境であった。また、営業部門は市場での成果が評価指標の中心であり、我々運用部門との連携よりもキャンペーンの迅速な展開を優先する傾向があった。その結果、複雑なキャンペーンの詳細が直前に通達されることも常態化しており、運用部門の負荷は常に高い状態にあった。
1.2.ヒューマンエラーに起因した障害の概要と影響
このような状況下で、オペレーターのヒューマンエラーに起因する「誤配送」障害が慢性的に発生していた。当初、私はこの問題を現場レベルでの注意喚起や再研修で対応可能な、日常的な運用インシデントの一つとして捉えていた。しかし、ある大型キャンペーンで誤配送が集中した結果、SNS上で「記念日のプレゼントが届かなかった」「返品手続きが煩雑すぎる」といった具体的な批判が拡散し、ブランドイメージを著しく毀損した。さらに、マーケティング部門から提示されたレポートで、キャンペーンの早期打ち切りによる機会損失が数千万円規模に上るという経営インパクトを認識し、私は自身の当初の判断が不十分であったことを理解した。これが事業継続を脅かす経営レベルのリスクであると認識を改め、直ちに根本原因の究明と抜本対策の必要性を経営層に報告し、その実行について承認を求めた。
(707文字)
設問イ
2.障害の再発防止に向けた分析と対策
2.1.根本原因の分析
当初の判断により対応が遅れた本障害に対し、実効性のある対策を講じるため、私は本質的な原因を特定する必要があると考え、以下の分析に着手した。
1)分析プロセスの課題と方針転換
まず、私は「注文受付システムの特定画面の操作性の問題」という仮説を立て、なぜなぜ分析を開始した。具体的には、キャンペーン商品のコード入力画面のユーザーインターフェースが複雑で、ミスを誘発しているのではないかと考えた。しかし、エラー発生状況とオペレーター毎のツール習熟度や操作ログを突き合わせても明確なデータ的裏付けが取れず、この仮説では原因を特定できないと判断した。この仮説では原因を特定できなかったため、私は現場のオペレーターを巻き込み、彼らの経験知に基づく、よりボトムアップでの分析に切り替えることを決断した。
2)協力体制の構築と根本原因の特定
現場への協力を要請すると、「責任追及されるのでは」という反発に加え、「多忙な業務の中で協力する時間がない」という現実的な声が上がった。私はリーダー層と粘り強く対話し、分析に参加することで業務手順が見直され、結果的に自分たちの業務負荷が軽減される可能性があるというメリットを具体的に提示した。その上で、分析への参加を正式な業務と認め、通常業務を一部免除することで、主要メンバーの協力を取り付けた。しかし、一部のベテラン層からは「過去にも同じようなことをしたが、結局何も変わらなかった」といった懐疑的な意見も聞かれ、組織全体の完全な合意形成には至らない状況での開始となった。こうした現場との対話の末に、我々は二つの根本原因を特定した。第一に「システム投資を抑制する経営判断」、第二に、それが生んだ「問題を報告しても改善されないという諦めと、問題を個人の責任とする組織文化」である。
2.2.制約事項を考慮した再発防止策
特定した根本原因に対し、私は理想論ではなく、現実的な制約の中で実現可能な対策を立案、実行した。
1)短期的対策の実施と発生した課題への対応
まず、恒久対策が完了するまでのリスク抑制策として、重要項目のダブルチェックを導入した。しかし、この策は平均処理時間(AHT)を著しく悪化させ、応答率に関する別のSLA項目に抵触しかけるという事態を招いた。顧客からは「電話が繋がるまで時間がかかりすぎる」との新たな不満の声が上がり始めた。この事態に対し、私は他チームのマネージャと交渉し、繁忙期のリソース貸し借りを条件に一時的な人員応援を要請するなど、緊急の対応を実施した。
2)制約下における中長期的対策の策定と実行
・対策1:限定的なシステム改修
経営層に対し、システムの抜本改修を提言した。その際、誤配送一件あたりの処理コスト(再配送料、人件費等)を算出し、年間発生件数と掛け合わせることで、投資対効果を定量的に示した。結果、承認された予算は当初要求額の8割であった。この制約下で、入力サジェスト機能など中核機能は実装できたものの、オペレーターの習熟度に応じて表示を変える高度な支援機能など、一部はやむなく次期フェーズへの見送りを決断した。
・対策2:限定的な組織連携の強化
営業部門に対し、キャンペーン企画段階からのITレビュー参加を強く求めたが、ビジネスの機動性が失われるとの理由で受け入れられなかった。最終的な妥協点として「月次での新キャンペーン情報共有会」を定例開催するという、限定的な連携強化の合意に留まった。これは完全な解決策ではないものの、今後の連携に向けた重要な合意点であると私は判断した。
(1518文字)
設問ウ
3.組織的な傾向分析と今後の課題
3.1.定性・定量データに基づく傾向分析
個別障害対応と並行し、私はより的を絞った組織改善を行うため、ヒューマンエラーデータの傾向分析に着手した。
1)定量分析における課題
まず、インシデントデータと人事・勤怠データを組み合わせ、エラーと経験年数や時間帯との相関分析を試みた。しかし、インシデント報告の入力ルールが統一されておらず、エラー原因の自由記述欄の表記揺れが激しかった。そのため、データのクレンジングとカテゴリ分類の正規化に多大な工数を要し、分析の初期段階は難航した。また、一部データに欠損も見られ、統計的に有意と言えるほどの明確な相関関係を見出すことは困難であった。
2)定性情報を活用した傾向の特定
分析が行き詰まっていた際、ある現場リーダーとの意見交換の中で、「経験の浅いオペレーターが、夕方以降に特定の複雑なセット商品の注文でミスが多いように感じる」というコメントを得られた。私はこのコメントをきっかけに、分析対象をその条件に絞り込んで再検証した。その結果、それまでノイズに埋もれていた傾向が明確に浮かび上がり、「経験1年未満のオペレーターによる、平日夕方以降の複雑なセット商品のエラー率急増」という、問題が集中する特定の状況を特定した。さらに、該当するオペレーター数名にヒアリングを行い、「夕方の疲労と焦りで手順を飛ばしてしまうことがある」という一次情報を得て、分析結果の確度を高めた。
3.2.分析から明らかになった組織的課題
この一連の活動を通じて、私は組織の課題を改めて認識すると同時に、サービスマネジメントに関する以下の気づきを得た。
まず、分析結果に基づき、新人のオンボーディング研修内容の見直しや、業務負荷が高まる時間帯の支援体制強化といった、的を絞った施策を実行し、一定の成果を上げた。しかし、今回の対策は大きな一歩ではあるものの、システム改修における機能の見送りや、営業部門との限定的な連携強化など、理想には程遠い。特に、根源にある「市場対応のスピードとITガバナンスの乖離」という経営レベルの構造的課題は、依然として未解決のままである。IT部門とビジネス部門の連携を強化し、この課題に継続的に取り組んでいくことが、今後の重要なテーマであると認識している。
また、今回の経験は、理想的な解決策を一度に目指すのではなく、限られた予算や組織間の利害といった現実的な制約の中で、実現可能な改善を段階的に積み重ねていくことの重要性を学ぶことができた。この経験を活かし、現場における継続的なサービス改善活動の実践的なアプローチを行っていく。
(1094文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
コメント