- 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
- 小論文のネタを探している
- 合格者のアドバイスを受けたい
ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題文および設問は、下記にてご確認ください。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要と環境の変化
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、大手企業向け高信頼性データセンターの運営管理である。本データセンターはティア4レベル準拠のファシリティとISO27001認証等の高度なセキュリティを特徴とし、ハウジング、ホスティング、マネージドサービス、プライベートクラウド(IaaS)等を提供している。国内3拠点、海外2拠点からサービスを展開し、キャリアニュートラルな接続性も有する。
主な顧客層は金融、製造、流通、大手SaaSプロバイダー等、ミッションクリティカルなシステムを運用する企業であり、管理サーバー総数は約5000台、契約ラック数は約1000ラックである。私はこのサービスの変更管理プロセス改善の責任者であった。
1.2.既存の変更管理プロセスに影響を与えた環境の変化
従来の変更管理プロセスに影響を与えた環境変化は、主に以下の3点だった。
1)クラウドサービスの普及と顧客要求の高度化
ハイブリッドクラウド構成の増加等に伴い、仮想インフラの迅速かつ柔軟な変更要求が急増した。従来の物理サーバー中心のプロセスでは、このスピードに対応困難であった。
2)サービス提供迅速化への市場要求の高まり
顧客のビジネスサイクル短期化により、基盤サービスにもプロビジョニング期間短縮が求められた。従来の時間のかかる承認プロセスがDevOps等の迅速な開発展開の足かせとなる懸念が生じた。
3)自動化技術導入による運用効率化への期待
コスト削減とヒューマンエラー削減のため、構成管理ツール等の導入で定型作業の自動化を推進した。しかし、自動化プロセスと人手による承認中心の既存変更管理との間にギャップが生じ、自動化の恩恵を十分に得られていなかった。
(752文字)
設問イ
2.変更管理プロセスの問題点と改善策
2.1.環境の変化によって変更管理プロセスに生じた問題点
先に述べた環境の変化は、従来の変更管理プロセスに以下の3つの主要な問題点を引き起こした。
1)変更要求の急増と種類多様化による承認プロセスの遅延
クラウド関連サービスを中心に、API経由での仮想リソース変更やネットワーク設定変更等、多種多様な変更要求が急増した。既存プロセスではこれら全てをCAB(変更諮問委員会)で画一的に審議するため承認キューが長大化し、軽微な変更でも提供に数日を要し、顧客の機会損失に繋がる懸念があった。
2)画一的で硬直的な変更評価基準による非効率とプロセスの形骸化
リスクや影響が小さい定型変更(例:監視閾値の微調整)にも、大規模変更並みの詳細な計画書作成と形式的なCAB審議を必須とした。結果、運用担当者は過大な資料作成負荷に疲弊した。この非効率は、不要な緊急変更申請の増加やDevOpsの迅速性阻害といったプロセスの形骸化リスクを招いた。
3)ビジネス機会損失リスクの増大と競争力低下への懸念
承認遅延や非効率は、ビジネス機会損失と競争力低下の懸念を生んだ。競合の迅速なサービス提供に対し、自社の対応遅れは新規顧客獲得や既存顧客満足度で不利になる可能性があった。具体的にはPoC環境構築の遅延等が発生し得り、経営層からも対応速度の改善要求があった。
2.2.問題点を解決するために実施した変更管理プロセスの改善策
上記の問題解決のため、経営資源の制約(特に人的リソースと時間)を考慮しつつ、以下の3つの改善策を実行した。
1)変更カテゴリの再定義と「標準変更」適用範囲の戦略的拡大
低リスク定型変更の承認プロセス簡略化とリードタイム短縮を狙い、CAB負荷軽減(人的リソース制約)と承認時間短縮(時間制約)を目指した。この実現のため、過去の変更・インシデント記録を分析し、影響が限定的で手順が確立された変更(例:仮想サーバーの定型スペックアップ)を「標準変更」と定義、ITサービスマネージャ等の承認で実施可能とした。特に工夫したのは、リスク評価マトリクスで標準変更候補を客観的に評価し、関係各部門とのワークショップで基準とリストの妥当性を合意形成した点であり、加えてこのリストは四半期毎に見直す運用とした。
2)リスクベースアプローチに基づくCAB運営の最適化
CAB審議対象を重要変更に集中させ審議の質を向上し、運営効率化と承認時間短縮(時間制約)を図ることを狙った。そのために、リスク評価基準を策定し、高リスク変更のみを全員参加の定例CABで審議、中リスク変更は小規模CABやメール審議とし、一部低リスク変更は事後報告とした。この運営の工夫として、変更計画書テンプレートを改訂してリスク分析記述を必須化し、アジェンダ・資料の事前配布を徹底、さらにCAB議長役を明確化しタイムボックス運営を徹底した。
3)DevOpsの特性に対応した新たな「迅速変更」カテゴリの新設
CI/CDパイプラインによる小規模・高頻度リリースへ迅速に対応するプロセス確立を狙い、開発と運用の連携強化、価値提供の迅速化(時間制約)、既存環境での実現(予算制約)を目指した。これを実現すべく、自動テスト済みで差分が小さい変更を「迅速変更」とし、開発・運用リーダー双方の確認と自動記録で承認完了とする軽量プロセスを定義した。特に工夫したのは、本格的なシステム連携が予算的に困難であったため、スプレッドシートとスクリプトによる簡易記録システムをPoC的に試行導入した点である。リスク管理としてロールバック手順の事前テストとリリース後の重点監視も条件とした。
(1538文字)
設問ウ
3.変更管理プロセスの改善策の評価と今後の課題
3.1.実施した改善策の評価
前述の改善策は、概ね期待通りの効果を上げ、データセンターサービスの競争力強化に貢献した。評価の要点は以下の3点である。
1)リードタイム短縮と処理件数増(定量的評価)
最大の効果は承認リードタイムの大幅短縮である。「標準変更」導入で定型変更の多くが平均4時間(約90%短縮)、「迅速変更」ではDevOps要求がほぼ即時承認可能となった。結果、月間変更処理総件数は約30%増加し、特にクラウド関連の対応速度向上は顧客ビジネスの俊敏性に貢献した。
2)サービス品質維持とインシデント抑制(定性的・定量的評価)
迅速化と並行し品質維持・統制も重視した。改善後半年で重大インシデント0件、SLA遵守100%を維持、軽微インシデントも約15%減少した。これはリスクベースのCAB最適化や手順明確化等の徹底が寄与したと分析する。顧客満足度調査では「サービス変更の迅速性」の評価が平均0.5ポイント向上し、加えて、年次の内部監査においても本プロセスの統制は有効に機能していると認められた。
3)運用効率と関係部門満足度の向上(定性的評価)
本改善活動は、ITサービス提供に関わる各部門の運用効率向上、並びに関係者の満足度向上にも繋がった。具体的には、変更管理担当部門ではCAB運営負荷が週あたり約5時間削減され、より戦略的な業務へ注力できるようになった。CAB構成員からも、審議対象が絞られ本来業務への影響が減り、審議の質も向上したとの声が寄せられている。特に開発部門からは、DevOpsによる迅速な開発が本プロセス改善で推進しやすくなったと評価され、DevOpsを促進する経営方針にも合致した。
3.2.改善活動における今後の課題と更なる改善
今回の改善は大きな成果を上げたが、変化する環境・技術動向に対応しプロセスを継続進化させるため、課題認識と更なる改善が必要である。
1)変更カテゴリ範囲の最適化とガバナンス維持
技術進化等による現行定義の陳腐化や、運用定着に伴う解釈拡大でのガバナンス低下リスクが考えられるため、レビュープロセス強化、判断基準明確化、逸脱検知モニタリング等で鮮度維持と形骸化防止を図る。
2)自動化連携の強化とプロセス完全自動化
「迅速変更」における一部手動作業残存と、ツール間データ連携不足による非効率という課題がある。これに対しては、自動化ロードマップ推進、API連携強化やAI活用も視野に効率化とエラー削減を目指す。
3)変更管理の組織的な浸透と継続的改善の定着
一部の新プロセスへの順応遅れや、改善活動のマンネリ化を防ぐための工夫として、啓蒙活動、ベストプラクティス共有、KPIに基づく目標を組織的に運用することで、自律的な継続的改善の定着を図る。
(1185文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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