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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問1 顧客満足を向上させるための活動について
ITサービスを提供する組織にとって、顧客満足は重要な関心事である。
顧客満足を向上させるには、顧客の期待と評価を把握して対応することが求められる。ITサービスマネージャは、事業関係管理における顧客とのコミュニケーション活動やサービスレベル管理におけるITサービス報告などの活動を通じて、顧客の期待と評価を把握する。
顧客とのコミュニケーション活動では、顧客の事業環境の変化に対する理解を深め、ITサービスの価値向上などに対する顧客の期待を把握することが必要となる。また、ITサービス報告では、状況に応じて変化するITサービスに対する顧客の評価を把握する。例えば、ITサービスに十分な価値があるとみなされなくなった場合、サービスレベル目標を達成したという報告を行っても顧客は不満足と感じることがある。
次に、把握した顧客の期待と評価の内容を分析し、顧客満足向上のための改善計画を策定する。例えば、
・顧客の事業環境の変化を背景としたITサービスの価値向上などに対する期待については、組織のサービスカタログを調査し、新サービスを迅速に提案できないかなど組織内の考えをまとめ、顧客に提案できる改善計画として取りまとめる。
・顧客に提供しているITサービスに対する評価については、満足度を数値で評価してもらい、評価の理由も確認する。顧客の期待と現状とのギャップを分析し、顧客満足向上のための改善計画を取りまとめる。
また、改善計画を顧客と討議し、合意することも重要である。改善計画にはKPIを設定し、計画の達成状況を把握することも必要となる。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、顧客の期待と評価を把握するためにどのような活動を行っているかについて、400字以上800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた活動から把握した顧客の期待と評価の内容をどのように分析したか。また、顧客満足向上のためにどのような改善計画を策定したか、設定したKPIを含めて、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた改善計画の実施状況と評価、及び顧客の期待と評価を把握するための活動の改善点について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要と顧客の期待・評価を把握する活動
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、中堅製造業A社向けの基幹システムハードウェア保守である。A社の基幹システムは生産・販売を担い、その停止は経営に深刻な影響を与えるため、安定稼働が最重要課題であった。保守対象は、A社のサーバー群(物理10台、仮想約20VM)及び関連ネットワーク機器であった。契約は24時間365日対応のオンサイト保守で、定期点検や予防保守も実施した。私はサービスマネージャとしてSLA管理や顧客報告を担当した。当時SLAは概ね達成していたが、障害時の影響は甚大であるため、未然防止への顧客の強い期待があり、改善への動機となった。
1.2.顧客の期待と評価を把握するための活動
A社の期待と評価を的確に把握しサービス品質向上に繋げるため、以下の活動を主導した。
1)定期的なコミュニケーション活動
月次報告会ではSLA遵守状況等を報告し、フィードバックや事業・利用変化(例:データ増予測)をヒアリングした。将来の期待を早期に捉え、能動的対応を可能にすることが目的である。
四半期レビュー会議にはA社情報システム部長も参加し、中長期的視点で評価や期待をすり合わせた。実績総括に加え、A社のIT中期計画等の戦略情報を共有いただき、事業への貢献と期待の認識を合わせた。
2)随時の情報収集活動
インシデント発生後のフォローアップでは、復旧後迅速に担当者へ連絡し、対応時間、スキル、報告、業務影響度を確認。影響大の場合は原因を共同分析した。SLA数値外の顧客感情や実態評価の把握が狙いである。
年1回の顧客満足度アンケートでは、サービス全般等を5段階評価と自由記述で収集。データを集計・分析し、個別対話で出にくい意見も吸い上げ、改善の客観的情報とすることが目的である。
(785文字)
設問イ
2.顧客の期待・評価の分析と改善計画の策定
2.1.顧客の期待と評価の分析
1)把握した顧客の期待
A社との対話で最も強く感じたのは、事業継続への切実な願いであった。事業規模の成長に伴い、基幹システム停止による経営への影響を強く懸念し、障害未然防止策の強化、特に予防保守の高度化とその成果の可視化を望んでいた。コスト効率化も期待していたが、安定稼働が大前提だった。
2)把握した顧客の評価
フィードバック分析によると、障害対応品質(技術力・速度)は平均4.2点と良好な評価だった。これは技術員配置と手順標準化が寄与したと考えた。対照的に、予防保守活動は「効果不明瞭」「交換基準の硬直性」等で強い不満があり、有効性満足度は平均2.8点と極めて低く、総合満足度向上が主要課題だった。
3)期待と評価の分析
期待と評価の分析から、解決すべき最重要課題は「予防保守の信頼性欠如」と判断した。重要度マトリクスでこのギャップが最大であることをA社と確認、信頼回復を最優先とした。なぜなぜ分析により、経験則依存・科学的根拠とデータ活用不足という計画の構造的欠陥を特定し、予防保守の抜本的改革が必須と結論づけた。
2.2.顧客満足向上のための改善計画
前述の分析結果を基に、改善計画の方向性をA社と協議。専用ツール導入も選択肢として提示したが、予算、内製化による将来性、A社の状況等を検討した結果、既存リソースの徹底活用による段階的改善計画で合意を得て実行に移した。追加予算なしで、1年以内の成果を目指した。
1)具体的な改善計画
A社の事業継続への期待に応えるため、分析結果から「科学的根拠に基づく予防保守推進と情報透明化」を最重要施策と位置づけ、計画を実行に移した。
・データ駆動型リスク特定と予防交換の実践
サーバー稼働データ等の多角的分析による、故障予兆検知の仕組み構築に取り組んだ。これにより客観的データでリスク部品を特定し、従来の画一的判断を改めた。特定部品については、A社とデータを共有し、交換の必要性・時期を共に検討、双方納得の上で最適時期に実施するプロセスを確立した。交換理由・期待効果もデータで明確に示し、A社の安心に貢献した。この取り組みは、経験則からの脱却とデータ駆動による的確なリスク管理によって、障害発生率を減らし事業継続を支援すると同時に、コスト効率改善も目指すものであった。
・予防保守活動の透明性向上と顧客との情報共有
この新しい予防保守の価値をA社に実感してもらうため、情報開示の徹底を進めた。月次報告会でデータに基づく交換判断の論理を説明、交換・経過観察部品の情報も共有した。作業後は詳細レポートを提出し、A社の信頼獲得に努めた。
・能動的な対話による改善活動推進力の醸成
これらの計画を成功させるにはA社の協力が不可欠であり、能動的な対話の場を設けた。既存の会議に加え、改善活動の意義を丁寧に説明し、理解と協力を得た。特にシステム変更・作業時の影響を最小限に抑える調整を徹底し、A社とのパートナーシップを強化した。
2)設定したKPIとその選定理由
改善計画の目標達成度を客観的かつ具体的に評価するため、以下のKPIを設定した。
・重要インシデント(A社合意定義)発生件数:前年比30%削減。
A社の事業継続性確保という最優先期待に合致し、月次で達成度を測定。
・顧客満足度『予防保守の有効性』評価点:平均4.0点以上。
A社の主観的評価の改善を年1回測定。
・予防保守の費用対効果:3倍以上。
予防保守にかけた費用の3倍以上の障害関連費用(復旧作業、機会損失等。過去事例やA社情報で試算)を未然に防げたかを示す。投資価値を測る補助指標とし、四半期毎に報告。
これらのKPIで進捗と効果を管理し、計画を適宜見直した。
(1596文字)
設問ウ
3.改善計画の評価及び活動の改善点
3.1.改善計画の実施状況と評価
1)「科学的根拠に基づく予防保守」の実施状況
この最重要施策では、まず主要サーバー5台の稼働データ等を収集・分析し、故障予兆の特定を目指した。当初はリーダーへの負荷集中や、旧型機から一部のデータ収集の自動化が難しいという問題に直面したが、メンバーのスキル底上げによる負荷分散や、代替指標の定義で対応した。分析の結果、約半年で冷却ファンの異常等の予兆監視を可能にした。例えば、この監視をきっかけに予防交換を3件実施し、計画外停止の未然防止に成功した。この成果は、工夫次第でデータ駆動型保守を実現できることを示し、重要インシデント削減にも繋がった。
2)その他の改善活動の実施状況
中核施策の効果最大化のため、透明性向上と積極的な情報共有も重視した。月次報告でデータに基づく予防保守の判断根拠を示した。また、ヒアリングを通して先回りしたITインフラの最適化提案は、アップセルに繋がり、パートナーシップ構築に貢献した。
3)KPI達成状況と総合評価
1年後、主要KPI「重要インシデント発生件数」は前年比25%削減で目標未達。旧型機のデータ問題が主な要因だった。補助KPI「予防保守有効性評価点」4.1点、「費用対効果」3.5倍はいずれも目標達成。主要KPI未達も、顧客満足度向上、費用対効果、アップセル成果から概ね成功と評価する。成功要因はデータ活用と先回り提案、反省点は人材育成・体制整備の見積不足で、これが未達の一因と分析した。
3.2.顧客期待・評価把握活動の今後の改善
今回の活動経験から、「潜在的期待の把握」「収集した顧客の声の組織的活用」に課題があると考えた。以下の改善により、構造的・継続的な把握と迅速な改善に繋げる。
1)顧客体験の構造的理解
顧客体験の構造的理解を深めるため、「カスタマージャーニーマップ」の作成を試行する。この手法で、顧客のサービス利用プロセス全体を可視化し、各タッチポイントでの行動・思考・感情、特に顧客の潜在的な期待や不満(ペインポイント)を明らかにする。A社の主要担当者との共同ワークショップを年1回程度開催し、顧客の本音を引き出し、それを基に共に改善機会を探る。次年度上期に、私とリーダーで主要な保守プロセスを対象に試行し、効果検証後に本格導入へ繋げる。これにより、サービス全体のボトルネック解消や具体的なサービス改善に繋げる。
2)継続的な情報収集・分析体制の検討
上記に加え、顧客の声をより多角的に収集し組織として分析・活用する仕組みの強化も継続的な課題である。将来的には、簡易フィードバック収集チャネルの拡充やVoC分析基盤の段階的整備も視野に入れ、改善サイクルの更なる迅速化・高度化を目指す。
これらの改善活動を通じて、継続的に顧客満足度を高めていく。
(1200文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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