- 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
- 小論文のネタを探している
- 合格者のアドバイスを受けたい
ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題文および設問は、下記にてご確認ください。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要とヒューマンエラーによる障害
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、法人顧客向けのデータセンターサービスである。サーバハウジング、専用ホスティングに加え、24時間365日体制の運用監視を含むマネージドサービスを提供し、私はITサービスマネージャとして品質維持、SLA遵守、プロセス改善を担当した。当センターは約200社の顧客、約1,000台のサーバを管理し、多くが事業継続に不可欠なミッションクリティカルなシステムであり、極めて高い可用性と信頼性が求められた。
1.2.改善活動の対象としたヒューマンエラー起因の障害
改善の契機は、ある日の深夜に発生した、メンテナンス作業中の重大障害である。大手ECサイト運営A社様向け仮想サーバ群(10台)でネットワークの通信が約2時間断絶し、A社様ECサイトがサービス停止した。これによりA社様は多大な販売機会損失を被り、当社はSLAの月間稼働率99.99%を守れなくなる可能性に直面した。私は原因究明と復旧を指揮した。
1.3.ヒューマンエラーの内容
障害調査の結果、ネットワークの通信断は運用オペレータB氏(経験3年)のヒューマンエラーが直接原因と判明した。B氏はコアスイッチのリプレース作業中、A社様用のVLAN識別子を取り違え設定していた。具体的には、A社様の本番用VLAN識別子(例:100)を、廃止予定だった検証用VLANの識別子(例:101)と誤認していた。
私は、直接原因を以下の2点と特定し、これらの要因が重なったことで設定ミスが見過ごされ、重大障害へ発展したと認識した。
1)手順書上のVLAN識別子の表記が小さく誤認しやすいもので、B氏の確認が不十分だった。
2)B氏の「慣れ」による思い込みと、深夜の一人作業によるチェック体制不備が重なった。
(782文字)
設問イ
2.障害の根本原因分析と再発防止策
2.1.根本原因の分析
1)情報収集と状況把握
障害の根本原因分析を行うにあたって、まずは、障害報告書などの関連資料の収集と、B氏とリーダーへヒアリングを行った。顧客への報告期限が1週間と短く、人員も不足している状況のため、迅速かつ効率的な分析が必要だった。
2)直接原因の特定と初期仮説
収集した情報に基づき、前述の直接原因(手順書視認性、確認不足や慣れ、チェック体制の不備)を再確認した上で、より本質的な問題としての仮説を立てた。具体的には、「手順書管理プロセス」「オペレータのスキルやヒューマンエラーに対する意識管理」「深夜作業の体制自体」に課題があるとの仮説を立て、深掘りの対象とした。
3)根本原因の深掘り
直接原因の背景にある本質的な問題を特定するため「なぜなぜ分析」を実施し、「文字サイズなどの手順書作成基準の不備」「深夜一人作業の常態化」「ヒューマンエラーの知識不足」等の要因を特定した。さらに、これらが放置された原因を深掘りし、「経営層の品質投資判断の遅れ」「短期・効率を優先する組織風土」という構造的要因が背景にあると結論付けた。
4)根本原因と最重要問題
「手順書作成基準の不備」や「チェック体制の形骸化」といった根本原因の背景にある構造的要因の中でも、特に「経営層による品質への継続的な投資コミットメントの不足」が重要と判断した。なぜならば、このコミットメント不足が、現場におけるリソース不足の黙認や品質改善が評価されにくい人事制度といった問題に繋がり、結果として手順書不備やチェック体制形骸化を誘発し、今回の障害に至ったと分析したためである。
2.2.暫定処置と再発防止策
特定した根本原因及びその構造的背景を踏まえ、障害の再発を防止するための具体的な対策を短期的な視点と中長期的な視点から検討し、優先順位を付けて実施した。
1)暫定処置
障害の直接原因に対する暫定処置として、重要パラメータの視認性改善と高リスク作業のダブルチェック体制強化を実施した。具体的には、VLAN識別子等の手順書記載をフォント拡大等で修正し、深夜作業にはリモート確認プロセスを追加導入した。これらの措置は、顧客の信頼回復のために必須事項と考えた。
2)再発防止策
根本原因と構造的問題の解決に向け、効果と実現可能性を考慮し、以下を実施した。
・プロセス改善
手順書作成・管理プロセスを改訂し、視認性基準と第三者レビューを導入した。高リスク作業には自動化ツールを適用し、エラー削減と投資回収を見込んだ。
・スキル向上
ヒューマンエラー防止研修を定期化し、スキル評価とフィードバックで効果改善を図った。
・組織風土改革
作業ミスを積極的に報告できる文化醸成のため、個人攻撃をしないようにレビュー会議を主導した。
・構造的問題への対応
経営層の投資コミットメント不足に対し、品質向上のための予算配分と体制強化を効果予測と共に提言した。
対策において、特に工夫したのは、限られた経営資源下での効果最大化である。具体的には、研修の内製化でコストを抑制し、手順書改訂は段階的に実施した。例えば、改善タスクは部門横断WGを私が主導し、経営層への月次報告と現場協力の取り付けを行った。高信頼性を求める新規顧客獲得を通じた事業競争力向上という経営戦略への貢献が狙いだった。
2.3.対策の成果目標と期待効果
定量的な成果目標として、VLAN識別子の設定ミス等のエラーを1年で0件、類似エラーを全体で50%削減を実現し、品質向上、クレーム削減、SLA遵守を図る。また、この活動は組織の品質意識とオペレータの意欲向上という副次的効果も期待している。
(1558文字)
設問ウ
3.ヒューマンエラーの傾向分析と課題
3.1.ヒューマンエラーの傾向分析方法
1)分析対象データの収集と整理
組織全体のヒューマンエラー傾向把握のため、データセンター運用部門の過去2年間のデータを収集・分析した。対象はインシデント記録(ヒューマンエラー起因)、ヒヤリハット報告、作業変更・完了報告書である。これらから発生日時、担当者情報、作業種別、エラータイプ等を抽出し、スプレッドシートに統合、統一コードで分類し整理した。
2)傾向分析の実施結果
整理したデータを基に、エラータイプ別の発生頻度でパレート分析を実施。結果、全エラーの約75%が「確認漏れ」「手順不遵守」「思い込み」の3タイプに集中することが判明した。
また、経験年数とエラータイプの相関分析から、ベテラン層の「思い込み」によるエラーがシステム仕様変更時に多発しており、既存知識に囚われない新たな学びの機会を提供する必要性が高いと考えた。
3.2.主要なエラー傾向と背景
分析の結果、特に以下の二点が主要な傾向として判明した。
1)「確認漏れ」の多発
「確認漏れ」は経験等を問わず広範に発生し、特に深夜の定型作業で頻発した。背景には慣れや疲労、チェック形骸化、効率の追求や人員不足のプレッシャー等があると推察した。
2)スキルレベルに応じたエラータイプの差異
中堅オペレータは緊急対応時に「手順不遵守」、ベテランは仕様変更時に「思い込み」に陥るエラーが目立った。これらは応用力不足や過去経験への過信、リスク予見と対策の仕組みの欠如が背景にあると考えた。
3.3.組織的課題と今後の取り組み
1)スキル管理面
OJT中心の教育による知識・スキルの標準化不足や、特にベテラン層の知識が更新されないという問題があった。この背景には、即戦力育成を優先し体系的教育への投資を見送ってきた経緯がある。全オペレータのスキルを体系的に標準化・向上させる仕組みを構築することが課題であると判断した。
2)プロセス面
手順書の実態との乖離や陳腐化、確認プロセスの形骸化という問題があった。この背景には、手順書管理責任の曖昧さと、更新が評価に繋がらぬ人事制度がある。実効性のある手順書管理とチェックのプロセスを再定義し、組織に定着させることが課題と考えた。
3)組織風土面
ミスを個人責任と捉え報告しにくい雰囲気があり、組織的な学習機会が失われるという問題があった。この背景には、過去の過度な個人への責任追及が失敗を恐れる文化を醸成したことがある。失敗から学び再発防止に繋げる、建設的な文化を醸成することが課題と捉えた。
これらの課題に対し、データに基づく経営層への提言で、トップダウンでの改革推進と資源を確保する。また、部門横断のワーキンググループを主導し、実効性のある対策を推進する。
(1189文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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