【SM】平成23年度 午後Ⅱ 問3 – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問3 ITサービスの改善活動について

 ITサービスの現場では、サービスに影響を及ぼす重大な障害やサービスに直接影響を及ぼさない軽微なミスが発生したり、他方では、サービスに対して顧客から高い評価を受けたりするなど、様々な事象が発生する。ITサービスマネージャには、これらの事象に対して、適切な対応を行うとともに、対応を通じて得られた成果を組織全体に展開するなどのITサービスの改善活動を実施することが求められる。
①事前予防策や再発防止策を講じ、その成果を整理する
 軽微なミスが続いた場合は、基本動作や手順に問題はないかなど、全ての作業を点検し、重大な障害とならないように事前に予防する。サービスに影響を及ぼす重大な障害が発生した場合は、リリースのプロセスに問題はなかったか、障害発生後の対処は適切であったか、などの様々な観点から原因を究明して再発を防止する。その上で、対策の内容、検討の経緯、実施の結果などを成果として整理する。
②顧客から高い評価を受けた取組みなどを分析し、その成果を整理する
 満足度調査などで顧客から高い評価を受けた取組みや、高い目標を達成した取組みについて、評価の理由や目標達成の成功要因を分析する。その上で、取組みの内容、分析の結果などを成果として整理する。
③①、②で得られた成果を組織全体に展開する
 展開に当たっては、成果を発表する場を設けたり、組織全体への展開状況を確認したりするなどの工夫が必要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と、ITサービスの改善活動の対象とした事象について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた事象に対して実施した対応と得られた成果について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた成果の組織全体への展開について、工夫した点を中心に、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービス概要と改善活動のきっかけ

1.1.ITサービス概要

 私が担当したITサービスは、製造業向けの生産管理システムの運用管理である。年間取引額100億円規模、ユーザー数1000名以上が利用する基幹システムで、可用性要件は99.9%以上である。このシステムは、生産計画、在庫管理、受注処理などを一元的に管理し、企業の業務効率化と正確な在庫管理を実現している。24時間365日の運用が求められており、生産ラインと密接に連携して最適な供給と生産を支えている。

1.2.ITサービスの改善活動のきっかけ

 本ITサービスの改善活動は、主に「軽微なミス」「顧客からの高い評価」がきっかけとなった。

1)軽微なミス
 データ入力時の誤ったフォーマット登録や必須項目の未入力が月間平均150件発生していた。また、数値入力フィールドへの不正な文字列入力が月間約50件、操作手順の不理解による不適切なボタン操作(例:進捗を完了せずにタスクを終了する操作)も頻発していた。これらのミスにより月末の繁忙期に業務遅延やデータ不整合が発生し、月間約20時間の追加作業が必要となっていた。

2)顧客からの高い評価
 製造ラインの効率をリアルタイムで把握できるダッシュボード機能が、顧客から非常に高い評価を得た。この機能により、例えば、導入後の最初の四半期で生産効率が10%向上し、生産リードタイムが平均15日から13.5日に短縮したことなど、生産性の向上や問題発生時の迅速な対応が可能になったことを高く評価された。

 これらをきっかけにに、サービスのさらなる信頼性と顧客満足度の向上を目指した改善活動を開始した。また、活動の成果はベストプラクティスとして共有し、組織全体のITサービス提供能力の向上に繋げるようにした。

(776文字)

設問イ

2.ITサービスの改善活動

2.1.事前予防策の実行と成果

 システムの信頼性や業務効率を向上させるため、以下の事前予防策を講じた。

1)システム入力の自動化とチェック機能の強化
 データ入力プロセスにおけるヒューマンエラー(例:受注内容の転記ミスや数量の入力漏れ)を防ぐため、特定の業務に関する入力を自動化した。具体的には、手動操作を最小限に抑えるため、受注登録時に自動補完機能を導入した。また、入力内容をリアルタイムで形式チェック(例:注文番号の桁数や日付形式)する機能を追加した。「登録ボタン」のクリック前にユーザーがミスに気付くことで、業務効率を落とさないと考えた。
 導入後、入力ミスが月間150件から30件へと80%削減され、月末処理時間が平均40時間から25時間に短縮された。一方で、初期設定時にフォーマット基準を厳格化する必要があり、適応期間として2週間を要したが、オンラインマニュアルと段階的トレーニングにより円滑な移行を実現した。

2)ユーザーインターフェースの改良
 操作性や使いやすさを向上させ、誤入力を減少させるため、ユーザーインターフェースを改良した。具体的には、入力フォームのデザインを見直し、フィールドチェック機能を強化することで、不正確なデータが登録されることを防止した。改善の結果、操作ミスが50%減少し、ユーザー満足度が5段階評価で4.2から4.8に向上した。年間の作業時間を2,000時間削減できた。

3)ユーザー教育プログラムの導入
 定期的なトレーニングセッションを通じて、ユーザーに対して正しい操作手順を徹底的に教育した。新入社員向けには、システム操作マニュアルを動画化することで、学習しやすい環境を提供した。これにより新規ユーザーの習熟期間が2週間から1週間に短縮され、利用者がシステムに迅速に適応し、日常業務の効率化が可能となった。また、年間約300万円の研修コスト削減も実現した。

2.2.成功要因分析と今後の計画

1)成功要因分析
 顧客満足度調査の結果を基に、ダッシュボード機能が高く評価された理由(例:リアルタイムの在庫情報が確認でき、迅速な意思決定が可能になったこと)を特定した。特に、視覚的にわかりやすいデータ表示が、迅速な意思決定を可能にしたことが大きな要因であった。
 この成果により新規契約率が15%向上し、年間契約額が2億円増加した。

3)今後の改善
 成功要因の分析結果を踏まえ、下記の改善計画を策定し、経営会議で承認を得ることにした。

・リアルタイムデータの更新間隔の短縮
 データベースのパフォーマンスチューニングとキャッシュ機能の最適化により、ダッシュボードへの反映間隔を5分から1分に短縮することで、異常の早期発見を実現する。

・ダッシュボードのカスタマイズ機能追加によるUI改善
 生産進捗率など、20種類の指標から、優先度の高い5~10個を選択・配置できるカスタマイズ機能を追加する。また、指標間の相関分析グラフや、閾値超過時のアラート設定など、ユーザーの意思決定を支援する機能も追加する。部門や役職に応じた最適な情報提供を可能にすることにより、業績レビュー時間を40%削減を目指す。
 
・AI予測モデルの導入による在庫回転率の改善
 過去2年分の生産・在庫データを学習データとして活用し、需要予測の精度向上を図る。具体的には、季節変動や特殊要因を考慮できる機械学習モデルを構築し、週単位での需要予測を行う。これにより、在庫回転率を月8回転から10回転に改善し、年間2,000万円のコスト削減を目指す。

 これらの取り組みを次年度の開発計画に反映し、組織全体でのサービス品質向上に繋げることにした。

(1599文字)

設問ウ

3.組織全体への展開

3.1.成果の共有

1)施策進捗会議
 月次でのKPI評価会議を実施することにした。この会議では、品質監理部門、開発部門、運用部門の部門長が参加し、改善施策の効果測定と次の対策を決定する。具体的なKPIとして、顧客満足度、インシデント発生件数などを設定し、毎月の達成状況を確認する。例えば、「ダッシュボードの活用により、即時対応が可能になった」といった事例がPMOから共有されたことにより、効率的な進捗管理が課題になっていた部門の解決のきっかけになった。

2)成果発表会
 各部門の取り組みを共有する発表会を、半期ごとに全社規模で開催することにした。具体的には、施策進捗会議の中で全社展開すべき好事例と判断した事例を、発表会の場で共有する。例えば、「従来5時間かかっていた在庫データの更新作業が、システム導入後1時間未満に短縮される成果を達成した」事例を紹介した。この発表会は、類似課題を抱える他部門の業務改善のきっかけにする狙いがあった。事実、類似課題を抱える3部門が改善プロジェクトを立ち上げ、平均40%の工数削減を達成した。

3)社長賞の導入
 成果発表会で紹介された事例の中で、特に優れた取り組みを評価する表彰制度を導入した。例えば、「年間コスト削減を10%以上達成したプロジェクト」を対象に特別賞を授与した。成果発表会同様、この表彰制度は、他部門が同様の手法を応用するきっかけになるだけでなく、従業員のモチベーション向上にも繋がり、改善提案件数が前年比で30%増加した。

3.2.ITツールの活用

1)ダッシュボードの導入
 改善活動の成果をリアルタイムで確認できる、ダッシュボードを開発し組織全体に展開した。例えば、ダッシュボードのデータを基に在庫の過剰傾向を早期に察知し、調達スケジュールを修正することで不要なコストを回避したケースがあった。さらに、利用者からは「一目で成果が把握でき、次の施策の議論がスムーズになった」というフィードバックが寄せられた。

2)社内ポータルサイト
 成果発表会の資料やアーカイブ動画を、全従業員がアクセス可能なポータルサイトに掲載し、部門を超えた知識共有を促進するようにした。この取り組みは、他部門が参考資料として活用するだけでなく、閲覧数やコメント機能を通じて、他部門からのフィードバックを収集し、継続的改善のきっかけにする狙いもあった。
また、掲載資料には発表会で使用した以外の資料も、セキュリティの許される範囲内で組織全体に共有し、発表資料だけではわからない現場の知見を、他部門が効果的に利用できるようにした。

3.3.総括

 これらの活動を通じて、成功事例の波及効果を最大化することで、組織全体の成長と競争優位性を強化することを目指す。

(1197文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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