【SM】平成23年度 午後Ⅱ 問2 – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問2 キャパシティ管理について

 応答時間、処理時間などのITサービスの状況や、CPU使用率、ストレージ使用量などのITリソースの状況を常時監視し、現在及び将来のキャパシティに関する様々な問題に対して迅速かつ適切に対応することは、ITサービスマネージャの重要な業務である。 例えば、監視作業を通じて、次のような問題を発見することがある。
・特定の時間帯に、オンライン処理の応答時間が悪化する。
・特定のディスクにアクセスが集中し、Webアプリケーションがタイムアウトする。
・夜間バッチの処理時間が延び、翌日のオンラインサービス開始に影響する。
 このような問題の解決に向けて、リソースの増強、システムのチューニングだけでなく、サービス内容の検証、業務内容の見直し提案などの様々な角度から、複数の対応策を検討する必要がある。実施する対応策の決定に当たっては、問題の重要度や緊急度、対応策の作業難易度や作業期間、費用などを総合的に評価しなければならない。
 また、問題への対応策の立案・実施に加えて、キャパシティに関する要件の把握方法の改善、リソースの増強要求のキャパシティ計画への確実な反映、リソースの監視方法の変更などのキャパシティ管理方法自体の見直しを行うことも重要である。

 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と、監視作業を通じて発見したキャパシティに関する問題及びその問題によるITサービスへの影響について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた問題の解決に向けて検討した対応策を列記せよ。また、実施することに決定した対応策の内容と、そう決定した理由は何か。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問アで述べた問題に関連して行ったキャパシティ管理方法自体の見直し内容について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービス概要とキャパシティ問題

1.1.ITサービス概要

 私が担当したITサービスは、中小規模の製造業向けにクラウド基盤上で運営される生産管理システムの運用管理である。このシステムは、製造業務の効率化を目的としており、生産に必要な人員、設備、材料の最適化を支援し、在庫状況をリアルタイムで把握できる機能を提供している。主な利用者は製造現場の管理者と物流担当者で、迅速な意思決定と生産計画の柔軟な調整を可能にすることを目指した。システムの基盤では、CPU使用率、ストレージ使用量、ネットワークトラフィックなどのITリソースを常時監視し、安定したパフォーマンスを維持するよう努めていた。

1.2.キャパシティ問題の概要

 月末の受注締切時期に特定のディスクにアクセスが集中し、ウェブアプリケーションのタイムアウトが頻発する問題が発生した。具体的には、大規模なバッチ処理の実行時、ディスクI/Oが飽和状態となった。在庫データの一括更新と帳票出力処理が同時に行われたことが原因で、業務プロセス上の課題があった。システムの応答性能が著しい低下は、利用者の利便性が損なわれる問題であった。

 この問題は、ITサービスに以下のような深刻な影響を与えた。

・リアルタイム性の喪失
 製造現場の管理者が在庫状況を把握できず、正確な製造指示が遅延する。
・業務効率の低下
 物流担当者が必要な情報をタイムリーに取得できず、納期を守れなくなる。
・顧客満足度の低下
 顧客から信頼性に関する懸念が示され、クレームの増加による契約解消のリスクを高める。
・運用チームの負担増
 トラブル対応に多くのリソースを割かざるを得ず、本来の業務が停滞する。

 これらの影響は、長期的なビジネス継続性に悪影響を及ぼす可能性があるため、抜本的な対策が急務であった。

(800文字)

設問イ

2.キャパシティ問題の解決策
2.1.検討した対応策
 キャパシティ問題に対して、問題の重要度や緊急度、作業難易度、作業期間、費用を総合的に評価し、複数の対応策を検討した。具体的には以下の3つを検討した。

1)リソースの増強
 ディスクI/Oの飽和状態を解決するために、まずリソースの増強を検討した。具体的には、ディスク容量を増加させる、より高速なSSDに変更する、または複数のディスクに負荷分散を行う方法を考慮した。この方法は、物理的なリソースを強化することで、即効性が期待できるものの、費用が高くなる可能性があった。さらに、追加のリソース管理や監視体制を強化する必要があるため、実施には計画的な準備と時間を要する。

2)システムのチューニング
 システムのパフォーマンスを向上させるために、ソフトウェアやインフラの最適化を検討した。具体的には、データベースのインデックス設計を見直し、バッチ処理の効率を上げるためのクエリ最適化や、ディスクI/Oを減らすためのキャッシュ機能の導入を検討した。システムチューニングは、比較的短期間で実施可能であり、費用も抑えられるため、リソース増強と並行して行うことができる。しかし、限界があり、負荷が極端に高くなるシナリオでは効果が薄い可能性がある。

3)業務内容の見直し
 業務の見直しを通じて、システムの負荷を軽減する方法を検討した。特に、月末の受注締切時期に発生するディスクアクセス集中を分散させるために、バッチ処理のスケジュールを調整することや、在庫データ更新のタイミングを見直すことを提案した。また、ユーザーに対するトレーニングを強化し、システム利用の効率化を図ることも検討した。この方法は、システムやインフラの改修を伴わないため、費用はほとんどかからず、業務プロセスの柔軟性を高めることができる。しかし、根本的な負荷軽減には限界があり、他の対応策と併せて実施する必要がある。

2.2.決定した対応策と決定理由

 上記の対応策を検討した結果、次の2つの対応策を実施することを決定した。

1)リソースの増強(ディスクの高速化と容量増加)
 ディスクI/Oのボトルネックを解消するため、まずディスクの増強を行うことを決定した。具体的には、SSDへの変更と、ディスクの冗長化・負荷分散を行うことで、ディスクアクセスの遅延を軽減し、応答性能の向上を図る。この対応策を選んだ理由は、システムパフォーマンスの改善に即効性があり、特に月末のピーク時におけるディスクアクセス集中に対処するためには有効であると判断したためである。また、ディスクの性能が向上すれば、他のシステムリソースへの負荷も軽減され、全体的なパフォーマンス向上が期待できるからである。

2)システムのチューニング(データベースの最適化)
 次に、システムチューニングを実施することを決定した。具体的には、データベースのインデックス設計やクエリの最適化を行い、バッチ処理の効率を改善する。これにより、ディスクへのアクセスを最小限に抑え、処理時間の短縮を図る。この対応策を選んだ理由は、リソースの増強と並行して実施でき、比較的短期間で効果を上げることができるためである。また、システム全体のパフォーマンス向上が期待できるため、長期的にも効果を持続できると考えたからである。

 上記の対応策を並行して実施することで、キャパシティ問題に迅速かつ効果的に対応できると判断した。このアプローチにより、短期的な改善と長期的なパフォーマンス向上を同時に実現できると考えている。
 なお、業務内容の見直しは、後続の検討課題とした。業務内容の見直しは、根本的な負荷軽減には限界があり、システムやインフラの改修と併せての実施が必要と考えたためである。

(1597文字)

設問ウ

3.キャパシティ管理の見直し

3.1.キャパシティ管理上の課題
 実施したキャパシティ問題の対策により、キャパシティ上の問題はほぼ解消した。例えば、「夜間バッチ処理が予定通りに完了し、翌日のオンラインサービスに影響しなくなった」「データベースの最適化により、月次処理時間が短縮した」といった効果が見られた。

 一方、キャパシティ管理の見直しが必要となる、以下課題が明らかになった。

1)運用負荷の増大
 監視対象が増加し、監視データが複数ツールに分散した。例えば、ディスクI/Oのや、CPU負荷などが異なるダッシュボードで管理されており、運用チームの負担が増加した
2)キャッシュ更新タイミングの最適化
 キャッシュが更新されず、古いデータが参照されるケースが発生した。例えば、受注データがキャッシュされたままで、注文受付時に誤った在庫情報が表示されることがあった。
3)負荷予測精度
 急激な負荷増加や突発的なイベントにおいて、従来の予測精度では対応しきれない場面があった。例えば、季節の変動の影響を予測できず、システムリソースを圧迫するケースがあった。
4)継続的なキャパシティ評価の不足
 リソース需要や運用状況の変化から、長期的なリソース計画ができていなかった。具体的には、月末月初のような特定の時期に高負荷が発生することは予測できたが、長期的に安定したリソース管理ができていなかった。

3.2.キャパシティ管理の見直し

 以下のキャパシティ管理方法の見直しにより、長期的なシステム安定性の維持に努めた。

1)キャパシティ要件の把握方法の改善
 過去の利用データや運用実績を基に、今後のピーク時の負荷を予測する手法を強化した。具体的には、過去3年間の負荷情報から、特に高負荷の期間を抽出し、その要因を分析することにした。この結果、特定の時期やイベントで顕著に負荷が増加することが判明し、それに基づいたリソース増強計画が可能になった。

2)リソース増強要求のキャパシティ計画への反映
 定量的に示す指標を用いて、ステークホルダー間でのリソース増強の合意形成を容易にした。例えば、「CPU使用率90%超」といった閾値に達した段階で増強要求を提出するようにした。また、リソース増強の要求は定期的なレビュー会議で確認し、計画段階で必要なリソースを明確にすることで、急な増強が発生しないようにした。

3)リソースの監視方法の変更
 監視データを可視化し、状況を一目で把握できるようにした。例えば、CPU負荷やディスクI/Oの変動をダッシュボードに表示し、問題発生時には即座にアラート発行するようにした。これにより、問題発生時の対応時間が短縮した。

(1159文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

コメント