- 合格レベルの論文がどんなものか、具体的な完成形を知りたい方
- 自分の実務経験を「評価される論文」に仕上げる書き方のコツを知りたい方
- 設問ア・イ・ウそれぞれの役割と、論理的な文章のつなげ方を学びたい方
プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問
問題文および設問は、下記にてご確認ください。
解答例
設問ア
1.プロジェクト概要とコスト見積りに影響した不確かさ
1.1.プロジェクト概要とコスト要求事項
私が担当したプロジェクトは、従業員1千人規模の中堅製造業における全社ファイルサーバのクラウド移行であり、私はプロジェクトマネージャ(PM)としてこれを統括した。目的は、サーバ保守費の削減と柔軟な働き方の支援であった。主なコスト要求は、経営層からの5年間でのTCO15%削減と初期コスト3千万円以下、及び情報システム部門長からの既存要員での運用維持であった。
1.2.コスト見積りを妨げた二つの不確かさ
1)技術的な不確かさ:移行データ量が未確定
コスト見積り最大の技術的要因は、移行対象の「実質的なデータ量」が不明な点であった。10TBのサーバには不要・重複データが大量にあると見られたが、実態が不明なため、クラウド利用料と移行工数の見積り精度が低かった。私は、この不確かさが最大5百万円のコスト増を招くリスクがあると試算した。
2)組織的な不確かさ:ステークホルダ協力への懸念
コスト削減には全利用部門によるデータ棚卸しが不可欠だが、「全社協力を円滑に得られるか」という組織的な不確かさも存在した。特に製造部門は、過去の経緯から現場負荷を理由にIT部門主導の活動に非協力的となる傾向があり、この点はコスト目標達成を左右する重大なリスクと認識していた。
1.3.ステークホルダとの認識共有と協力要請
私は、まず技術的リスクの共有が協力体制構築において重要であると考えた。キックオフ会議に先立ち、ファイル分析ツールでサンプリング調査を行い、データの約30%が削減可能という客観的根拠を提示した。会議でこの結果を示し、予測活動であるデータ棚卸しがコスト削減に直結すると説明した結果、まずは予測活動の重要性について、ステークホルダの基本的な理解と協力の合意を取り付けた。
(794文字)
設問イ
2.不確かさへの対応計画とステークホルダとの合意形成
2.1.当初の予測活動計画とステークホルダとの対立
1)当初計画した二つの予測活動
私は、前述の技術的な不確かさを解消するため、二つの予測活動を計画した。一つは、全利用部門が主体となり2か月間で実施する「全社一斉データ棚卸し」。もう一つは、「データ移行に関する技術検証(PoC)」である。私は、この二つを実施することで、コスト見積り精度を大幅に向上できると考え、プロジェクト計画の主要な活動と位置付けた。
2)製造部門からの反発
しかし、この計画に対し、事前に懸念していた組織的な不確かさが顕在化した。製造部門長から、「現場の生産活動が最優先である。過去のITプロジェクトでも現場は混乱した。IT部門の都合で全社一律のデータ棚卸しを強制し、現場に負担をかけることは到底容認できない」という、過去の失敗体験に基づく強い反発を受けた。私は、この対立を放置すれば、他部門にも「協力しなくてもよい」という雰囲気が伝播し、データ棚卸しが形骸化することで、コスト削減というプロジェクトの根幹が揺らぐ重大な課題であると認識した。
2.2.ステークホルダとの対立解消に向けた調整と合意
1)複数対応策の比較検討と最適な選択
私はこの反発に対し、複数の解決策を立案し、客観的な観点で比較検討を行った。第一の案「経営層によるトップダウン指示」は、現場にやらされ感を生み、棚卸しの品質が著しく低下し、結果的に手戻りコストが最大100万円発生するリスクがあった。第二の案「IT部門による代行」は、我々がデータの要否を判断できないため誤削除のリスクが高く、非現実的であった。第三の案「製造部門への個別最適化」は、短期的な調整コストとして50万円程度の追加費用が発生するものの、現場の納得感を得て協力体制を再構築できる。私は、長期的な視点で見ればプロジェクト全体の品質と成功確率を高める上で、第三の案が最も合理的であると判断した。
2)製造部門への個別対応という解決策の合意
上記の判断に基づき、私は製造部門長と複数回の個別協議の場を設けた。そこで、データ棚卸しが彼らの業務改善(ファイル検索性向上や保管ルールの明確化)にも繋がるメリットを説明した。さらに、彼らの業務プロセスをヒアリングし、特に負荷が高い月末月初を避けて作業期間を設定することや、彼ら専用の簡易な操作マニュアルを作成・提供することを具体的な支援策として提示した。その結果、最終的に「我々の事情をそこまで考慮してくれるなら協力しよう」と協力を承諾され、対立は解消し、計画修正の合意に至った。
2.3.最終的に合意したコストマネジメントの主要計画
1)修正後の予測活動とステークホルダ協力の内容
製造部門との合意を反映し、当初計画を修正した。具体的には、「製造部門に限り、データ棚卸しの実施期間を他部門より1か月延長し、情報システム部門から専任のサポート担当者を1名アサインする」こととした。この担当者の人件費として50万円をプロジェクト予算から割り当てることも合意した。私は、この変更が他部門の不公平感に繋がらぬよう、全部門長会議の場で、特別対応の経緯と理由を丁寧に説明し、全社的な理解を得る配慮も行った。
2)再見積りの条件とコスト差異への対応方針
計画修正を踏まえ、再見積りのタイミングを「全ての部門のデータ棚卸し及びPoC完了後」と再定義した。また、差異への対応方針についても、サポート人件費50万円を正式なコストとして計上することで合意した。サプライヤとの価格交渉といった他の対応方針は、当初計画を維持した。
(1526文字)
設問ウ
3.実行段階でのコスト再見積りと差異への対応
3.1.再見積りの実施タイミングと予算差異の内容
1)再見積りのタイミングとその判断理由
私は、コストの見積り精度を最大化するため、プロジェクト開始から4か月後を再見積りのタイミングとした。これは計画段階の合意に基づき、PoCと、製造部門を含む全利用部門でのデータ棚卸し完了を待って実施したものである。製造部門への個別対応で当初予定より1か月遅れたが、これは許容したリスクの上での合理的判断であった。この時点で、コスト見積りに影響する全ての不確かさが確定値に変わり、最も精度の高い見積りが可能となった。
2)再見積りしたコストと予算との差異の内容
ステアリングコミッティにて、予測活動の成果を報告した。その際、ステークホルダの信頼を確保するため、プラス要因だけでなく、マイナス要因であるコスト増についても冒頭で包み隠さず説明した。まず、PoCの成功で高価な商用ツールが不要となり200万円、データ棚卸しで移行量が6.5TBまで削減され650万円、合計850万円のコスト削減効果があった。同時に、製造部門へのサポート人件費50万円というコスト増も報告した。
次に、確定した「6.5TBの5年契約」という要件を交渉材料に価格交渉を行い、さらに200万円のコスト圧縮に成功したことも報告した。
最終的な総コストは2,000万円となり、当初予算3,000万円に対し1,000万円のコスト削減という大きな差異が生じた。
3.2.承認を得た差異への対応策とプロジェクト評価
1)コスト削減額を原資とした価値向上策
私は、削減した1,000万円をプロジェクト価値の最大化と持続的成功に繋げる4つの対応策を提案し、承認された。
・セキュリティ強化:300万円
PoCで判明した高度な要件を満たすオプション機能を導入し、利用者の不安を払拭し事業継続性も向上させると説明した。
・全社利用者トレーニング:200万円
価格交渉で創出した資金を原資とし、プロジェクト本来の目的達成を確実にするための戦略的投資と位置づけた。
・コンティンジェンシー予備費の確保:300万円
移行本番での不測の事態に備え、プロジェクトのリスク耐性を向上させる。
・利益貢献:200万円
残額は全社への利益貢献とする。
2)プロジェクトの定量的・定性的成果の評価
本プロジェクトの成果は、定量・定性の両面から評価できる。定量的な成果は総コスト1,000万円の削減である。しかし私は、それ以上に定性的な成果が重要であったと考える。当初、最大の懸念であった製造部門との対立を乗り越え、最終的に彼らが強力な推進者となったことだ。この成功体験は、今後の全社DX推進における貴重な前例となり、組織の大きな財産になったと評価している。
(1190文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。





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