- 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
- 小論文のネタを探している
- 合格者のアドバイスを受けたい
プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
解答例
設問ア
1.ステークホルダのコスト要求と不確かさの影響
1.1.プロジェクト概要と役割
私は、大手小売業のDXプロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャとして従事した。
このプロジェクトは、店舗のデジタル化による業務改革を目的とし、予算20億円、期間18か月の規模であった。
具体的には、AIによる需要予測システムと、デジタルサイネージを活用した新たな接客支援システムの構築が主要な開発対象であった。
1.2.コストに関する要求事項と不確かさ
経営層からは、投資対効果(ROI)を2年以内にプラスにすることが要求された。
また、現場からは、既存業務への影響を最小限に抑えるため、段階的な導入を求められた。
不確かさとして、以下の3点が存在した。
第一に、AI需要予測の精度が不明確であり、追加の機械学習用データ収集や、モデルのチューニングコストが見通せなかった。
第二に、デジタルサイネージによる接客効果が不透明で、必要な端末数の確定が困難であった。
第三に、店舗業務改革の範囲が流動的であり、システム化範囲が変動する可能性があった。
1.3.不確かさの影響の共有
各不確かさについて、最小値・最尤値・最大値の3点見積りを行い、期待値と分散を算出した。
3点見積りを選択した理由は、単一の見積り値ではステークホルダの合意を得ることが困難であり、幅を持たせた見積りによってリスクの定量的な説明が可能となるためである。
また、WBSを用いて、不確かさが影響するタスクを可視化し、予測精度向上のためのマイルストーンを設定した。
どの工程でコストが変動する可能性があるかを具体的に示し、予防的な対策立案を可能にするためである。
(708文字)
設問イ
2.ステークホルダとの合意事項
2.1.予測活動の内容
予測活動として、以下の3点を計画した。
第一に、AI需要予測については、3店舗での2か月間のPoC(概念実証)を実施し、必要なデータ量と精度向上に要するコストを検証することとした。
第二に、デジタルサイネージについては、2店舗での1か月間の実証実験を行い、顧客動線分析から必要な設置台数を算出することとした。
第三に、業務改革の範囲については、現場部門との定期的なヒアリングを実施し、システム化範囲の優先度付けを行うこととした。
3つの予測活動を計画した背景には、以下の狙いがある。
AI需要予測のPoCを3店舗で実施することとしたのは、都心部・郊外・商業施設内の各特性を持つ店舗でのデータ収集が必要と判断したためである。
2か月間という期間は、季節変動の影響を考慮しつつ、早期にコスト見通しを得るためのバランスを考慮した結果である。
デジタルサイネージの実証実験を2店舗としたのは、最小限の投資で効果検証が可能な規模として選定した。
1か月という期間は、平日・休日の購買動向の違いを分析するのに必要な期間として設定した。
2.2.再見積りのタイミング条件
EVMを活用し、以下の条件時に再見積りを実施することとした。
第一に、PoC完了時点で、AIモデルの精度が目標値の80%を下回った場合。
第二に、デジタルサイネージの実証実験で、当初想定の設置台数が30%以上変動する場合。
第三に、四半期ごとのステアリングコミッティにおいて、CPIが0.9を下回る、またはSPIが0.8を下回る場合。
EVMの活用を選択した理由は、コストと進捗の両面から客観的な指標で再見積りの必要性を判断できるためである。
AIモデルの精度80%という基準は、業界標準の精度を参考に、費用対効果が見込める最低ラインとして設定した。
デジタルサイネージの30%という基準は、投資回収期間に重大な影響を与える閾値として算出した数値である。
2.3.ステークホルダとの協力内容
現場部門、情報システム部門、経営企画部門との間で、以下の役割分担を定めた。
現場部門は業務要件の定義と優先度付けを担当し、情報システム部門はAIモデルの評価指標の設定と技術的な実現可能性の検証を担当する。
経営企画部門は投資対効果の評価基準の設定と、予算調整の判断を担当する。また、月次での進捗報告会を設置し、各部門の視点での課題を共有することとした。
役割分担の設計には、以下の意図がある。
現場部門に業務要件の定義を担当させたのは、実務に即した優先度付けを行うためである。
情報システム部門にAIモデルの評価指標の設定を任せたのは、技術的な実現可能性と必要なリソースの正確な見積りを得るためである。
経営企画部門による投資対効果の評価基準設定は、全社的な投資バランスの観点を取り入れるためである。
2.4.差異への対応方針
再見積り結果が予算を超過する場合の対応として、以下の3段階の方針を定めた。
第一段階として、超過が10%未満の場合は、PPMの手法を用いて機能の優先度を見直し、範囲の調整を図る。
第二段階として、超過が10%以上20%未満の場合は、フェーズを分割し、重要度の低い機能を次期開発に先送りする。
第三段階として、超過が20%以上の場合は、経営会議に付議し、追加予算の確保または計画の抜本的な見直しを検討する。
3段階の方針を定めた理由は、超過幅に応じて適切な意思決定レベルと対応の選択肢を明確にするためである。
10%という第一の閾値は、PPMによる機能調整で吸収可能な範囲として設定した。
20%という第二の閾値は、プロジェクトの基本計画の見直しが必要となる分岐点として設定した。
(1569文字)
設問ウ
3.再見積りの実施と対応策
3.1.再見積りのタイミングと差異
プロジェクト開始から4か月後のPoC完了時点で最初の再見積りを実施した。
AIモデルの精度向上には当初想定より30%多いデータ量が必要であることが判明し、データ収集と前処理のコストが1.5億円増加する見込みとなった。
また、デジタルサイネージの実証実験から、効果的な接客支援には想定より40%多い設置台数が必要であることが判明し、ハードウェアコストが1億円増加する見込みとなった。
3.2.対応策と承認
合計で2.5億円の予算超過に対し、以下の対応策を立案し、ステアリングコミッティの承認を得た。
第一に、AIモデルについては、既存の取引データを活用した事前学習に軌道修正した。
新規データ収集のコストを抑制しつつ、早期に一定の精度を確保できると考えた。
これにより、追加データ収集のコストを0.8億円削減した。
第二に、デジタルサイネージは、投資対効果の高いエリアに資源を集中することで、効率的な投資を実現するようにした。
具体的には、動線分析の結果に基づき、効果の高いエリアを選定し、台数を最適化することで0.7億円削減した。
第三に、残りの1億円については、経営会議の承認を得て、期待される売上増加効果を根拠に追加予算を確保した。
1億円の追加予算申請を選択したのは、残りのコスト超過分を削減すると本来の事業改革の効果が損なわれると判断したためである。
これにより、プロジェクトは当初の目的を維持しながら、適切なコストマネジメントの下で進行することが可能となった。
3.2.対応策と承認
これらの対策により、プロジェクトの目的達成とコスト効率の両立を図ることができた。
特に、データの有効活用と設備の最適配置により、当初想定していた業務改革の効果を維持しながら、コストの適正化を実現できた点が重要な成果と考える。
また、経営層に対して定量的なデータに基づいて投資判断を仰ぐことで、追加予算の承認を得ることができたことは、プロジェクトチームにとっての大きな自信につながると考える。
(881文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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