- 合格レベルの論文がどんなものか、具体的な完成形を知りたい方
- 自分の実務経験を「評価される論文」に仕上げる書き方のコツを知りたい方
- 設問ア・イ・ウそれぞれの役割と、論理的な文章のつなげ方を学びたい方
プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問
解答例
設問ア
1.プロジェクトの概要と重要と考えたマネジメントの対象
1.1.プロジェクトの概要と目標
私が担当したプロジェクトは、予算2億円、期間1年の中堅部品メーカーにおける販売管理システムのERPパッケージ刷新である。当時、当社では事業部ごとに個別最適化されたシステムが稼働し、全社横断での正確な在庫・受注残の把握ができず、経営上の大きなリスクとなっていた。
本プロジェクトの具体的な目標は、「業務プロセスの標準化による、全社的な在庫状況のリアルタイム可視化」および「1年後の次期会計年度開始に合わせた、システムの本番稼働が必達」とされた。特に本件は、経営層から業務改革の断行が強く求められていた一方、独自の生産管理プロセスに強い自負を持ち、プロジェクトへの影響度が最も大きい製造部門が標準化に強く抵抗することが予見され、プロジェクトの成功を困難にする最大の要因であった。
1.2.重要と考えたプロジェクトマネジメントの対象とその理由
上記の目標達成のため、時間、コスト、品質以外では「ステークホルダ管理」及び「コミュニケーション管理」を最重要の管理対象と位置付けた。
本プロジェクトには技術的な課題など様々なリスクが存在したが、それらは既知の対策でコントロール可能であった。しかし、経営層の「改革推進」要求と、製造部門からの「現行業務維持」という相反する要求の対立は、プロジェクトの推進そのものを根本から揺るがしかねない最大のリスク要因であった。
この状況を放置すれば、プロジェクトは確実に停滞する。したがって、この対立構造を解消することが他の何よりも優先度が高いと考え、そのための具体的なアクションである「ステークホルダ管理」と、それを円滑に進めるための「コミュニケーション管理」を最重要対象と判断した。特に、製造部門の懸念を能動的に管理し、納得感を醸成することが不可欠であった。
(798文字)
設問イ
2.マネジメント方法の修整
2.1.マネジメント方法の修整対象
前述の重要管理対象である「ステークホルダ管理」及び、それに深く関わる「コミュニケーション管理」の二つについて、当社の標準的な開発プロセスで定められていた方法を修整の対象とした。
2.2.修整が必要と判断した理由
標準プロセスが、経営層と製造部門の深刻な利害対立という状況に対応できず、プロジェクトを失敗させると予測したからである。
当社の標準プロセスは、各部門への個別ヒアリングと月次の進捗報告会を基本とする。これをそのまま適用すれば、製造部門が個別ヒアリングで一方的に正当性を主張し、月次報告会で、製造部門の工場長であり現場から人望も厚いキーパーソンのA氏が公式に反対を表明すれば、議論が完全に停滞する事態が予見された。
このリスクに対し、私は当初、対策として部門間の壁を取り払う「合同業務改革ワークショップ」の開催を検討した。しかし、これだけでは不十分だと考えた。製造部門からすれば、これも「経営層の意向を現場に押し付けるための場」と見なされかねない。A氏のような人物を、多くの関係者の前で正論だけで説得しようと試みるのは、彼の立場を追い詰めるだけであり、かえって頑なな態度を誘発し、修復不可能な対立を生むリスクが高いと判断した。
したがって、単一的なアプローチではなく、複数のアプローチを組み合わせた、より状況に即したマネジメント方法へと修整する必要があった。
2.3.修整した内容
上記のリスク分析に基づき、私は複数の修整案を比較検討し、プロジェクトの責任者である担当役員に承認を得た上で、最終的な修整計画をプロジェクトマネジメント計画書に明記した。具体的には、画一的な手法を避け、ステークホルダの特性に合わせて「公式な合意形成の場」と「非公式な個別調整の場」を計画的に併用する、複合的なアプローチを行うように修整した。
1)公式な合意形成の場(全体アプローチ)
まず、プロジェクト全体の透明性を確保し、客観的な事実に基づく議論を促進するため、公式な合意形成の場として二つの施策を実行した。
・合同業務改革ワークショップ
営業、経理、物流、製造の各部門責任者や実務リーダー、情報システム部門の担当者といった全関係キーパーソンが一堂に会し、全体最適な業務プロセスを議論する場を週1回設けた。これは、議論の透明性を担保し、各部門が他部門の業務を相互に理解する目的があった。
・パッケージ原則憲章
議論の拠り所として「アドオン開発は原則行わない」などの基本原則を明文化した。さらに、逸脱が必要な場合の変更管理プロセスとして、事業部長レベルの承認を必須とするエスカレーションルールを定義し、安易な例外要求を防いだ。
2)個別ステークホルダへの働きかけ(個別アプローチ)
次に、特に影響力の大きいA氏との対立を回避し、協力を得るために並行して進める個別アプローチとして、二つの施策を計画した。
・キーパーソンとの個別対話の定例化
合同ワークショップとは別に、A氏と私による週1回の1対1の面談を正式なコミュニケーションプロセスとして設定した。この場の目的は、彼の面子を保ちながら本音の意見や懸念点を丁寧にヒアリングすることにあった。
・具体的な懸念の早期解消プロセス
個別対話を通じて、A氏の最大の懸念が「現行システムで管理している特殊な部品在庫の扱いが新システムで不可能になること」にあると特定した。この不安を解消するため、ベンダーに協力を依頼し、この在庫管理を標準機能で代替する具体的な操作方法を、プロトタイプを用いてA氏個人にデモンストレーションする場を設けた。
このように、公式な場で正論をぶつけるだけでなく、影響力の大きい個人に対しては個別対応するようにした。
(1598文字)
設問ウ
3.修整したマネジメント方法の有効性のモニタリングと評価
3.1.有効性のモニタリング方法
修整したマネジメント方法の有効性を客観的に検証するため、定量的指標と定性的指標を組み合わせたモニタリングを計画した。
定量指標としては、製造部門関連の「課題解決リードタイム」を週次で計測し、目標値を10営業日以内と設定した。また「アドオン開発要求件数」も監視対象とした。
それに加え、課題発生の兆候を早期に捉えるための定性指標として「キーパーソンの関与度評価」を導入した。これは、影響度が最も大きいA氏の関与度合いを評価するものである。具体的には、週1回の対話等での言動に基づき、代替案なく計画に反対すれば「抵抗的」、質問や懸念の表明は「中立」、計画への賛同を示す言動は「協力的」と判断するルールを設けた。
3.2.モニタリングの結果と評価
プロジェクト序盤、全体アプローチを開始した当初、モニタリング結果は計画の有効性が不十分であることを示していた。A氏の関与度評価は1カ月間「抵抗的」のままであり、その結果、課題解決リードタイムは目標の倍である平均20営業日を超えて停滞していた。この客観的な状況から、私は全体アプローチだけではA氏の協力が得られないと評価した。
この評価に基づき、計画していた個別アプローチを適用した。A氏との個別対話で彼の懸念である特殊な在庫管理について、プロトタイプを用いて標準機能での代替操作を実演した。
この個別アプローチ適用後、モニタリング結果は明確に改善した。A氏の関与度評価は翌週に「中立」へ、2週間後には「協力的」へと変化し、課題解決リードタイムも目標を下回る平均5営業日へと短縮された。
この一連の結果から、全体と個別の両アプローチを組み合わせた当初の修整は、本プロジェクトの特性に対し極めて有効であったと最終的に評価した。
3.3.評価に基づき行った対応と最終的な教訓
A氏への対応が有効であったとの評価に基づき、私はこの成功体験を他のキーパーソンへも予防的に適用した。潜在的なリスクを早期に発見できると考えたからである。例えば、反対意見のなかった物流部門責任者とも同様に個別対話を行ったところ、「出荷プロセスへの懸念」という潜在的リスクが明らかになった。これを仕様の微修正で早期に解消したことで、後の受入テストでの手戻りを未然に防ぐことができた。
この経験を通じ、私は、画一的な標準プロセスでは対応できない成功事例を組織の資産として形式知化すべきと考えた。具体的には、本プロジェクトで有効だった「ステークホルダの特性分析に基づく複合的なコミュニケーション計画」と「その有効性を客観的な指標で監視するプロセス」を、今後当社の開発標準に組み込むよう働きかける。これにより、組織全体の成功率向上に貢献できると考える。
(1189文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。





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