【SM】令和6年度 午後Ⅱ 問2(ヘルプデスク編) – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問2 サービス運用におけるヒューマンエラーに起因する障害の管理について

 ITサービスの障害は企業活動に大きな影響を及ぼす。サービス運用の現場で発生する障害は、運用担当者のヒューマンエラーに起因するものが多い。ヒューマンエラーに起因する障害を防ぐことは、ITサービスマネージャの重要な業務である。
 ヒューマンエラーの原因には、不注意、知識不足、思い込み、慣れ、過労などがあるが、ヒューマンエラーの背景として、教育などのスキル管理、作業ルールなどのプロセス、コミュニケーションなどの組織風土に課題があることも多い。
 ITサービスマネージャは、ヒューマンエラーに起因する障害が発生した場合に、次のような技法を用いて、原因を分析して対策を行うことが大切である。
・パレート分析を用いて、重要な原因を見つけ出す。
・なぜなぜ分析を用いて、対策をとるべき根本原因を見つけ出す。
 対策に当たっては、直接原因だけでなく、プロセスや職場環境など、直接原因を引き起こしている根本原因の分析も行い、障害の再発を防止する観点から検討を行うことが重要である。
 また、発生したヒューマンエラーを個々に分析して対策を行うだけでなく、これまでに組織で発生したヒューマンエラーの傾向を分析して組織としての課題を抽出し、対策を行うことも大切である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

 あなたが携わったITサービスの概要と、運用担当者のヒューマンエラーに起因した障害、及びヒューマンエラーの内容について、800字以内で述べよ。

設問イ

 設問アで述べたヒューマンエラーに起因した障害の再発を防止するために実施した対策は何か。また、対策を検討するに当たって、根本原因をどのように分析したか。800字以上1600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

 これまでに組織で発生したヒューマンエラーの傾向をどのように分析したか。また、組織としての課題は何であったか。600字以上1200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービスの概要とヒューマンエラーの内容

1.1.ITサービスの概要
 私が担当したITサービスは、大手製造業A社の社内ヘルプデスクである。このヘルプデスクは、全国5拠点に約1万人の従業員が利用する基幹システムやグループウェアなどの問い合わせ対応を行っている。問い合わせ対応は、電話とメールで受け付けており、平日の8時から20時まで、20名の運用担当者が3交代制で対応している。私は、ヘルプデスクの管理者として、運用担当者の教育やシフト管理、業務プロセスの改善などを担当している。

1.2.発生した障害の概要
 ある日、ヘルプデスク担当者による誤ったアカウントロック解除作業が原因の、障害が発生した。この障害は、基幹システムへのログインに失敗して、アカウントがロックされた役員からの問い合わせ対応時に発生した。担当者が誤って、対象役員以外の約50名の役員のアカウントも同時にロック解除してしまい、セキュリティ管理上の重大なインシデントとなった。

1.3.ヒューマンエラーの内容
 この障害の直接的な原因は、ヘルプデスク担当者が実施したアカウントロック解除作業におけるミスであった。具体的には、ロック解除ツールの操作において、特定役員のアカウントを選択すべきところ、誤って役員グループ全体を選択してしまった。このミスは、問い合わせ対応の手順書に従って作業を進めていたにもかかわらず発生したものであり、以下の要因が重なったものと考えられた。
・問い合わせが集中する繁忙時間帯での焦りによる確認不足
・役員からの強い要望による心理的プレッシャー
・ロック解除ツールの操作に対する理解不足

(708文字)

設問イ

2.障害の再発防止対策と根本原因分析

2.1.根本原因分析の実施
 障害の再発を防止するため、なぜなぜ分析による根本原因を行った。具体的には、当事者のヘルプデスク担当者、シニアオペレータ、システム管理者を集めて以下の分析を実施した。なぜなぜ分析は、当事者の心理的安全性を配慮して行った、当事者に心理的はプレッシャーを与えてしまうと、問題の真因にたどり着けないと考えたからである。

1)直接原因の分析
 なぜなぜ分析の結果、次の3つの直接原因が明らかになった。
・ツールの理解不足
 例:ロック解除ツールの「グループ選択」と「個別選択」の違いを理解していなかった。
・不明確な作業手順書
 例:「役員アカウントの選択」という記載だけで、個別選択が必要という注意点が明記されていなかった。
・緊急時の対応手順が標準化されていない
 例:役員からの強い要望があった場合の判断基準や、相談プロセスが不明確だった。

2)根本原因の分析
 さらに原因分析を行い、次の3つの根本原因を特定した。
・マニュアルの品質を確保するプロセスが確立されていない
 マニュアル改訂時のレビュー担当者が固定されておらず、現場の知見が十分に反映されていなかった。
・緊急時のエスカレーション基準が不明確
 「緊急」の定義が担当者の主観に委ねられており、上位者への相談タイミングにばらつきがあった。

 なお、原因分析の中で、UIが使いづらい・誤解を招きやすいといった議論も多く挙がったため、開発部門に改善要求を行うこととした。

2.2.再発防止のための対策
 根本原因の分析結果に基づき、私は次の対策を実施することとした。特に優先度の高い対策から着手することで、早期に効果を上げることを意図した。

1)マニュアルの改善
 作業品質の向上を目的として、以下の対策を実施した。これらの対策は、マニュアルの利用者である現場担当者の視点を重視して設計した。

・全ての操作手順書に、操作の影響範囲を明記する項目を追加
 各操作が影響を与える範囲を「影響度」として3段階で表示し、特に注意が必要な操作については赤字で警告を表示することにした。例えば、グループ選択機能の使用は「影響度:高」とし、「選択したグループに所属する全ユーザに影響が及びます!」という警告を表示するようにした。

・ツールの画面キャプチャを多用し、視覚的に分かりやすい手順書に改訂
 重要な操作画面については、正しい選択箇所を赤枠で囲むなど、視覚的に分かりやすい表示を心がけた。これは、テキストだけの説明では伝わりにくい操作手順を、直感的に理解できるようにするための工夫である。

 なお、手順書の改訂に当たっては、手順書改訂作業の負荷分散を考慮することにした。具体的には、過去の障害事例と現場担当者からの「ヒヤリハット」の分析結果から優先度を設定し、6か月をかけて手順書を改訂することとした。

2)緊急時対応の標準化
 対応品質を確保するため、以下の対策を実施した。これらの対策は、担当者の心理的負担を軽減しつつ、確実な判断を可能にする意図があった。

・緊急度に応じたエスカレーション基準を明確化
 「緊急」の定義を5段階に分類し、各レベルでの対応手順と相談先を明確化した。例えば、役員アカウントに関する操作は全て「緊急レベル4」に分類し、必ず管理者の承認を得ることを必須とした。

・緊急対応時は必ず上位者に事前確認する
 チャットツールの緊急対応用チャットを設置し、役員対応時などの緊急対応時は、必ずシニアオペレータまたは管理者にチャットで確認を取ることとした。チャットツールによって確認内容を記録することで、判断の根拠を明確にできると考えたからである。

(1599文字)

設問ウ

3.組織におけるヒューマンエラーの傾向分析と課題

3.1.ヒューマンエラーの傾向分析
 過去2年間に発生したヘルプデスクでのヒューマンエラーの傾向を分析するため、以下の取り組みを実施した。分析対象期間を2年間としたのは、システム変更や組織変更の影響を考慮し、現在の業務実態を正確に反映するためである。

1)データ収集と分析
 問題の優先度を明確にするため、パレート図を用いて分析した。具体的には、インシデント管理システムに記録されたヒューマンエラー事例を抽出し、エラーの種類・発生時間帯・担当者の経験年数などの要素でデータを分類した。分類に際しては、現場のシニアオペレータと協議し、改善活動に直結する分類方法を採用した。具体的には、エラーの種類を「操作ミス」「判断ミス」「コミュニケーションミス」の3種類に分類した。

2)分析結果
 パレート分析の結果、以下の傾向が明らかになった。

・特権的な操作(パスワードリセットやアカウントロック解除など)に関連するもの:約40%
 これらの操作は、影響範囲が広く、セキュリティリスクも高いことから、最優先で対策すべき項目と判断した。

・問い合わせ集中時間帯(9時~11時、15時~17時)に発生:約30%
 この時間帯は1時間あたりの問い合わせ件数が平常時の3倍以上になることから、業務の繁忙がエラーを誘発していると考えられた。

・FAQ検索の誤り、手順書の誤読など:約30%
 経験年数が2年未満の担当者に集中している傾向が見られた。

3.2.組織としての課題
 傾向分析の結果から、以下の3つの重要な組織的課題が明らかになった。これらの課題は、ヒューマンエラーの発生頻度と業務への影響度を考慮して優先順位を付けた。

1)スキル管理の不足
 特権操作に関する定期的なスキル確認の仕組みがなかった。例えば、アカウントロック解除の手順は、システム変更の度に変更されているが、担当者全員への再教育は実施されていない。その結果、古い手順で操作を行おうとしてエラーが発生するケースがあった。

2)品質管理体制の脆弱性
 発生したインシデントの分析は行われているが、その結果が研修カリキュラムに反映される仕組みがなく、同様のエラーが繰り返し発生していた。

3)組織風土の課題
 軽微なミスの報告が遅れることで問題が拡大するケースが、過去6ヶ月で3件発生している。担当者が不利益を懸念して報告を躊躇する傾向があった。特に繁忙時間帯では、対応を急ぐあまり、確認手順を省略する事例があった。

 これらの課題に対して、特にスキル管理の体制整備と質問しやすい職場風土の醸成は、最優先で取り組むべき課題であると考えた。スキル不足と心理的な障壁が、多くのヒューマンエラーの要因となると考えた。

(1200文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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