ITサービスマネージャ午後Ⅱ論文の書き方が分からない人へ|一発で合格した実務経験者のサンプル解答【令和6年度:問1:ハードウェア保守サービス編】

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題文および設問は、下記にてご確認ください。

解答例

設問ア

1.ITサービスの概要と環境の変化がもたらした課題

1.1.ITサービスの概要

 私が担当したITサービスは、年間契約料が十数億円規模に上る、当社の主力事業の一つである「ハードウェアオンサイト保守サービス」である。サービスの対象は、金融機関や大手製造業など、社会インフラを担う法人顧客の基幹ITインフラであった。自身の役割は、このサービスの品質、コスト、デリバリ全般の管理責任を負い、変更管理プロセスの最終責任者を務めることであった。サービス内容は、24時間365日体制での障害対応を基本とする、極めて高い可用性を要求するものであった。しかし、迅速なサービス提供による機会創出を主張する営業部門と、インシデント発生時のブランド毀損を恐れ、厳格な統制を主張する品質保証部門との間で、変更管理プロセスの運用方針について見解の相違が常態化していた。

1.2.環境の変化がもたらした課題

 当サービスを取り巻く環境の変化により、従来の変更管理プロセスがビジネス上の深刻な課題を生む原因となっていた。課題の本質は、プロセスの硬直性が引き起こす対応遅延が、直接的に事業機会の損失に繋がっていた点である。具体的には、迅速なインフラ構成変更を前提とする新規案件において、提案段階での迅速な実現性評価に応えられず、競合他社のスピード感に及ばず、保守契約のコンペで敗れる事態が看過できないレベルで発生していた。加えて、既存顧客からも予防保守対応の遅さを理由に満足度が著しく低下していた。結果として、最重要顧客の一社から次期契約の見直しを示唆され、解約が現実的な経営リスクとして顕在化した。この状況は、サービスの競争力と収益性を根本から損なうリスクがあるため、部門間の対立解消とプロセス改革が急務であると判断した。

(751文字)

設問イ

2.変更管理プロセスの問題点と、その改善策

2.1.変更管理プロセスに生じた問題点

 ビジネスリスクの解消は急務であったが、改善の試みは当初、部門間の対立により停滞した。作成した、「標準変更」(リスクが低く定型的で、事前承認済みの変更)の適用範囲拡大を軸とする改善案は、月次のサービス向上会議で提示したものの、品質保証部門からは、過去のインシデント事例を根拠に、ガバナンスが低下するリスクについて強い懸念が示された。彼らにとっては、プロセスの簡素化はリスクの増大と直結していた。一方、経営層からは、効果が不透明なプロセス変更への追加投資は認められないという見解が示された。結果として、当初の提案は関係各所の合意を得られず、改善活動は停滞を余儀なくされた。この問題の根本原因は、各部門の立場によるリスク認識の相違と、改善効果の客観的な証明が不足していた点にあると分析した。

2.2.問題点を解決するために実施した改善策

 停滞した状況を打開するため、問題の根本原因であった「客観的根拠の不足」を解消すべく、以下の3つの活動を実施した。

1)客観的データによる現状分析

 第一の活動として、過去2年間で実施された約2000件の全変更要求とその結果を分析した。この分析は、各システムから手動でデータを抽出し、フォーマットを正規化する必要があり困難を伴ったが、説得の根拠として不可欠と判断し実行した。分析結果をパレート図で可視化し、特定のサーバモデルにおける検証済みファームウェアの適用など、一部のパターンがインシデント発生率0.1%以下の「安全な変更」であり、それが変更全体の約8割を占めることを定量的に証明した。これを基に品質保証部門に対し、リスクが統計的に無視できるレベルの変更まで一律に厳格な管理下に置くことの非効率性を論理的に説明した。

2)ビジネスインパクトの可視化

 第二の活動として、営業部門と連携し、過去1年間のプロセス遅延に起因する失注案件から、機会損失が年間約5000万円に上るという試算を導き出した。この試算と具体的な顧客名を提示し、迅速性の欠如が事業に与える深刻な影響を経営層に報告した。これにより、本件を単なる業務改善ではなく、「年間5000万円の利益確保に繋がる経営課題」として位置付け、活動の正式な承認を取り付けた。

3)合意形成に基づく改善施策の実行

 第三の活動として、上記2点の客観的根拠を基に、関係各所との合意形成を図り、以下の具体的な改善策を実行した。

・標準変更における統制の確保と信頼性の向上

 まず、現場マネージャには認定資格の取得を義務付けた。この資格は、判断基準の座学研修と過去のインシデント事例に基づくケーススタディ試験で構成し、合格後も年1回の更新研修を必須とすることで、承認者の能力を担保し、知識の陳腐化を防いだ。さらに、品質保証部門の監査要求を受け入れ、全ての標準変更の作業ログを自動で取得し、事後監査できるツールを導入した。ツール導入にあたっては、現場への説明会とハンズオントレーニングを複数回実施し、利用定着を支援した。

・迅速変更における客観性と品質の担保

 次に、緊急性の高いセキュリティパッチの適用や、リモートから実施可能な軽微な設定変更などを対象とする「迅速変更」については、ピアレビューの形骸化が懸念された。そこで、「必ず異なるチームの技術者同士で実施するクロスレビュー」を必須とし、客観性を担保した。その上で、レビュー観点として作業手順の妥当性、影響範囲の評価、切り戻し手順の3点を必須項目として定義し、チェックリスト化することでレビュー品質の平準化を図った。

(1530文字)

設問ウ

3.改善策の評価と今後の課題

3.1.変更管理プロセスの改善策の評価

 改善策の導入から1年後、その効果を評価した結果、主に次の3点の成果と教訓が得られた。

1)事業機会損失の抑制

 最も重要な成果として、以前は敗退が続いていた迅速性を求める保守契約の競合において、契約勝率が前年比で15%向上した。これは、承認リードタイムが平均15営業日から4.5営業日へと抜本的に短縮されたことが、提案力強化に直結した結果と分析している。

2)顧客満足度向上による契約維持

 次に、解約を示唆していた最重要顧客に対し、改善されたプロセスによる迅速な予防保守サービスを提供した結果、関係を再構築し、契約更新に至った。これにより、当該年度の重点顧客における解約率は0%を達成した。これらの成果は、本改善活動が明確な事業貢献を果たしたことを客観的に示している。

3)改善活動から得られた教訓

 一方で、改善策の導入は順風満帆ではなかった。移行当初、現場マネージャの判断ミスによる軽微な設定不備が2件発生した。幸いサービス影響はなかったが、このインシデントは事後監査ツールによって作業完了の1時間以内に検知された。この失敗と迅速な対応の経験は、プロセスの信頼性と成熟度を向上させる貴重な教訓になった。

3.2.今後の課題と対策

 今回の改善は成功したが、今後の継続的なサービス向上のためには、新たに取り組むべき次の3つの課題がある。

1)新たなボトルネックへの対応

 第一の課題は、改善プロセスが新たなボトルネックを生んだ点である。「標準変更」の判断を担える認定資格を持つ現場マネージャの数が限られ、業務負荷の増大が懸念され始めた。この課題に対し、次期マネージャ候補者向けの研修を策定し、計画的な人材育成を進めている。

2)改善プロセスの形骸化防止

 第二に、導入したレビューチェックリストが、インシデント発生都度に項目が安易に追加され、肥大化・形骸化するリスクを認識している。この対策として、チェックリストの項目をクリティカルなものに限定すると共に、四半期ごとにその有効性を評価し、不要な項目を廃止する棚卸しプロセスを、次なる改善サイクルで導入する計画である。

3)高付加価値サービスへの展開

 第三に、今回の成功に満足せず、より上位の経営課題に取り組む。それは、当サービスを単なる保守サービスから、顧客のビジネス変革を支援する「プロアクティブな高付加価値サービス」へと転換させ、事業の収益性を向上させることである。迅速性を武器に新たなサービスメニューを開発するため、具体的な企画案を作成し事業開発部門との連携を開始した。継続的な改善を通じて経営に貢献していく。

(1139文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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