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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。


問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問2 ITサービスの運用品質を改善する取組について
ITサービスの運用チームは、サービスの運用を通じて、信頼性の高いITサービスを安定的に提供する。サービスレベルの向上を図り、顧客の期待に応えるために、ITサービスマネージャには、ITサービスの運用品質の改善目標を定めて、運用品質の改善に取り組むことが求められる。
ITサービスの運用品質の改善目標には、例えば、作業ミス件数の20%削減やサービスデスクにおける受付から回答までの時間の30分短縮といった具体的な目標値を設定し、達成期限も設ける。
次に、改善目標を達成するための方策を立案して実施する。次のような観点から方策の内容を設定する。なお、複数の方策を立案して実施することもある。
・プロセス:手順の見直し、標準化の推進など
・ツール:ツールを使った自動化など
・人:運用チームのメンバのスキル向上、役割と責任の明確化など
そして、方策の管理指標を定め、定期的に方策の実施状況を確認する。
方策の実施に当たっては、運用チームのメンバによる議論を促して取組への動機付けを行うなど、運用チームの力を結集するための工夫を行うことも大切である。
改善の取組においては、方策の管理指標の達成状況及び改善目標の目標値の達成状況を評価する。未達の場合は原因を分析し、必要に応じて、方策などを見直す。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、運用チームの構成、及びITサービスの運用品質の改善目標とその設定根拠について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた改善目標を達成するための方策について、方策の内容及び管理指標を、運用チームの実態を踏まえて工夫した点を含めて、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた方策の管理指標の達成状況、改善目標の目標値の達成状況及び改善の取組全体の評価について、良かった点、悪かった点、今後の改善点を含めて、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービスの概要と運用品質の改善目標
1.1.ITサービスの概要
私が担当したITサービスは、従業員数5,000名規模の製造業A社における社内ヘルプデスクである。このヘルプデスクは、社内システムの利用に関する問合せ対応、各種申請の受付、システムトラブルの一次切り分けを主な業務としている。平日の8時から18時まで、年間約12,000件の問合せに対応している。
1.2.運用チームの構成
運用チームは、チームリーダー1名、シニアオペレーター2名、一般オペレーター4名の計7名で構成している。シニアオペレーターは、複雑な問合せ対応と一般オペレーターの指導を担当している。一般オペレーターは、定型的な問合せ対応と各種申請の受付処理を担当している。
1.3.運用品質の改善目標とその設定根拠
運用品質の改善目標として、「問合せ一次回答率を現状の60%から80%に向上させること」を設定した。この目標を設定した理由は、以下の3点である。
1)顧客満足度の向上
利用者アンケートにおいて、「回答までに時間がかかる」という不満が全体の35%を占めていた。一次回答率を向上させることで、より迅速な問題解決が可能となり、顧客満足度の向上が期待できると考えた。
2)運用コストの削減
問合せの40%が上位者へのエスカレーション対象となっており、対応工数の増加につながっていた。一次回答率の向上により、このエスカレーション件数を削減し、運用コストの適正化を図ることができると判断した。
3)チームの成長
一次回答率の向上には、オペレーターのスキル向上が不可欠である。目標達成に向けた取り組みを通じて、チーム全体の成長を促進できると考えた。
(747文字)
設問イ
2.改善目標達成のための方策
2.1.方策の内容と管理指標
問合せ一次回答率80%という目標を達成するため、以下の3つの方策を立案した。これらの方策は、限られた予算と人員という制約の中で、最大の効果を得られるよう工夫したものである。
1)ナレッジベースの整備と活用促進
一次回答率向上には、オペレーターが必要な情報に素早くアクセスできる環境が重要と考えた。そこで、既存のナレッジベースを全面的に見直し、以下の改善を実施することにした。
<具体的な施策>
・検索性向上のため、「システム名」「機能カテゴリ」「エラー種別」などのタグ付けルールを標準化
・パスワードリセット、アクセス権限申請など、よくある問合せトップ100について、詳細な回答手順を文書化
・システム操作手順やエラーメッセージの画面キャプチャを活用した視覚的な説明の追加
・四半期ごとのナレッジ内容の見直しと更新(特にシステム更新に伴う手順変更の反映)
<管理指標>
・ナレッジベースの登録件数(目標:前年比20%増):過去の問合せ分析から、カバーすべき未登録の回答パターンを約20%と算出
・ナレッジベースの利用率(目標:1日あたり平均10回/人):1時間あたり1回以上の参照を想定
・ナレッジ内容の評価スコア(目標:5段階評価で4.0以上):「すぐに使える」「わかりやすい」の評価基準で測定
2)段階的スキル認定制度の導入
オペレーターの成長意欲を高め、計画的なスキル向上を図るため、独自の認定制度を導入することにした。予算の制約があったため、外部の資格制度ではなく、内製の認定制度とした。
<具体的な施策>
・レベル1(基本)からレベル4(エキスパート)までの4段階の認定基準を設定
・各レベルで必要なスキルと到達目標を明確化
・シニアオペレーターによる実地評価の実施
・認定レベルに応じた権限付与による動機付け
<管理指標>
・認定試験の合格率(目標:80%以上)
・レベルアップに要する平均期間(目標:3ヶ月/レベル)
・上位レベル(レベル3以上)保有者の割合(目標:30%以上)
3)チーム内ピアレビューの実施
経験豊富なメンバーの知識やノウハウを効果的に共有するため、定期的なピアレビューを導入することにした。人員の制約があったため、業務時間内に効率的に実施できる方法を工夫した。
<具体的な施策>
・週1回、30分の事例共有会議の開催
・難易度の高い問合せ対応の録音を活用したケーススタディ
・ベストプラクティスの発表と意見交換
・改善提案の場としても活用
<管理指標>
・事例共有会議の参加率(目標:90%以上)
・共有された改善提案の件数(目標:月間10件以上)
・参加者の理解度自己評価(目標:5段階評価で4.0以上)
2.2.運用チームの実態を踏まえた工夫
これらの方策の実施にあたり、以下の点を特に工夫した。
1)業務負荷への配慮
問合せ対応業務の合間に各施策を実施できるよう、以下の工夫を行った。
・ナレッジ登録は5分以内で完了できるテンプレートを準備
・事例共有会議は業務の繁閑を考慮して柔軟に時間を設定
・スキル認定の評価は通常業務の中で実施
2)モチベーション維持の工夫
チームメンバーの主体的な参加を促すため、以下の工夫を行った。
・改善提案の採用者を月間MVPとして表彰
・認定レベルに応じた業務範囲の拡大
・ナレッジ登録の貢献度を人事評価に反映
(1497文字)
設問ウ
3.方策の達成状況と評価
3.1.管理指標の達成状況
1)ナレッジベースの整備と活用促進
管理指標は概ね目標を達成した。具体的には、ナレッジ登録件数が前年比25%増、利用率は1日平均12回/人、評価スコアは4.2を達成した。特に、画面キャプチャを活用した視覚的な説明は、利用者から高い評価を得た。
2)段階的スキル認定制度
認定試験の合格率85%、レベルアップ平均期間2.8ヶ月と目標を上回ったが、上位レベル保有者の割合は25%にとどまり、目標の30%には届かなかった。これは、想定以上に認定基準が厳格であったことが要因と考えられる。
3)チーム内ピアレビュー
事例共有会議の参加率95%、改善提案件数月間12件と目標を達成したが、参加者の理解度自己評価は3.8にとどまった。これは、共有される事例の難易度にばらつきがあったためと分析している。
3.2.改善目標の達成状況
問合せ一次回答率は、取り組み開始から6ヶ月後に75%まで向上した。目標の80%には届かなかったものの、大幅な改善を実現できた。この結果、四半期ごとに実施している利用者アンケート(回答率85%)において、「回答までに時間がかかる」という不満が35%から18%まで減少した。また、問合せ対応の満足度評価(5段階)も3.2から4.1に向上した。
3.3.取組全体の評価
1)良かった点
・チーム全体のスキル向上意識が高まり、自主的な学習や改善提案が活発化した
・ナレッジの整備により、複雑な問合せにも迅速に対応できるようになった
・事例共有を通じて、チームのコミュニケーションが活性化した
2)悪かった点
・ナレッジ更新の作業負荷が想定以上に大きく、一部のメンバーに負担が集中した
・スキル認定の評価基準が厳格すぎ、メンバーの意欲低下を招く場面があった
・事例共有の内容が高度になりすぎ、理解度にばらつきが生じた
3)今後の改善点(優先順位順)
・残る5%の目標達成に向けて、個別指導の強化と新たな動機付けの仕組みを検討(短期的な成果が期待できるため最優先)
・ナレッジ更新の負荷分散のため、更新作業の一部を外部委託することを検討(予算申請が必要だが、チーム全体の生産性向上に直結)
・スキル認定の中間レベルを設定し、段階的な成長を促す仕組みを導入(制度改定に時間を要するが、長期的な効果が期待できる)
・事例共有の難易度を調整し、基礎的な内容と応用的な内容のバランスを改善(既存の枠組みで対応可能)
(1083文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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