【ITサービスマネージャ試験】令和4年度 午後Ⅱ 問1 – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問1 災害に備えたITサービス継続計画について

 災害によるITサービスの中断・停止は事業に大きな影響を与える。ITサービスマネージャは、災害発生による事業への影響を極小化するためのITサービス継続計画を、事前に策定しておく必要がある。
 ITサービス継続計画には、ITサービス継続要件を実現する対策実施、教育訓練、維持改善、緊急時対応が含まれる。
 ITサービス継続計画の策定に向けた具体的な手順は、次のとおりである。
①災害によって発生する、ITサービスの継続に影響を与える事態を特定する。例えば、事態には、ハードウェア障害、通信障害、停電などがある。
②特定した事態による事業への影響を分析して評価する。例えば、影響には、業務の長時間停止、保有データ消失による事業継続不可などがある。
③事業への影響を極小化するための具体的な対応策を立案する。例えば、対応策には、災害発生時のサービス代替手段の準備、重要データの遠隔地保管、復旧手順の策定、災害発生に備えた教育訓練の定期実施などがある。対応策は、事業継続計画で定めた目標(目標復旧時間、目標復旧時点、目標復旧レベル)に従って決定し、ITサービス継続計画に反映する。
 また、社会環境の変化、技術動向などによって事業への影響も変わるので、ITサービスマネージャには、ITサービス継続計画を見直し、改善していく活動が望まれる。

 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

 あなたが携わったITサービスの概要と、“災害によって発生する、ITサービスの継続に影響を与えると特定した事態”、及び“分析して評価した事業への影響”について、800字以内で述べよ。

設問イ

 設問アで述べた事業への影響を極小化するために策定したITサービス継続計画の目標と、計画に反映した対応策及びその対応策が妥当であると判断した理由について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

 設問イで述べた対応策の評価、及び“ITサービス継続計画を見直し、改善していく活動”について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービスの概要と災害による影響

1.1.ITサービスの概要

 私が担当したITサービスは、全国の小売チェーン3,000店舗で利用される在庫管理・発注システムである。24時間365日稼働のクラウドサービスとして、日次で約500万件の商品データを処理し、欠品防止と適正在庫維持を実現するため、可用性確保が最重要課題だった。

1.2.サービスに影響を与える事態

 過去の事例から、サービス継続に影響を与える事態を以下の3点と判断した。

1)停電
 2020年、主要データセンターで72時間停電。UPSの4時間分の容量を超え、発注業務が完全停止し、損失は推定で4億円だった。

2)ネットワーク障害
 2021年のインターネット回線障害により、1,200店舗で発注システムへのアクセスが4時間不能となった。代替手段としての手作業による発注ミスで、過剰発注が発生。廃棄ロスは平常時の3倍となった。

3)機器破損
 2022年の地震により、ストレージアレイが物理的に損傷し、直近3時間分のトランザクションデータが消失。復旧に48時間を要し、全店舗で在庫実数と在庫データの不整合が発生した。

1.3.事業継続への影響

 上記3点に起因する影響を、以下のように評価した。

1)業務停止時の直接的損失
 システム停止時の損失は1時間あたり約500万円。また、復旧後の在庫調整作業に店舗当たり4人時が発生し、人件費損失も顕著である。

2)データ消失による混乱
 在庫数の不整合は、発注精度が著しく低下させる。特に生鮮品を扱う店舗では、過剰発注による廃棄ロスが平時の3倍に達する。

3)顧客信用の毀損
 システム停止時の代替手段が不十分な場合、欠品リスクがある。特に定番商品の欠品は顧客離れを招き、平均2ヶ月の回復期間が必要だった。

(800文字)

設問イ

2.ITサービス継続計画の目標と対応策

2.1.ITサービス継続計画の目標設定

 これらの影響分析に基づき、ITサービス継続計画の目標として以下を設定した。

1)目標復旧時間(RTO):2時間以内
 売上機会損失(1時間あたり500万円)と人件費損失の分析から、システム停止の許容時間を2時間と設定。これは、1店舗あたりの人的代替オペレーションが可能な時間的限界でもある。

2)目標復旧時点(RPO):10分以内
 生鮮品の発注サイクルが最短30分であることから、10分以内のデータ損失であれば、発注の手動修正が実務的に対応可能と判断。これは店舗スタッフへのヒアリングから導き出した実務上の限界値である。

3)目標復旧レベル(RSL):発注・在庫照会機能を優先
 全機能の同時復旧は現実的でないため、業務影響度から発注・在庫照会機能を最優先とし、2時間以内での復旧を目指す。これにより、最重要である商品供給の継続性を確保する。

2.2.対応策とその妥当性

 これらの目標達成のため、以下の対応策を実行した。

1)電源対策の強化
・既存UPSの容量を4時間から12時間に増強
・自家発電設備の新設(72時間運転可能)
・電源系統の二重化(異なる変電所からの引き込み)

 本対策は、過去の停電事例での最大停電時間(72時間)を考慮して設計した。特に、UPSの増強は自家発電始動までのつなぎとして必須と判断した。初期投資8,000万円は、年間の停電リスク(4億円)を考慮すると、妥当な投資と考える。

2)ネットワーク冗長化
・主回線(光回線)と副回線(5G回線)の2系統化
・通信キャリア2社との契約による回線の冗長化
・エッジコンピューティング環境の導入による店舗側の一時的自立運用の実現

 本対策は、過去の回線障害による業務停止を教訓に策定した。特にエッジコンピューティング導入は、一時的なネットワーク断に対する耐性を高める効果が大きい。投資額1億円によって、回線障害による損失(年間推定1.5億円)の抑制が可能と判断した。

3)データ保護強化
・10分間隔でのデータレプリケーション
・地理的に離れた3拠点でのデータ同期
・ストレージシステムの3重化

 本対策は、地震によるデータ消失の経験を踏まえて設計した。特に3拠点でのデータ同期は、広域災害への対策として有効と判断した。投資額7,000万円に対し、データ消失による損失(最大10億円規模)を考慮すると、必要な投資と評価した。

2.3.対応策が妥当であると判断した理由

 これらの対応策の妥当性は、以下の根拠に基づき判断した。

1)コストパフォーマンス
 対策実装の総額は2.5億円だが、年間の想定被害額(4億円)の62.5%に抑えられており、投資対効果が認められる。

2)運用実現性
 既存の運用体制(24時間365日の監視体制)を活用可能で、新規の人員増強は不要。現場スタッフへのヒアリングでも運用負荷の増加は許容範囲内との評価を得ている。

3)実績のある技術の採用
 採用した技術は全て実績のある製品・サービスで構成されており、技術的なリスクは最小化できる。特に主要ベンダーの実績導入10社以上の製品を採用している。

(1407文字)

設問ウ

3.対応策の評価とITサービス継続計画の改善

3.1.対応策の評価

 導入した対応策の評価として、以下の実績が確認できている。

1)システム停止時間の短縮
・導入前:平均停止時間 24時間
・導入後:平均停止時間 1.5時間
・想定目標(2時間以内)を達成

 特に、電源対策の強化により、2023年の落雷時も無停止でサービス継続が可能であった。また、ネットワーク冗長化により、通信障害時の業務継続性も大幅に向上している。

2)データ損失の極小化
・導入前:最大3時間のデータ損失
・導入後:最大8分のデータ損失
・想定目標(10分以内)を達成

 3拠点でのデータ同期により、2023年の地震発生時もデータ消失を防止できた。エッジコンピューティング環境の活用で、店舗側での一時的なデータ保持も実現している。

3)運用コストの適正化
・月間運用コスト:対策実装前比で15%増
・障害対応工数:対策実装前比で60%減

 自動化の推進により、運用コストの増加を最小限に抑えつつ、障害対応の効率化を実現できている。

3.2.継続的な改善

 これらの成果を踏まえ、以下の改善活動を継続的に実施している。

1)定期的な実効性検証
 四半期ごとに全店舗参加の災害訓練を実施。特に、以下の点を重点的に確認している。
・代替手段への切替時間の計測
・データ整合性の検証
・復旧手順の実効性確認

 訓練結果は、手順書の改訂やシステム改善に反映し、継続的な改善を図っている。

2)新技術の導入検討
・コンテナ技術を活用したシステム可搬性の向上
・AIによる障害予兆検知の導入(2024年度実装予定)
・ブロックチェーン技術によるデータ保護の強化検討

 特にAIによる予兆検知は、事前対応による障害回避を目指すもので、さらなる可用性向上が期待できる。

3)運用体制の最適化
・障害対応要員のスキルマトリクス整備
・24時間体制の効率化(リモート対応の拡大)
・サプライヤーとの連携強化(定例会議の月次開催)

 これらの活動により、年々変化する事業環境とシステム基盤に適応したITサービス継続計画を維持している。特に、デジタルトランスフォーメーションの進展に伴うシステム依存度の上昇を踏まえ、より高度な事業継続性の確保に取り組んでいる。

(1022文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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