【SM】令和3年度 午後Ⅱ 問2 – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問2 サービス可用性管理の活動について

  ITサービスマネージャには、顧客とサービス可用性の目標を合意した上で、サービス可用性を損なう事象の監視、課題の抽出、改善策の実施など、サービス可用性の目標を達成するための活動を行うことが求められる。
 サービス可用性の目標及び目標値については、ITサービスの特徴を踏まえて、例えば、サービス稼働率99.9%などと顧客と合意する。
 サービス可用性の目標を達成するために、次のような活動を行う。
①サービス可用性を損なう事象を監視・測定する。
 故障の発生などサービス可用性を損なう事象を監視して、事象の発生回数と回復時間などを測定する。また、評価指標を定めて測定結果を管理する。
②測定結果を分析して、課題を抽出し、改善策を実施する。
 例えば、インシデントによって、MTRS(平均サービス回復時間)が悪化している場合は、拡張版インシデント・ライフサイクルでの検出、診断、修理、復旧及び回復のどこで時間を要していたかを分析する。復旧段階の時間が長く、手順の不備が原因であった場合は、復旧手順を整備する。
 また、サービス停止には至らないが、平均応答時間が増加している場合は、原因を分析して改善策を実施し、将来のサービス拡大などの環境変化に備える。

 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と、サービス可用性の目標及び目標値、並びにそれらとITサービスの特徴との関係について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べたサービス可用性の目標を達成するために重要と考えて行った活動について、監視対象とした事象と測定項目は何か。測定結果の評価指標は何か。また、測定結果をどのように分析したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた分析の結果から、サービス可用性の目標を達成するために対応が必要と考えた課題と改善策は何か、又は、将来の環境変化に備えて対応が必要と考えた課題と改善策は何か。いずれか一方の観点から、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービスの概要とサービス可用性の目標

1.1.ITサービスの概要

 私が携わったITサービスは、製造業向けの生産管理システムの運用管理である。このシステムは、部品調達から製品出荷までの一連のプロセスを統合的に管理するものであり、24時間365日の稼働が求められる。システム停止が発生した場合、生産ライン全体に影響を及ぼし、出荷遅延や顧客クレームが発生する可能性が高いため、サービスの可用性が特に重要であった。

1.2.サービス可用性の目標及び目標値

 サービス可用性の目標は、サービス稼働率99.97%と定めた。これは、年間の許容停止時間を3時間以内とした場合の目標値である。この設定は、生産ライン停止が発生した場合の生産損失やサプライチェーンへの影響を最小限に抑える必要性を考慮したものである。また、平均サービス回復時間(MTRS)を30分以内にすることを補足目標とした。

1.3.目標とITサービスの特徴との関係

 この目標設定は、以下の特徴を踏まえたものである。
1)製造業の24時間稼働体制
 生産ラインが停止すると、直接的な生産損失だけでなく、サプライチェーン全体に波及効果が生じるため、短時間の停止でも許容できない。
2)システムの複雑性
 サーバ、ルーター、ファイアウォールなど多種多様な設備と連携して稼働するため、障害発生時には迅速な原因特定と復旧が必要。
3)季節需要の変動
 4月から6月にかけてアクセス負荷が集中するため、この負荷ピーク時でも高い可用性を維持することが重要。

 これらの特徴を考慮し、高可用性と迅速な復旧を重視した目標を設定した。

(719文字)

設問イ

2.サービス可用性の目標達成のために行った行動

2.1.監視対象と測定項目

 サービス可用性の目標を達成するため、以下の事象を監視対象とし、それに関連する測定項目を設定した。

1)監視対象事象
・サーバ障害、ネットワーク障害
・データベース応答時間の増加
・アプリケーションのエラー頻度

 上記を監視対象とした理由は、次の通り。
①サーバやネットワークはシステム全体の基盤であり、これらの可用性が維持されなければサービス全体が停止するリスクが高い。
②データベースとアプリケーションは主要な業務処理を支える中核部分であり、これらの正常性を監視することがサービス品質の維持に直結する。

2)測定項目と測定方法
・障害発生回数:障害ログを収集し、月次で集計する。
・平均サービス回復時間(MTRS):各障害の発生時刻と復旧時刻を記録し、平均値を算出する。
・平均応答時間:モニタリングツールで主要業務処理の応答時間を計測し、日次平均を算出する。
・稼働率(システム全体および主要コンポーネント別):稼働時間を監視システムで記録し、目標値と比較する。

 測定方法においては、下記のように測定作業にかかる工数を最小化する工夫を行った。
①ログの収集を自動化し、リアルタイムでログ収集と集計を可能とした。
②測定結果をダッシュボード形式で可視化し、異常を即座に発見できるようにした。

2.2.測定結果の評価指標

 測定結果を評価するために、以下の指標を設定した。

1)稼働率
 月次および年間の稼働率を計算し、目標値との乖離を評価する。
2)MTRS
 各障害に対する回復時間を計測し、目標値(30分以内)との比較を行う。
3)障害発生頻度
 障害件数の増減を分析し、トレンドを可視化する。
4)応答時間
 主要業務処理における平均応答時間を監視し、異常値の発生を検知する。例えば、通常は平均1秒の応答時間が、10秒以上に増加した場合にアラートを発行する。

2.3.測定結果の分析

 測定データをもとに以下の分析を実施した。

1)パレート分析
 障害発生の80%以上が、深夜1時~3時にデータベースサーバに集中していることを確認した。
2)根本原因分析
 なぜなぜ分析を用いて、障害原因を深掘りした。この結果、データベースの応答遅延が、在庫確認業務で使用されるクエリ処理に起因していることを特定した。
3)トレンド分析
 MTRSが特定の障害タイプ(ネットワークスイッチの故障)で長引く傾向であることを判明し、復旧プロセスが非効率性であることがわかった。
4)相関分析
 統計解析ソフトウェアを用いた相関分析を行い、障害発生頻度と応答時間増加の相関関係を調査した。その結果、負荷増加が原因であることを特定した。

 これらの分析結果を基にした、改善策を立案・実行することにした。

(1247文字)

設問ウ

3.サービス可用性の目標達成のための課題と対策

3.1.課題の特定

 前述の分析の結果、以下の課題を特定した。
1)復旧手順の不備解消
 ネットワークスイッチ障害時の復旧手順の中で、エラー発生時の対処方法が明文化されておらず、復旧時間が長引く原因となっていた。
2)負荷ピーク時の性能改善
 季節需要によりアクセスが集中する期間に、応答時間が通常平均1秒のところ5秒以上に増加し、ユーザーエクスペリエンスの悪化に繋がっていた。
3)障害予兆の監視ポイント追加
 ストレージデバイスの障害予兆に対する監視設定が不足しており、予防的な対応ができていなかった。

3.2.改善策

1)復旧手順の整備
 過去のインシデントデータをもとに、復旧手順を標準化し、復旧時間の短縮を図った。特に、エラー発生時の分岐処理を明文化した。また、手順書を月1回定期的にレビューし、最新の環境に対応させた。
2)負荷分散対策の強化
 アプリケーションの負荷分散設定を最適化し、ピーク時のリソース利用を効率化した。具体的には、ロードバランサーの設定を見直し、処理負荷の均等化を図った。さらに、季節需要を予測するための負荷シミュレーションを導入し、想定される最大負荷条件下でのシステム動作を検証した。
3)監視設定の見直し
 ハードウェア障害予兆を検知するために、新たにストレージI/O速度や電源装置の温度を監視項目として追加し、障害発生前の対応を可能とした。

3.3.結果と展望

 これらの改善策により、MTRSが平均20分に短縮し、応答時間もピーク時において通常比20%改善された。さらに、予防的対応の実施件数が増加し、稼働率が99.97%まで向上した。

 今後は、さらに高い可用性目標(例:99.99%)を実現するため、以下の施策を計画している。
1)自動復旧機能の導入
 機械学習を活用した障害予測モデルの導入により、障害発生前に予防措置を自動的に適用し、復旧時間をゼロに近づける。
2)冗長化の強化
 ネットワークおよびデータベースサーバの冗長構成を強化し、単一障害点を完全に排除する。
3)サービスレベルのモニタリング
 リアルタイムダッシュボードを利用して、主要なサービスレベル指標を継続的に監視し、異常を即座に検知・対応する仕組みを構築する。

 これらの施策を段階的に実行し、さらなるサービス品質の向上と顧客満足度の向上を目指す。

(1050文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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