【SM】令和3年度 午後Ⅱ 問1(ヘルプデスク編) – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問1 事業関係管理におけるコミュニケーションについて

 顧客との関係を良好に保つための事業関係管理は、ITサービスマネージャの重要な業務である。事業関係管理では、顧客の事業及び業務内容を深く理解し、顧客の期待に沿ったサービスの提供に向けて、顧客満足の把握と改善、利害関係者間の調整などのマネジメント活動が必要となる。
 事業関係管理では、目的に応じて、顧客とのコミュニケーションだけでなく、サービスの供給に関与する利害関係者とのコミュニケーションも必要である。
 コミュニケーションの対象とする情報には、例えば、サービスの要求事項、サービスのパフォーマンス傾向、サービス満足度、苦情、障害対応の状況、新規サービス及びサービス変更に関わる要求事項などがある。
 コミュニケーションの仕組みとしては、ミーティングでの報告、電子メールでの相談、グループウェアでの情報共有、SNS又は連絡ボードでの連絡などが考えられる。
 情報の重要性、迅速性、緊急性などに配慮して、情報伝達の間隔や方法を定めるなど、サービスや組織の特徴を踏まえた効果的な取決めを行い、確実に実践していくことが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と、事業関係管理の概要及び事業関係管理におけるあなたの役割について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた事業関係管理のために特に重要と考えたコミュニケーションについて、その目的、対象とした情報、特に重要と考えた理由、及びコミュニケーションの仕組みについて、工夫した点を含めて、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べたコミュニケーションについて、顧客との良好な関係を保つという観点でどのように評価しているか。また、今後の課題と対応についてどのように考えているか。600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービスと事業関係管理の概要及び役割

1.1.ITサービスの概要

 私が担当したITサービスは、従業員1万人規模の製造業A社における社内ヘルプデスクである。このヘルプデスクは、社内の情報システム部門に所属する10名の専任要員で運営されており、私はその責任者として管理業務を担当している。
 社内ヘルプデスクは、主に以下の3つのサービスを提供している。
・業務システムの操作方法に関する問い合わせ対応
 経理システムや人事システムなど、基幹業務システムの利用に関する質問への回答を行っている。
・パソコンやネットワークなど、ITインフラの利用に関するトラブル対応
・新入社員や異動者向けのIT研修の実施

1.3.事業関係管理の概要と役割

 責任者として、以下の3つの役割を担っている。

・経営層や各部門の管理職との定期的な対話を通じて、事業部門のニーズや課題を把握し、サービス改善につなげる。
・ヘルプデスク要員のスキル向上や業務効率化を推進し、顧客満足度の向上を図る。
・情報システム部門内の開発チームや運用チームと連携し、システム障害の未然防止や迅速な復旧を実現する。

(513文字)

設問イ

2.重要なコミュニケーションの実践

2.1.重要と考えたコミュニケーション

 社内ヘルプデスクの事業関係管理において、特に「システム障害の予防と対策に関する情報共有」を最も重要なコミュニケーションと位置付けた。なぜなら、システム障害は業務停止に直結し、会社全体の生産性に大きな影響を与えるためである。

2.2.コミュニケーションの目的

 このコミュニケーションには、以下の3つの目的がある。

1)システム障害の予兆を早期に検知し、未然防止を図ること
2)発生した障害に対して迅速な復旧を実現すること
3)類似障害の再発を防止すること

2.3.対象とした情報

 具体的に以下の情報を対象とした。

1)ヘルプデスクへの問い合わせ傾向分析
 日々のユーザからの問い合わせ内容を分析し、特定のシステムに関する問い合わせが急増していないかを監視している。問い合わせ急増は、システム障害の予兆である可能性が高いためである。

2)システムの性能情報
 基幹システムの応答時間やリソース使用率など、システムの性能に関する情報を継続的に収集している。性能劣化は、システム障害につながる重要な指標だからである。

3)障害対応の進捗状況
 システム障害が発生した際の原因究明や対策実施の進捗状況を共有している。これにより、関係者全員が最新の状況を把握できる。

2.4.コミュニケーションの仕組みと効果的な工夫

 以下の3つの仕組みを整備し、それぞれに工夫を加えている。

1)グループウェアでの日次報告
 毎朝、前日の問い合わせ分析結果とシステム性能情報をグループウェアに投稿している。具体的な工夫として、パレート図を活用し、問題の優先度を視覚的に表現している。これにより、開発チームや運用チームが注目すべき課題を即座に認識できるようになった。

2)インシデント管理システムの活用
 障害対応の進捗状況を一元管理するため、インシデント管理システムを導入した。具体的な工夫として、ステータスの更新や対応記録の入力を簡素化し、担当者の負担を最小限に抑えている。これにより、リアルタイムでの情報更新が実現できた。

3)週次ミーティングの開催
 毎週金曜日に、ヘルプデスク、開発チーム、運用チームの責任者が参加するミーティングを実施している。具体的な工夫として、なぜなぜ分析を活用し、障害の真因究明と再発防止策の検討を行っている。これにより、表面的な対症療法ではなく、本質的な課題解決が可能となった。

(1089文字)

設問ウ

3.コミュニケーションの評価と今後の展望

3.1.コミュニケーションの評価

 システム障害に関する情報共有の取り組みは、顧客との良好な関係を維持する上で、以下の3点で高い効果があったと評価している。

1)障害対応の迅速化
 問い合わせ傾向の分析により、システム障害の予兆を早期に検知できるようになった。具体的には、障害の検知から対応完了までの平均時間が、取り組み前の4時間から2時間に短縮された。これにより、利用部門の業務への影響を最小限に抑えることができている。

2)透明性の向上
 インシデント管理システムによる情報の一元管理により、障害対応の透明性が向上した。利用部門からは「システム障害が発生しても、現在の状況や今後の見通しが明確に分かるようになった」という評価を得ている。

3)再発防止の実現
 週次ミーティングでの詳細な原因分析により、類似障害の再発を防止できている。実際に、同一原因による障害の再発件数は、取り組み前と比較して80%削減された。

3.2.今後の課題と対応

 一方で、以下の2点を今後の課題として認識している。

1)予防保全の強化
 現状の取り組みは、システム障害の「早期発見・早期対応」が中心となっている。しかし、顧客満足度をさらに向上させるためには、障害を予防する取り組みの強化が必要である。具体的な対応として、AIを活用した予兆検知の仕組みを導入し、障害の事前検知率を現状の60%から90%に向上させる計画である。これにより、計画的な予防保守が可能となり、突発的なシステム停止を最小限に抑えることができる。

2)ナレッジ活用の促進
 過去の障害対応の記録は蓄積されているものの、その知見が十分に活用されていない。例えば、新規システムの開発時に過去の障害事例が参照されず、同様の問題が再発するケースがある。具体的な対応として、インシデント管理システムに蓄積された情報を、開発プロジェクトで活用するためのガイドラインを整備する予定である。

(868文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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