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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問2 重大なインシデント発生時のコミュニケーションについて
ITサービスマネージャは、重大なインシデントが発生した場合には、あらかじめ定められた手順に従い、インシデント対応チームを編成して組織的な対応を行う。重大なインシデントの対応手順は、通常のインシデント対応手順に“何が重大なインシデントに当たるか”といった定義や必要な活動を加えて規定される。手順の中には、例えば、インシデントの発生や解決に向けた対応の経過状況を解決に関わる内部メンバだけでなく、適切な人に適切な方法で通知するなどの利害関係者とのコミュニケーションの活動が規定されている。
具体的には、次のような利害関係者とのコミュニケーションを行う。
①顧客に対しては、適切な要員からインシデントの発生や対応結果を連絡する。
②サービスデスクに対しては、利用者からの問合せ対応に必要となる回復計画や回復時間などについての情報共有を行う。
③外部供給者に対しては、専門的技能及び経験を保有する要員の人選と解決に向けた活動の依頼を行い、支援を受ける。
重大なインシデントへの対応では、目標時間内での解決のために緊急な手順の実施が必要とされることもあり、インシデント対応チームのメンバ及び利害関係者とは正確かつ迅速な情報共有が重要となる。また、ITサービスマネージャはサービスの回復後、重大なインシデントへの対応についてのレビューを行い、コミュニケーションにおける課題を明らかにすることも必要である。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、発生した重大なインシデントの概要及び利害関係者について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた重大なインシデントへの対応で実施した手順の内容を述べよ。また、対応に当たって、利害関係者とどのようなコミュニケーションを行ったか。情報の正確性と対応の迅速性の観点を含め、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた重大なインシデントへの対応で明確になったコミュニケーションにおける課題と改善策について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービスと重大なインシデントの概要
1.1.ITサービスの概要
私が携わったITサービスは、製造業向けの生産管理システムの運用管理である。私はこのシステムの責任者を担当した。このシステムは、顧客の生産計画に直接影響を及ぼすため、24時間365日稼働が求められる。この点を考慮して、重大インシデントの条件を下記と定義している。
1)サービス停止が1時間以上継続し、複数の製造ラインに影響を及ぼす障害
2)主要顧客の業務継続に致命的な影響を与える障害
3)他の関連システムにも影響を及ぼし、復旧に多大なリソースを要する障害
1.2.重大なインシデントの概要
ある日、データベースの接続障害により、製造ラインが停止し、生産計画が大幅に遅延した。障害は主要モジュールの接続設定ミスに起因し、全体で6時間の停止が発生した。このため、顧客の損失は約5,000万円と推定され、重大なインシデントに該当すると判断した。
1.3.利害関係者
本インシデントにおける、利害関係者は次の通り。
1)顧客
業務継続性を確保するため、迅速な情報提供と対策共有が不可欠である。また、顧客が対応可能な、業務影響を最小化する対応を依頼することも重要である。
2)サービスデスク
インシデントの一次窓口として迅速なエスカレーションを行い、顧客の不安を軽減する役割を担う。継続的なモニタリングとインシデント対応チームへのフィードバックは、情報の正確性において重要である。
3)運用チーム
システム構成や障害箇所に関する技術的理解があり、効率的な外部供給者との連携には必要な存在である。
4)外部供給者
技術支援を通じ、迅速な原因特定と対策実施をサポートする。専門知識を有しており、インシデントの解決に不可欠である。
(783文字)
設問イ
2.重大インシデントの対応と利害関係者とのコミュニケーション
重大インシデントでは、暫定対応による影響範囲の拡大防止が最優先である。従って、通常インシデントとは違い、重大インシデントの対応手順は次のように設計した。
2.1.インシデント検知
サービスデスクが一次受付を行い、影響範囲を確認する。
・通常インシデントの場合、①原因特定(内部リソースでの調査、進捗に応じたエスカレーション)、②解決(顧客への結果通知)③インシデントのクローズ。
・重大インシデントの場合、次項以降の対応を行う。
2.2.専任チーム編成
サービスデスクが即時エスカレーションし、専任のインシデント対応チームを編成する。具体的には、インシデントの分類ごとにリスト化した緊急連絡先に対して、一斉連絡を行い、15分以内にメンバーを招集する。
今回の場合、以下の対応を行った。
・サービスデスク:インシデントの第一報を受け、重大インシデントであることを運用チームにエスカレーションし、必要情報(発生時間、発生モジュールなど)を即時共有した。
・私:顧客に第一報として、インシデント発生と影響範囲の暫定的な説明を提供した。「現在調査中」と伝え、過剰な期待や不安を抑制した。
・運用チーム:影響を受けたシステムモジュールの特定を外部供給者に依頼し、初動調査の進捗状況をダッシュボードに記録し、サービスデスクと顧客に共有した。
2.3.原因特定
インシデントの直接原因となっている箇所のログを分析し、原因を特定する。原因特定を迅速に行う工夫として、ログの収集は自動化や、ストレージのI/O負荷や応答時間などの項目はダッシュボードに表示している。視覚的にわかりやすくすることで、調査する担当者の負担軽減も寄与している。
今回の場合、以下の対応を行った。
・運用チーム:影響範囲の調査状況を共有し、影響を受けたシステムの詳細を整理。調査の進捗を30分単位でダッシュボードに記録し、顧客・サービスデスクに共有した。
・サービスデスク、製造ラインへの影響を顧客に報告し、顧客側の業務影響を共有した。
・顧客:サービスデスクからの報告を基に、暫定対応計画の検討を実施。
・外部供給者:問題箇所に関連するシステムモジュールの情報を運用チーム提供し、過去の類似事例や対策方法の有無を確認した。その結果を運用チームにフィードバックし、初期的な技術的アドバイスを依頼した。
2.4.暫定対応
特定した原因に基づく、暫定対応策(システム再起動、縮退運転など)を複数検討する。各対応策を対応コストや二次障害の発生リスクなどを評価し、最善策を実施する。
今回の場合、以下の対応を行った。
・私:顧客に対して暫定対応策(影響のない製造ラインでの優先生産計画)を提案し、合意を得た。
・外部供給者:暫定措置に必要な技術的変更を運用チームに依頼し、随時ダッシュボードで進捗確認した。
・サービスデスク:顧客からの追加問い合わせへに対応するため、暫定対応の実施状況を適時顧客に通知し、顧客との信頼関係を維持した。
2.5.恒久対策
インシデントの根本原因分析を行ったうえで、恒久対策案を実行する。暫定対応同様、対応策は複数検討するが、定性的分析以外に定量的な観点でも分析を行った上で対応策を決定する。
今回の場合、以下の対応を行った。
・運用チーム:調査結果を顧客にわかりやすく説明するため、根本原因と恒久対応策を文書化した。
・私:顧客に対して恒久対応策の実行計画を説明し、承認を得た。対応完了後には改善報告を行った。
・外部供給者:恒久対応策実行のための技術的支援を運用チーム依頼し、スケジュールの調整を行った。
(1592文字)
設問ウ
3.重大インシデント対応時のコミュニケーション上の課題と改善策
3.1.コミュニケーションの課題
1)情報伝達の遅延
一部の連絡の遅延が顧客対応が混乱を招き、サービスデスクへの状況共有が10分以上遅延した。結果として、顧客への説明に不一致が発生した。
2)情報共有プラットフォームの不備
インシデント対応において、関係者間で使用される情報共有プラットフォーム(例:チケット管理システムやダッシュボード)が統一されていなかった。このため、一部の関係者が最新情報を取得できず、対応の遅延や重複作業が発生した。
3)対応スキルのばらつき
チーム内でインシデント対応スキルや知識にばらつきがあり、重要な意思決定や対応の質に差が出た。これにより、特定のメンバーに対応が集中し、全体の対応スピードが遅れた。
3.2.改善策
1)情報共有プラットフォームの統一化
関係者間で使用する情報共有プラットフォームを統一する。具体的には、リアルタイムで情報を更新・参照できるクラウドベースのチケット管理システムやダッシュボードを導入する。
関係者全員が同一のプラットフォームを使用することで、情報の一貫性が保たれ、情報の伝達速度や精度向上が期待できる。
2)対応スキル向上のためのトレーニングの実施
インシデント対応チーム全員に対し、シミュレーションを用いたトレーニングや対応手順に関する定期的な教育を実施する。これによって、対応スキルのばらつきを解消し、対応チーム全体の対応能力が向上することで、迅速かつ効果的な対応が可能となる。
優先度が最も高い改善策は、以下の観点から、情報共有プラットフォームの統一化である。
・課題解消の効果が広範囲に及ぶ
情報共有プラットフォームの統一は、他の改善策と相乗効果を発揮する。情報が統一されれば、スキルが十分でないメンバーも適切な対応が可能となり、リソース効率も向上する。
・インシデント対応のスピード向上
リアルタイムで一貫性のある情報が共有されることで、意思決定が迅速化され、インシデントの解決までの時間を短縮できる。
・顧客信頼の維持
顧客とのコミュニケーションにおいても、統一された情報を基にした報告が可能となり、信頼を維持しやすくなる。顧客の満足度向上にも直結する。
また、下記の2つの指標をモニタリングすることで、コミュニケーションの迅速性と正確性を評価し、改善策の効果測定を行う。
・インシデント対応時間(総所要時間と、各ステップごとの所要時間)
・顧客満足度(インシデント対応後の顧客アンケートによる、満足度スコア)
今後も継続的な改善と予防的アプローチにより、重大インシデントの発生防止と迅速な対応に努める。
(1174文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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