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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問1 ITサービスマネジメントにおけるプロセスの自動化について
ITサービスマネジメントを実践する組織では、ITサービスマネジメントにおけるプロセスを効果的かつ効率よく実施するために、ツールを使ってプロセスの作業を自動化している。例えば、
・“インシデント及びサービス要求管理プロセス”において、知識ベース検索機能を備えたツールを使って、サービスデスクが利用者からの問合せに対応する。
・“サービスの報告プロセス”において、ツールを利用してデータを集計し、サービス報告書をまとめる。
さらに、自動化の範囲を次のように拡大し、プロセスに関する自動化を進め、プロセスを首尾一貫して実行する程度(以下、プロセス成熟度という)を向上させていく。
(1)自動化されずに人が行っている作業に新しい技術を適用する。
・サービスデスクが行っている利用者とのチャット対応作業の一部を、AIを活用し、人間に代わってコンピュータが対応する。
・人間がデータを入力して作成しているサービス報告書の作成作業の一部を、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使って自動化する。
(2)プロセス間の連携を自動化する。例えば、変更管理プロセスからの“変更の成功”通知で、構成管理プロセスにおいてCMDBを更新する運用を自動化する。
ITサービスマネージャは、自動化の範囲の拡大に当たって、次のような活動を行う。
・プロセスで使っているツールの利用状況を把握し、今後の取組内容を決める。
・効果を評価するためのKPIとその目標値を定め、実施計画を作成する。
・業務適用又は試行運用を開始し、期待する効果の達成度を評価する。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、自動化対象としたプロセスの概要及び自動化の状況について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べたプロセスに関する、自動化の範囲の拡大に当たっての活動における取組内容及び実施計画について、KPIとその目標値を含めて、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた活動によって実現したプロセスの自動化及び組織におけるプロセス成熟度向上の評価について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要及び自動化対象のプロセス概要
1.1.ITサービス概要
私が携わったITサービスは、大手製造業向けのITインフラ管理サービスである。このサービスでは、全国規模で展開される製造拠点のネットワークやサーバ、アプリケーションの高可用性を目的として、24時間365日の監視と運用支援を提供していた。
具体的には、インシデント及びサービス要求管理プロセスを中心に、顧客からの問い合わせを受け付けるサービスデスクとインシデント対応チームが組織されていた。年間の問い合わせ件数は約5万件に達し、迅速な対応が求められた。
1.2.自動化対象のプロセス概要
自動化対象のプロセスは、インシデント管理プロセス及びサービス要求管理プロセスである。これらのプロセスでは、以下の課題があった。
1)サービスデスクの負荷増大
2)初動対応遅延による解決時間長期化
3)問い合わせ履歴の検索に時間がかかる
上記課題の解決のため、ナレッジ検索が可能なITサービス管理ツールを導入した。
1.3.自動化の対応状況
1)ナレッジ検索の活用
問い合わせの関連情報を、サービスデスクが即座に検索可能となり、問い合わせ対応時間を平均15%短縮できた。
2)インシデント分類とエスカレーションの自動化
AIを活用したインシデント分類機能を導入。例えば、障害内容を入力すると、関連するインシデントカテゴリを自動選択し、適切な対応チームにエスカレーションされるようにした。
3)レポート作成の自動化
月次データ集計からサービス報告書作成までのプロセスを、RPAを活用して自動化。報告書作成時間を50%以上削減できた。
これらの対応により、サービスデスクでの迅速な回答を可能にし、インシデント解決時間の短縮と、顧客満足度向上に貢献した。
(793文字)
設問イ
2.自動化範囲の拡大の活動
2.1.自動化範囲拡大の課題
自動化範囲を拡大する際、以下の課題が浮上した。
1)ツールの機能
顧客からの複雑な問い合わせを多言語で対応には、既存ツールはカバーできず、対応時間が遅延する場面があった。既存ツールでは対応できないプロセスが多いと、顧客満足度を低下させる。
2)従業員の納得感
新しい自動化技術の導入や既存業務フローの変更に対する、従業員からの抵抗があった。例えば、「操作方法が複雑」という指摘や、長年にわたり独自の手法で作業を行ってきたベテラン従業員が、新しいフローの適応に難色を示す場面があった。
3)データの品質
自動化の前提となるデータに不整合があり、これが自動化精度を低下させていた。例えば、システム間のデータ転送時に項目名が一致しておらず、重要なフィールドが欠落するケースが多発した。また、過去の手入力によるミスの蓄積も、自動化プロセスに影響を与えた。
2.2.具体的な取組内容
1)ツールの機能拡張
ツールの機能不足解消のため、新たにAIチャットボットの導入し、人的負担を軽減することにした。自動化の目標は、サービスデスクのチャット対応の50%とした。過去の問い合わせ履歴を分析すると、問い合わせ件数のうち約50%が、FAQや定型的な対応で解決可能であった。また、同業他社で40~60%の自動化を達成した事例が紹介されており、50%は達成可能な目標と判断した。
2)業務プロセスの再設計
現場スタッフを交えたワークショップを開催し、業務プロセスの再設計を実施した。これにより、業務フローの簡略化と自動化対象の明確化を図った。例えば、顧客からの問い合わせを受け付ける場合、これまでエスカレーションが複数の承認段階を経て行われていたため、対応が遅れるケースがあった。このプロセスを見直し、特定の条件下(コストの閾値以下、FAQに登録されている、など)では承認を自動化する仕組みを導入し、業務フローを簡略化した。
3)データ品質改善の取り組み
RPA導入前に、データクレンジング作業を実施した。特に重要なデータ項目については、精度95%以上を目標に設定した。RPA導入前のデータクレンジングでは、例えば、顧客マスターにおいて「住所」フィールドの形式がバラバラ(半角・全角混在、番地表記の揺れなど)であったため、自動化が失敗するケースが多発していた。これを統一するために住所正規化ツールを導入し、住所情報の正規化を行った。
2.3.具体的な実施計画
1)段階的な導入
自動化対象業務を段階的に適用することにした。業務プロセスは複雑であり、急激な変化は現場の混乱を招くリスクがあると考えたためである。
第一段階では、操作や運用が比較的単純なチャット対応を自動化し、これにより現場が新システムに慣れる時間を確保した。第二段階として、複雑な問い合わせ対応をAIで補助する形とし、初期段階で得た運用ノウハウを基に徐々に適用範囲を広げる計画とした。
2)トレーニングとサポート
新しいツールやプロセスに対する従業員の理解度向上のため、トレーニングセッションを複数回実施した。また、現場からのフィードバックをマニュアルに反映させるなど、従業員の不安・不満の軽減に努めた。
3)KPIと目標値の設定
効果測定のため、以下のKPIを設定した。
・チャット対応の自動化率:50%(ツールの機能拡張に伴う、改善効果の測定指標)
・データ整備完了率:95%(エスカレーションの効率化など、業務プロセス再設計による改善効果の測定指標)
・平均対応時間削減率:20%(データクレンジングによる、RPA成功率向上の測定指標)
(1570文字)
設問ウ
3.自動化したプロセスと組織における成熟度評価
3.1.プロセスの自動化
1)サービスデスクのチャット対応の自動化
AIチャットボットの導入により、問い合わせの50%を自動化を達成とした。これにより、平均対応時間は従来の25分から15分へ短縮され、サービスデスク担当者の負荷軽減に繋がった。また、自動化された問い合わせデータの収集と分析が可能となり、関連プロセスの改善に活用可能となった。
2)インシデント対応の効率化
インシデント分類とエスカレーションの自動化により、初動対応の迅速化が達成された。平均エスカレーション時間は10分から5分に短縮され、重大な障害の早期解決が可能となった。また、変更管理や構成管理プロセスへの情報提供が迅速化され、プロセス間の連携強化にも寄与した。
3)レポート作成の効率化
月次報告書の作成プロセスをRPAで自動化した結果、作成時間が従来の8時間から3時間へ削減され、運用コストが年間200万円削減された。この取り組みにより、リソースの有効活用が可能となり、継続的改善活動にも取り組める体制が構築された。
3.2.プロセス成熟度向上の評価
取組の結果、プロセス成熟度は大幅に向上した。特に、以下の成果を得られた。
1)プロセス間連携の強化
インシデント管理プロセスと、変更管理や構成管理プロセスの連携強化が可能になった。具体的には、インシデント分類やエスカレーションの自動化を通じて、変更の影響範囲が自動的にCMDBに反映可能になり、各プロセスが孤立せず、サービス全体の整合性が向上した。
2)管理の一元化
チャット対応の自動化やレポートの自動作成により、複数プロセスで利用されるデータの統合管理が可能になった。例えば、サービスデスクの問い合わせデータがインシデント管理プロセスやサービスレベル管理プロセスに自動的に共有され、データ精度が向上した。
3)標準化と効率化の推進
インシデント対応とレポート作成が効率化されたことで、プロセスの標準化が進んだ。特に、エスカレーション基準や承認フローを標準化することで、プロセス全体のスピードと正確性が向上し、顧客満足度向上に寄与した。
3.3.今後の展望
今後は「チャットボットの高度化などの自動化範囲のさらなる拡大」「プロセス間連携の測定によるボトルネック解消など、継続的なプロセス改善」「プロセス成熟度モデル活用による、定量的な成熟度評価」などの取り組みを通じて、プロセス成熟度のさらなる向上を図り、競争力のあるITサービスの提供を継続していく。
(1105文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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