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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問2 継続的改善によるITサービスの品質向上について
ITサービスの品質を向上するには、サービス品質の目標を設定し、目標達成に向けた改善活動を継続的に実施することが求められる。
サービス品質の目標として具体例を挙げると、稼働率の改善、インシデント発生件数の削減、サービス要求のリードタイム短縮などがある。また、目標達成のための方策としては、内部プロセスの改善、要員の技能向上などがある。
サービス品質の目標達成に向けた改善活動の取組みは、PDCAサイクルを適用して次のように進めていく。
①現状のサービス品質を把握した上で、サービス品質の目標及び目標値を設定する。
②目標値達成のための方策を立案し、実施する。方策を立案する際は、方策の実施状況を把握するための管理指標を設定する。また、実施費用及び実施期間にも留意する必要がある。
③管理指標の達成度合いを把握し、サービス品質の目標値の達成状況を確認する。
④①~③の活動を振り返り、評価した上で目標達成に向けての活動を見直し、次の取組み計画を策定し、継続的改善に取り組む。
このような活動の実施に当たっては、重要業績評価指標(KPI)を定め、定期的に評価し、目標達成に向けた継続的改善活動を行うことも有効である。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要及び特に重要と考えたサービス品質とその目標及び目標値について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べたサービス品質の目標値を達成するために立案した方策について、管理指標と方策立案時の考慮点を含め、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
サービス品質の目標達成に向けた改善活動を振り返り、評価した結果を次の取組み計画にどのように生かし、継続的改善活動を行ったかについて、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービスの概要と重要なサービス品質目標
1.1.ITサービスの概要
私が担当したITサービスは、大手小売チェーン向け店舗システムの運用管理である。全国規模に展開し、POS・在庫管理・発注の各システムが統合された基幹システムとして、24時間365日の稼働が求められた。1日当たりの取引件数は全店舗合計で約50万件、システム利用者は約8,000名であった。特に、近年のEC事業との連携により、リアルタイムでの在庫連携や価格調整が重要になっていた。
1.2.重要と考えたサービス品質と目標値
1)可用性の確保
小売業の特性上、システム停止が損失に直結するため、可用性が最重要だった。特に、売上の7割を占める週末の営業時間帯は、システム停止が与える損失額が最も大きく、重点的な管理が必要だった。過去の障害履歴から、データベースの性能に起因する障害が全体の60%を占めており、特に対処が必要だった。
・目標値
-年間稼働率:99.99%(計画停止を除く)
-重要時間帯(金~日の 10:00-22:00)の稼働率:99.999%
2)レスポンスタイムの維持
レジ待ち時間の増加は、顧客満足度の低下に直結する。顧客アンケートにより、レジ待ち時間が5分を超えると顧客満足度が30%低下することが判明したため、会計処理時間に厳格な目標値を設定した。また、在庫照会の遅延は機会損失に直結することから、こちらも重要な管理項目とした。
・目標値
-POSシステムの会計処理:3秒以内(95%ile)
-在庫照会処理:平均2秒以内
これらの目標値は、競合他社のベンチマーク結果と、当社の過去1年間の実績値から試算した。特に重要時間帯の稼働率は、競争優位性の観点から、業界最高水準に設定した。
(767文字)
設問イ
2.目標値達成のための方策
2.1.方策の全体像と優先順位
短期的な改善と中長期的な改善を組み合わせた方策とした。投資対効果と実現の容易性を考慮し、以下の優先順位で実施することとした。
1)即効性のある施策
・データベースパフォーマンスの最適化(実施期間:2ヶ月)
・システム監視の強化(実施期間:3ヶ月)
2)中期的な改善施策
・アプリケーションの処理最適化(実施期間:6ヶ月)
・インフラ基盤の強化(実施期間:8ヶ月)
2.2.具体的な方策の内容
1)データベースパフォーマンスの最適化
データベースのパフォーマンス改善として、クエリの最適化、インデックスの再設計、およびパーティショニングの見直しを実施した。特に、売上データと在庫データのアクセスパターンを分析し、アクセス頻度の高いデータのパーティション化を行った。投資コストは約2,000万円と試算したが、システム障害による機会損失(年間約3億円)の削減効果を見込んだ。
パフォーマンスチューニングの影響を最小限に抑える工夫として、まず検証環境で2週間の負荷テストを実施した。改修は深夜帯(1:00-5:00)に限定し、即時ロールバック手順も整備した。
KPI:
・データベースの応答時間(1秒以内を目標)
・クエリのキャッシュヒット率(90%以上を目標)
・テーブルスキャンの発生回数(1時間あたり10回以下)
・バッファヒット率(95%以上を目標)
2)システム監視の強化
AIを活用した予兆検知システムを導入し、過去2年分の障害データを学習させることで、システム異常の早期発見体制を構築した。導入コストは約3,000万円だが、障害対応時間の50%削減による運用コスト年間4,000万円の削減を見込んだ。
アラートのしきい値を段階的に調整すべく、3ヶ月間の試行期間によって予兆検知の精度向上を図った。さらに、運用チームへの教育期間として1ヶ月を確保した。
KPI:
・予兆検知の精度(誤検知率5%以下)
・障害の事前検知率(80%以上)
・監視項目のカバー率(重要コンポーネントの98%以上)
・障害対応時間の削減率(前年比50%減)
3)アプリケーションの処理最適化
POSシステムのトランザクション処理を見直し、特に会計処理と在庫更新のロジックを最適化した。具体的には、不要なデータベースアクセスの削減、処理の非同期化、およびキャッシュの活用を実施した。開発コストは約5,000万円だが、レジ待ち時間の短縮による顧客満足度の向上と、それに伴う売上増加(年間1億円以上)を見込んだ。
処理の非同期化に伴うデータ不整合のリスクを考慮し、2ヶ月間の並行稼働期間を設けた。また、店舗スタッフへの新機能研修を全店舗で実施した。
KPI:
・トランザクション処理時間の分布(95%ile)
・メモリ使用効率(ガベージコレクション頻度)
・同時実行トランザクション数
・顧客満足度スコア(四半期ごとの調査)
4)インフラ基盤の強化
クラウドサービスを活用したスケーラブルな基盤への移行を実施した。特に、ロードバランサとオートスケール機能を導入し、繁忙期の処理能力を自動的に最適化した。初期投資は約1億円だが、運用コストの年間3,000万円削減と、将来の事業拡大への迅速な対応を実現した。
セキュリティリスクを考慮し、外部専門家による診断を四半期ごとに実施することとした。また、コスト最適化のため、利用状況に応じた自動スケールダウンルールを設定した。
KPI:
・リソース使用率(CPU、メモリ、ストレージ)
・オートスケールの発生頻度
・システム運用コストの削減率
・事業要件への対応リードタイム
(1594文字)
設問ウ
3.改善活動の評価と継続的改善への取り組み
3.1.改善活動の成果
改善活動の結果、主要な指標において以下の成果を得ることができた。
1)システム可用性
・年間稼働率:99.95%→99.99%を達成(年間ダウンタイム:約4時間から52分に削減)
・重要時間帯の稼働率:99.98%→99.999%を達成(売上機会損失:年間3億円から3,000万円に削減)
2)レスポンスタイム
・POSシステムの会計処理:平均4.5秒→2.8秒に改善(レジ待ち時間:平均8分から4分に短縮)
・在庫照会処理:平均2.8秒→1.5秒に改善(接客時間:20%削減)
3)投資対効果
・総投資額:2億円
・年間削減効果:4.5億円(機会損失削減:2.7億円、運用コスト削減:1.8億円)
・ROI:225%(投資回収期間:6ヶ月)
上記の定量的な評価のほかに、定性的な評価として「店舗スタッフの業務効率が向上したことで、接客時間が増加した」「顧客満足度スコアが、前年比15ポイント増加した」「システム運用チームのワークライフバランスが改善した」といった声もあった。
3.2.新たな課題と継続的改善活動
一定の評価が得られた一方で、新たな課題を発見したため、下記の改善を継続して実施することにした。
1)運用効率化の強化
監視項目の増加によって、運用負荷が増大する可能性があった。そこで、来年度の第一四半期をめどに、運用業務の自動化とプロセスの最適化を実現する。
自動化の目標:
・チャットボットによる一次対応の自動化(目標:対応件数の40%削減)
・運用手順の80%を自動化(現状の40%から倍増)
・アラート統合による監視項目の30%削減
運用プロセスの最適化の目標:
・インシデント対応フローの50%削減
・ナレッジベース活用による解決時間の40%短縮
・定例作業の90%を自動化
2)予防検知の更なる強化
予兆検知システムによる誤検知率目標5%以下に対して、現在の誤検知率は8%にとどまっていた。来年度上期中をめどに、下記を目標に予兆検知のさらなる高度化を目指す。
・誤検知率を8%から3%に削減
・検知精度を現状の80%から95%に向上
・新規監視項目の追加(アプリケーションログ、ユーザー操作パターン)
これらの取り組みにより、年間運用コストを更に30%削減しつつ、サービス品質の向上を実現する計画である。
特に、自動化による運用効率の向上は、運用チームの技術力向上のための時間確保にも寄与すると考えている。
(1111文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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