- 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
- 小論文のネタを探している
- 合格者のアドバイスを受けたい
ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問2 プロセスの不備への対応について
ITサービスマネジメントで規定されるプロセスの確立は、ITサービスの品質を確保する上で重要である。例えば、インシデント管理のプロセスに不備があってインシデントの対応に時間が掛かったり、問題管理のプロセスに不備があってインシデントの発生が減らなかったりする。
ITサービスマネージャは、発生したインシデントに対処した後に、インシデントの内容や対応状況を整理し、インシデントの原因である問題を識別する。プロセスの不備がある場合には、プロセス単体の観点(手順の曖昧さ、抜け漏れ、想定外の事象の発生など)だけでなく、プロセス間の連携の観点(共有する情報の不足、連携するタイミングの悪さなど)も含めて調査し、対策を検討するべきである。
また、インシデントの原因となった問題を解決した後、過去に発生したプロセスの不備に起因するインシデントの傾向分析を行うなど、事前予防的な活動を行うことも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、不備があったプロセスの概要及び不備の内容について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べたプロセスの不備をどのように調査し、どのような対策を立案したか。工夫した点を含め、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
プロセスの不備に関連して行った、事前予防的な活動について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要とプロセスの不備
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、製造業向けの基幹業務システムに関連するサービスである。このサービスは、受発注管理、在庫管理、出荷計画の調整といった業務プロセスを支援し、複数拠点の業務を一元管理することで、製造効率と物流精度の向上を目指していた。顧客企業にとって、このシステムの安定稼働は競争優位性を維持する上で不可欠であった。
1.2.判明したプロセスの不備
インシデント管理プロセスに不備があった。このプロセスは、システム障害やユーザーからの問い合わせに迅速に対応し、影響の最小化が目的だった。具体的には、インシデントの受付、分類、優先順位付け、エスカレーション、対応、解決、報告という手順が定められていた。
インシデント管理プロセスに、以下の不備があることが判明した。
1)手順の曖昧さ
重大インシデントのエスカレーション基準が明確に定義されておらず、対応の遅延が発生した。例えば、過去6か月間で発生した30件の重大インシデントのうち、エスカレーションに要した時間が平均3時間を超えていた。
2)プロセス間の連携不足
インシデント管理と問題管理間で、情報共有が適切に行われず、問題管理プロセスが開始されるまでに平均2日を要した。
3)想定外の事象
システムの利用者数が急増した際に、インシデント受付数が通常の1.5倍に達し、優先順位付けが混乱し、重要インシデントの対応が5件遅延した。
インシデント管理の不備により、製造スケジュールが1日遅延し、特定の顧客への出荷が滞る事態が発生した。結果として、サービスの信頼性低下が顧客満足度に悪影響を与え、契約更新率が5%減少するリスクが懸念された。このような状況に対し、インシデント管理プロセスの抜本的な改善が急務であった。
(798文字)
設問イ
2.プロセス不備の調査と対策実行
2.1.インシデント管理プロセスの不備調査
インシデント対応の遅延が問題視されており、その原因を特定するために「インシデント分類プロセス」の不備を調査した。このプロセスでは、インシデントの初期分類が曖昧であったため、対応担当のアサインミスや優先順位の誤設定が頻発していた。例えば、ある担当者が障害原因が「ネットワーク関連」か「アプリケーション関連」かを迷い、結果として適切な対応が遅れる事例が繰り返し発生していた。
調査では以下のステップを踏んだ。
1)データ分析
過去6か月間のインシデント記録を精査し、解決時間が平均48時間を超えたケースを抽出。これらのケースの8割が分類プロセスの遅延に起因していた。
2)ヒアリング
サービスデスク担当者とインフラ担当者計8名に対して、分類基準の使い勝手や迷った事例についてインタビューを実施。「判断基準が具体的でなく、主観に依存していた」との声が多く挙がった。
3)プロセスフロー図の作成
現状のプロセスフローを視覚化し、手順の曖昧な箇所や情報共有のタイミングを特定した。特に、分類結果がエスカレーション時に正しく引き継がれていないケースが目立った。
以上の調査を経て、不備の原因を以下と特定した。
・分類基準の曖昧さ
特に新規のインシデントで判断が難しいケースが多発していた。
・情報共有不足
分類基準が文書化されておらず、暗黙知に頼った運用が行われていた。
2.2.対策の立案と実行
調査で明らかになった課題を基に、以下の対策を立案・実行した。
1)分類基準の明確化
「インシデント分類ガイドライン」を新たに作成し、具体的な判断基準を盛り込んだ。例えば、ネットワーク関連の障害の場合、「PINGテストの結果」と「ルーターのログ確認」を初期対応手順に明記した。
また、各カテゴリごとに代表的なトラブル例を事例集としてまとめ、現場で参照可能な形式にした。
2)プロセス間連携の改善
エスカレーション時の情報共有を徹底するため、ITILのベストプラクティスに基づき「エスカレーションチェックリスト」を導入した。具体的には、分類結果、原因仮説、初期対応結果をフォーマット化し、担当者の変更時に確実に引き継げる仕組みにした。
また、情報共有のタイミングを「分類完了後即時」とし、分類作業と対応作業が並行して進行するように改めた。
3)トレーニングの実施
サービスデスク担当者向けに、「インシデント分類ハンズオンセミナー」を開催した。ガイドラインの活用方法を実践的に学ぶ場を提供した。
参加者からは「分類基準が具体的になったことで迷いが減った」との評価を得た。
4)改善効果のモニタリング
導入後3か月間にわたり、インシデント対応時間のデータを毎月収集・分析した。その結果、解決時間の平均が48時間から36時間に短縮され、SLA違反件数も大幅に減少した。顧客満足度調査では、回答者の75%が「対応スピードが向上した」との評価があった。
2.3.実施時の工夫
これらの対策を効果的に実行するために、以下の工夫を行った。
1)現場の声の反映
ガイドライン作成時、担当者の意見を積極的に取り入れることにした。机上で作成したガイドラインは、実用性に乏しい考えたからである。
2)段階的導入
最初は特定の重要顧客向けサービスに対してパイロット運用を行い、課題を洗い出してから全体に展開した。すべての顧客に適用すると、未知の問題による影響範囲が大きくなってしまうからである。
これにより、プロセス改善の実効性を高め、スムーズな導入を進めた。
(1577文字)
設問ウ
3.事前予防的な活動
3.1.定期的なプロセスレビュー
今回の件で、定期的にプロセスを見直することが、プロセスの高度化に必要との教訓を得た。そこで、年次のプロセスレビューに加え、四半期ごとのレビューを導入した。
今回の場合は、プロセスの健全性評価基準の明確化を行った。具体的には、サービスの安定性や効率性を直接的に測定できる指標に、インシデント発生頻度、対応時間を加えた。これらの指標を選定した理由は、サービスの安定性や効率性を直接的に測定できるためである。例えば、インシデント発生頻度は、プロセスの予防効果を示す指標として採用した。
3.2.KPI設定とモニタリング強化
インシデント対応時間の短縮をKPIに追加することにした。具体的には、平均対応時間を20%削減することを目標とした。迅速な対応は、顧客満足度を向上させ、サービスへの信頼性を高める重要な要素である。この指標は、サービスの応答性を直接的に測定し、改善の効果を可視化できるため選定した。
これらのKPIを、定期的にモニタリングし、目標未達成の場合には速やかに是正措置を講じるようにした。
3.3.シミュレーション訓練
障害発生を想定したシミュレーション訓練を導入した。具体的には、過去のインシデントを基にしたシナリオを作成し、現場の対応力を強化した。この方法を選んだ理由は、座学研修やEラーニングなどよりも、実際の状況に近い訓練が対応力向上に最も効果的であると判断したためである。
また、訓練終了後には、対応結果を全員で振り返る場を設け、次回の改善につなげた。
3.4.ナレッジベース活用
インシデント対応力の向上を目的に、ナレッジベースの構築を強化した。例えば、「特定のクラウド環境で発生した障害の解決手順」「共有フォルダアクセスエラーの回避策」といった、各インシデントの詳細と再発防止のポイントを記載した。
効果的な共有を支援する工夫として、タグ付けや検索アルゴリズムを改善することで、迅速な情報取得を可能にした。
なお、外部ツールの活用は検討したが、自社の業務内容に特化した知識の蓄積が困難であることや、ツール導入に伴うコストが高いこと自製する選択肢を取った。
3.5.ナレッジ共有
チーム間の情報格差を減らすため、定期的なナレッジ共有会を開催した。ここでは、最近のインシデント対応事例や改善策を発表し、個々の知識をチーム全体で活用できるようにした。また、ビジネスチャットツールなどを活用し、リアルタイムで知識を共有できる環境を整備した。
事前予防的な活動を継続することで、インシデントの発生を抑制し、顧客満足度向上と競争優位性の維持に努める。
(1157文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
コメント