【SM】平成28年度 午後Ⅱ 問1 – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問1 ITサービスを提供する要員の育成について

 ITサービスマネージャは、ITサービスを提供する要員を適切にマネジメントすることが求められる。ITサービスを提供する要員に、適切な知識と技能及びそれらを適用する能力(以下、“要員の能力”という)が不足している場合には、ITサービスマネジメントの活動に支障を来す。例えば、
・問題管理プロセスを適切に運用する能力が不足している場合、インシデント発生時の事後対応的な活動にとどまり、事前予防的な活動を実施できず、インシデントの再発防止ができない。
・キャパシティの予測技法に関する知識が不足している場合、キャパシティ計画を適切に策定できず、サービスの応答時間の目標が達成できない。
 このような場合、ITサービスマネージャは、ITサービスを提供する“要員の能力”を高めるための要員育成目標を設定し、次のような活動を行う必要がある。
・ITサービスを提供するチームの役割を踏まえた上で、個々の要員の経験などを考慮し、“要員の能力”のうち重点的に高める必要がある能力を決定する。
・要員教育、訓練など、要員育成策を決定する。
 具体的には、要員育成計画の作成、OJTの着実な実施、モチベーション維持のための方策の実施などを行う。また、社内の人材育成体系、外部の研修機関の活用などにも考慮する必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と、ITサービスを提供する上で必要となる“要員の能力”について、必要となる理由を含めて800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた“要員の能力”のうち重点的に高めようとした能力及び実施した要員育成策について、工夫した点を含めて、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた要員育成策の評価、及び今後改善したいと考えている内容について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービス概要と必要となる要員の能力

1.1.ITサービス概要

 私が担当したITサービスは、自動車部品製造業の基幹システムの運用保守である。自動車部品を24時間体制で製造する工場の生産管理、在庫管理、購買、会計などの業務システムを運用し、3000人以上のユーザにサービスを提供している。特に、生産ラインに直結する在庫管理システムは、30分以上のシステム停止が発生すると、生産計画に重大な影響を及ぼすため、高い可用性が求められた。

1.2.必要となる要員の能力

1)システム構成の理解力
 サブシステム間の連携や、リアルタイムデータ連携の仕組みの理解力が必要である。障害の影響範囲を即座に特定し、適切な対応を取るためである。
特に、生産計画⇔在庫管理システム間のデータ連携は複雑で、深い理解が求められる。

2)問題解決能力
 24時間365日の安定稼働のため、障害の根本原因分析と再発防止策を立案・実行する能力が必要である。事後対応だけでなく、事前策も不可欠だからである。
過去の障害事例から得た教訓から、障害を未然防止する能力も重要である。

3)コミュニケーション能力
 生産部門、品質管理部門、物流部門など、多様なステークホルダーと円滑なコミュニケーションを取る能力が必要である。障害発生時の影響を最小限に抑えるため、生産計画の調整や、取引先への納期調整など、複雑な調整が発生するためである。
技術的な内容を、現場の作業者にもわかりやすく説明する能力も求められる。

4)性能分析・予測能力
 システムの性能データから、将来のリソース需要を予測する能力が必要である。業界の生産変動に応じて、適切なキャパシティ計画を立案するためである。
特に、新車種の立ち上げ時期には取引量が平常時の5倍に達するため、事前の性能評価が重要となる。

(799文字)

設問イ

2.重点的に高めようとした能力と実施した要員育成策

2.1.重点的に高めようとした能力とその理由

 過去1年間の分析により、システム停止による損失額の80%以上が、問題解決能力と性能分析・予測能力の不足に起因していたため、これら2つの能力を重点的に強化することとした。
他の能力についても重要ではあるが、現状の体制で一定レベルの対応が可能なため、次年度以降の強化項目とした。

1)問題解決能力の強化
 障害対応において、表面的な対処療法ではなく、根本原因の分析と再発防止策の立案ができる能力を重点強化対象とした。
過去1年間の障害分析により、データベースのデッドロックやメモリリークなど、同様の原因による障害が41件(全体の42%)を占め、累計で2,000万円以上の損失が発生していたためである。
特に、バッチ処理異常による在庫データの不整合が月2回程度発生しており、根本原因特定と対策が急務であった。生産計画への影響を考慮すると、1時間以内での復旧が必要である。

2)性能分析・予測能力の向上
 システムの性能分析と、将来需要の予測能力の向上を重点課題とした。
前年度の新車種立ち上げ時に、データベースの処理が遅延し、生産ラインが30分間停止した。これによる損失は、約1,200万円だった。
事後分析により、性能データの傾向分析が不十分で、適切なキャパシティ計画が立案できていなかったことが判明した。具体的には、トランザクション量が予測の2.5倍に達し、データベースのCPU使用率が98%まで上昇していた。

2.2.実施した要員育成策と工夫点

 育成策の立案にあたっては、短期的な課題解決と中長期的なスキル向上のバランス、また投資対効果を考慮した。年間予算の範囲内で、以下の施策を実施した。

1)段階的OJTプログラムの導入
 3ヶ月、6ヶ月、1年というマイルストーンを設定し、製造業の基幹システム運用に必要なスキルの習得計画を策定した。
特に工夫した点は、経験豊富なベテラン要員と若手要員をペアにする「徒弟制度」を導入したことである。ベテランの持つノウハウや過去の障害対応の経験則を、日々の業務の中で若手要員に学ばせる狙いがあった。
導入当初は業務効率の低下がみられたが、3ヶ月目以降は通常の効率を維持しながらの育成が可能となった。

2)実践的な演習環境の整備
 本番環境のレプリカを構築し、実際の障害シナリオに基づいたトレーニングを実施した。
工夫点として、過去3年間の重大障害20件を教材化し、特にデータベースのチューニングとシステム特有の処理方式について、原因分析から対策立案までを演習形式で実施した。

3)外部研修の戦略的活用
 ITILファンデーション研修を必須とし、24時間365日のシステム運用に必要なプロセス管理の基礎知識を習得させた。
また、ベンダーが主催する性能分析専門研修に四半期ごとに1名派遣し、そこで得た知識を社内に共有する社内勉強会を月1回開催した。

4)モチベーション維持のための施策
 四半期ごとの個人面談で、資格取得計画や技術スキル向上の進捗を確認し、課題の早期発見に努めた。
7つの専門分野ごとにスキルレベルを5段階で評価するスキルマップを作成し、四半期ごとの評価で、スキルレベルが向上した要員には報奨金を支給した。
当初は評価の公平性に対する懸念の声もあったが、評価基準の明確化と、評価者研修の実施により、9割以上の要員から評価制度への理解を得られた。

(1498文字)

設問ウ

3.要員育成策の評価と今後の改善点

3.1.要員育成策の評価

 各施策の投資対効果を定量的・定性的な側面から評価し、経営層への報告を四半期ごとに行った。総投資額2,000万円に対し、以下の効果が確認された。

1)定量的な成果
 重大障害(システム停止30分以上)の発生件数が、年間12件から5件に減少(58%減)し、金額換算で年間3,000万円の損失削減を実現した。特に、データベース関連の同一原因による再発が、前年度の8件から2件まで減少(75%減)した。
また、新車種立ち上げ時の性能問題による生産ライン停止が0件となり、前年度比で損失額1,200万円の改善を達成した。
さらに、夜間休日の障害対応時間が平均45分から28分に短縮し、時間外労働コストを年間300万円削減した。

2)定性的な成果
 問題管理プロセスが定着し、障害の予兆検知から対策実施までの一連の流れを、若手要員が主体的に実施できるようになり、新車種立ち上げ3ヶ月前からの性能評価と対策が適切に実施できるようになった。
徒弟制度によって、ベテラン要員の経験則やノウハウが効果的に継承され、若手要員の夜間対応が可能になったことで、ベテラン要員の負荷が30%低減した。

3.2.今後改善したい内容とその理由

 投資対効果と緊急性の観点から、以下の3点を優先的な改善項目と考える。

1)ナレッジ管理の強化
 現状、システム運用ノウハウや障害対応の判断基準が属人化されており、組織的な対応が十分ではなかった。特に、2年以内に定年退職予定のベテラン要員が2名がおり、過去15年分のシステム運用ノウハウが失われるリスクがあった。
具体的には、ナレッジベースを整備しノウハウを共有財産にする必要がある。

2)新技術への対応力強化
 来年度に予定されているシステムのクラウド移行に向けて、クラウド基盤やコンテナ技術のスキルが不足している。現在の要員の80%がオンプレミス環境での運用経験のみで、クラウド環境での性能管理や障害対応の経験が乏しい。移行時のリスクを最小化するため、今後1年間で、クラウド環境での運用スキルを持つ要員を5名以上育成する必要がある。

3)チーム間の相互理解促進
 サブシステムごとの専門チーム制によって各チームの専門性が高まる一方で、チーム間の知識共有や協力体制が十分でなかった。直近1年間で発生した重大障害の30%が、システム間連携に起因する複合的な問題であり、解決までに平均で2時間以上を要していた。
チーム横断的な定例勉強会の開催や、計画的な人材ローテーションなど、新たな施策の導入により、障害対応時間の削減が必要である。

(1142文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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