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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問1 ITサービスに係る費用の最適化を目的とした改善について
ITサービスに係る費用の最適化を目的として、ITサービスマネージャは、顧客の要求事項、サービス提供者の経営環境、技術の変化などに応じ、顧客と合意したサービス目標に照らして、適切な費用改善策を立案し、実施する必要がある。
適切な費用改善策を立案し実施するためには、まず、現状のサービスを提供するために要している費用の状況を把握し、改善目標を設定する。次に、パレート図、特性要因図などを用いて、非効率な活動がないか、必要な資源の選定・活用において改善の機会がないかなどについて分析する。その上で、運用効率や生産性の向上に向けて、次のような観点から施策を検討する必要がある。
・サービス管理手順の簡素化、自動化ツールの活用など、プロセスの見直し
・他サービスとの要員配置の調整、外部要員の活用など、体制の見直し
・外部の供給者に委託しているサービスのサービス時間や費用など、契約内容の見直し
ITサービスマネージャは、関係部門とも協議し、費用対効果、実行可能性などを十分に検討した上で費用改善策を決定し、実施することが重要である。
費用改善策を実施した後は、改善目標を達成できたかどうかを監視・分析する必要がある。また、様々な環境の変化に応じて、費用の最適化に向けた継続的な取組みを推進していくことも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、ITサービスに係る費用の最適化を目的とした改善を行うに至った背景について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた背景を契機として実施した費用改善策と、改善策を立案し実施する上で検討した内容について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた費用改善策を実施した後、改善目標を達成できたかどうかを監視・分析した内容と、費用の最適化に向けた継続的な取組みについて、600字以1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要と費用最適化の背景
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、大手小売チェーンの店舗向けPOSシステムの運用保守である。全国規模に展開された基幹システムであり、24時間365日のサービス提供が求められた。このサービスは5年前から提供を開始し、年間売上高15億円の契約規模であった。具体的には、POSレジ15,000台、バックヤードPC2,400台の監視・保守、障害対応、および定期的なソフトウェアアップデートを行っている。顧客からは、システムの安定運用と迅速な障害対応が求められた。
1.2.費用最適化の背景
費用最適化の背景には、以下の3つの重要な要因があった。
1)顧客企業の経営環境
eコマース事業者との競争激化により、IT関連費用の20%削減という要求を受けた。これは年間3億円の費用削減に相当する。顧客からは「競合他社と比較して運用費用が割高である」との指摘も受けており、契約更新の判断材料とされていた。
2)サービス提供体制の非効率性
24時間365日の運用体制を3拠点で維持していたが、深夜帯の作業量が少なく、人員の遊休時間が発生していた。運用データの分析により、深夜帯作業の90%が監視業務であり、重大障害は年間10件以下であることが判明した。
3)技術環境の変化
クラウドベースの監視ツールやAI技術の発展により、人手による監視作業の自動化が実現可能となっていた。特に、業界での導入実績が増えつつあるAIベースの予兆検知は、従来比で30%の工数削減を実現しているとの情報を得ていた。
以上の要因から、サービスレベル維持とコスト削減の両立が必要となった。特に、人的リソースの効率的な配置と、先進的なツール活用による自動化が重要課題だった。
(776文字)
設問イ
2.費用改善策の実施
2.1.費用改善策の選択肢
費用最適化に向けた改善策として、以下の4つの選択肢を検討した。
1)自動化ツールの導入
クラウドベースの監視ツールとAIを用いた予兆検知システムの導入により、手作業による監視業務を自動化する。これにより、人的リソースをより価値の高い業務にシフトする。
2)運用体制の見直し
深夜帯の監視作業を自動化し、人員配置を最適化する。昼間の業務に要員をシフトして遊休時間を削減し、効率向上を狙う。
3)契約内容の再検討
サービスレベルの再定義を行い、必要最小限のサービスに絞ることでコスト削減を図る。ただし、これは顧客の理解と合意が必要。
4)外部リソースの活用
一部の保守作業を外部委託し、固定費を変動費に転換する。ピーク時や専門知識が必要な場合に外部要員を活用する。
2.2.選択肢からの決定
各選択肢について、下記の観点で評価・検討を行った。
1)費用対効果
・自動化ツールの導入
運用コストの大部分が監視業務であることが、パレート分析によって判明していた。そのため、自動化によって早期の投資回収が可能。
・運用体制の見直し
深夜帯の作業が監視中心のため、遊休時間の削減による即時的なコスト削減が期待できる。
・契約内容の再検討
コスト削減に直結するが、顧客満足度への影響と合意形成の難しさからリスクが高く、却下。
・外部リソースの活用
変動費への転換が可能だが、品質管理やコミュニケーションコストの増加が懸念され、リスクが高い。
2)リスク管理
・自動化の導入
ダウンタイムを最小化するためには、AIの精度や誤報率の慎重な評価が必要。
・運用体制の見直し
サービス品質維持のため、シフト管理や要員教育の強化や、深夜勤務の廃止による生活リズムの変化への配慮が必要。
3)顧客のニーズ
顧客は、コスト削減とサービス品質の維持の両立を期待している。自動化はこれらのニーズを満たす。
4)実行可能性
・新技術の導入には要員のスキルアップが必須。段階的な教育プログラムと、混乱を防ぐためテストフェーズが必要。
以上の検討結果から、短期と長期のバランスが取れた対策として、自動化ツールの導入と運用体制の見直しを行うことにした。
2.3.実施した費用改善策
1)自動化ツールの導入
クラウドプラットフォームを活用し、サーバーの状態やネットワークのトラフィックをリアルタイムで監視するツールを導入した。これにより、サーバーダウンやネットワークの異常を即座に検知し、自動でリスタートや負荷分散を行うことが可能となった。
また、AIを使って過去の障害データやシステムのパフォーマンスデータを分析し、障害の予兆を検知するようにした。例えば、CPU使用率の急激な上昇やメモリリークの検出とアラートの自動発行によって、迅速な対応を可能にした。
現場の混乱を最小限に抑える工夫として、自動化の範囲を一部のシステムで試験的に運用し、段階的に適用範囲を広げていった。
これらの対応により、深夜の監視業務の90%を自動化することができ、障害発生率は年間10件から3件に低減した。
2)運用体制の見直し
深夜帯の監視作業を自動化ツールに任せ、深夜勤務を不要にした。代わりに、昼間の業務に要員をシフトし、ピーク時間に合わせた人員配置を行うようにした。また、業務量の変動に応じた柔軟なシフトを組むようにし、休憩時間や休日の配置を見直し、要員が健康的に働ける環境に配慮した。
この対策により、要員の健康管理が改善され、長期的には離職率の低下や生産性の向上につながった。
(1571文字)
設問ウ
3.改善結果と継続的取り組み
3.1.改善目標の達成
1)コスト削減
監視業務のコストが40%削減され、目標の20%削減(3億円)を超える4.5億円の節減を達成した。特に、深夜の監視業務が90%自動化された効果が大きかった。
2)サービス品質
AI予兆検知の導入により、重大障害の発生率が70%低減した。AIが障害を予測することで、障害発生前のメンテナンスが可能になり、サービスダウンタイムの大幅な削減を実現できた。SLAである稼働率を維持することができ、顧客満足度調査では15ポイント向上した。
3)効率化
運用業務全体の作業工数を30%削減できた。手作業で行っていた監視業務の大部分が自動化されたことが、作業工数削減に大きく寄与した。深夜の監視作業が90%自動化された効果が大きかった。
また、平均修復時間(MTTR)を50%短縮できた。AIによる予兆検知が効果的で、システムの異常や障害を事前予測が可能となり、障害発生前に事前対応が可能になったことが、MTTR短縮に寄与した。
3.2.継続的な取り組み
1)自動化ツールのパフォーマンス評価
運用環境の変化に自動化ツールが追随できていないと、自動化の効率が落ちてしまうため、定期的な評価が必要と考えた。そこで、自動化ツールのパフォーマンスを毎四半期ごとにチェックし、必要に応じて更新やチューニングを行うことにした。特に、AIの予測性能を維持・向上させるために、AIモデルの学習データを最新の運用データで更新することが重要と考える。
2)新技術の導入
サービスの陳腐化を防ぐためには、市場の需要や技術の進化に追従し、新技術を積極的に取り入れることが重要と考える。特に、顧客の急激な需要変動に対応するためには、ピーク時の対応力向上が必要であるため、システムのスケーラビリティを向上させる、新たなクラウドサービスやAIツールが登場した際は、早めにテスト導入を検討することにした
3)教育とスキルアップ
新技術の導入に伴い、要員のスキルアップが必要不可欠である。また要員のスキルアップは、業務の効率化だけでなく、要員が自己成長を実感できるモチベーション維持にも繋がるる。要員が新技術を理解し活用できるよう、教育プログラムを継続的に企画していく。特に、新しいAIやクラウド技術に関するトレーニング(例えば、AIモデルのチューニングやクラウドサービスの最適化に関するワークショップ)を導入し、スキルレベルの向上を図る。
これらの取り組みにより、一時的な費用最適化はなく、組織の成長と技術の進化に合わせた持続可能なプロセスとして確立し、組織の経営戦略に貢献し、新規市場進出や競争力強化に繋げていく。
(1163文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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