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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問1 ITサービスの移行について
ITサービスの安全かつ円滑な開始に向け、顧客やIT部門の関係者と連携してITサービスの移行を確実に実施するための計画(以下、移行実施計画という)を策定することは、ITサービスマネージャの重要な業務である。
移行実施計画では、①ITサービスの受入基準に従って移行の対象となるITサービスを検証する方法と、②移行手順及び移行体制を整え稼働環境に展開する方法、などを計画する。その際に、対象となるITサービスの特徴や各種制約など移行の実施において考慮すべき点とその対応策を明確にすることが重要である。
具体的には、まず、①については、リリースの内容、運用手順、運用体制、キャパシティなどの検証において考慮すべき点を、②については、稼働環境に展開する上で、時間、環境、体制の制約など考慮すべき点を洗い出す。次に、考慮すべき点について、関係者と十分に協議し、対応策を決定する。また、対応策が確実に実施されるよう工夫することも重要である。
移行の実施後は、移行実施計画に沿って実施した結果についてレビューを行い、その結果を例えば組織のナレッジとして蓄積し、共有するなど、活用することも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
移行の対象としてあなたが携わったITサービスの概要と、移行実施計画の策定に当たって洗い出した考慮すべき点のうち、特に重要と考えたものについて、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた考慮すべき点について関係者と協議し、決定した対応策、決定した理由、及び対応策が確実に実施されるための工夫について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問アで述べたITサービスの移行実施後のレビュー結果とその活用について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービスと移行実施計画の概要
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、大規模小売業向けの在庫管理システムの運用管理である。本システムは、システムの老朽化や、新たな物流戦略への対応が必要となり、新システムへの移行が求められた。新システムは店舗間の在庫データをリアルタイムで共有できるため、欠品や過剰在庫のリスク軽減、物流コスト削減が期待されていた。
1.2.移行実施計画の概要
移行実施計画では、以下の点を中心に策定を進めた。
1)ITサービスの検証
受け入れ基準に従い、下記の観点で検証を実施した。
・リリースの内容
新たに追加された在庫分析機能が適切に動作するか、実証実験を実施した。具体的には、模擬データによるストレステストを行い、ピーク時の負荷にも耐えうることを確認した。
・運用手順
店舗要員が誤操作を防ぐためのマニュアル整備と、教育訓練プログラムの実施を計画した。具体的には、簡易業務フローの提供や教育訓練プログラムとして「初期導入時の集中研修」「月1回のオンライン研修」などを組み込むことにした。
2)稼働環境への展開
以下の観点で、稼働環境への展開がスムーズに行えるか確認した。
・時間制約
移行は営業時間外に行う必要があり、限られた時間内で完了する計画が求められた。そのため、詳細な作業手順とスケジュールの作成が必要である。
・環境制約
店舗ごとにネットワーク環境が異なり、ボトルネックの所在が不明確である。ネットワーク負荷試験でボトルネックを特定し、帯域幅と通信経路を最適化する必要がある。
1.3.特に考慮すべき事項
最も重要な事項は、店舗間ネットワークの遅延対策である。ネットワーク遅延は在庫データの同期に遅れを生み、適正在庫の維持が困難となるからである。
(793文字)
設問イ
2.移行実施計画に基づくITサービスの移行
2.1.移行実施計画の関係者との協議内容と対応策
最も重要と考えた考慮事項である「各店舗間のネットワーク遅延対策」について、関係者と協議を行い、以下の対応策を決定した。
1)ネットワーク遅延の事前検証と対策
システム開発部門、ネットワーク運用部門、および顧客のIT担当者を交え、各店舗のネットワーク環境を詳細に確認した。特に、ネットワーク帯域幅の制約が大きい店舗に対して、事前に全店舗でネットワーク負荷試験を実施し、ボトルネックを特定した。その結果に基づき、負荷分散機能の導入や、一部データの非同期転送を実施した。
対応策を確実なものにする工夫として、グラフやダッシュボードで負荷試験の結果を関係者間で共有した。ネットワーク負荷の問題点や改善箇所を、視覚的に理解しやすくすることで、関係者間での合意形成をしやすくする効果を狙った。
2)店舗側キャッシュ機能の実装
システム設計部門と協議し、ネットワーク遅延が発生した場合でも業務に支障が出ない仕組みを検討した。具体的には、「店舗側でキャッシュを保持する」「通信データ圧縮」「優先度に応じたデータ同期」を、コストや複雑性の観点で検討した。検討の結果、各店舗のサーバーに一定期間分の在庫データをキャッシュとして保持し、ネットワークが復旧次第、中央サーバーと同期する仕組みを導入した。
対応策を確実なものにする工夫として、パイロット店舗で新機能の動作確認を行う、限定的な運用を開始した。このアプローチにより、全店舗展開前にリスクを最小化することを目指した。具体的には、ネットワーク遅延やシステム障害の可能性を事前に検証し、全店舗展開時に必要な改修を迅速に把握できるようにした。
3)要員教育プログラムの実施
教育担当部門および店舗管理部門と連携し、システム移行に伴う操作変更点を要員に周知する方法を検討した。具体的には、各店舗向けに簡易マニュアルを配布し、加えて、移行前にリモート研修を実施することにした。特に、ネットワーク遅延時の業務影響を最小化すべく、遅延発生時の対応をスムーズに進めるための要員教育を行った。
対応策を確実なものにする工夫として、研修の理解度を確認するため、オンラインテストを実施し、不明点がある要員には個別指導を行った。要員が新システムの操作に自信を持ち、移行直後の混乱を最小限に抑えることが狙いである。また、移行直後の問い合わせ窓口を設置し、迅速に問題を解決できる体制を整備した。これにより、稼働開始後の運用の安定化を図った。
2.2.移行手順の実施状況
上記の対応策を反映し、移行手順を以下のステップで実施した。
1)ネットワーク負荷試験の実施と結果に基づく最適化
ネットワーク負荷試験では、各店舗の帯域幅を測定し、ピーク時間帯の通信量を分析した。特に通信量の多い店舗では、リアルタイムデータの非同期転送や圧縮アルゴリズムの適用を行い、通信量の最適化を実施した。
2)パイロット店舗でのキャッシュ機能の動作確認と展開
パイロット店舗を選定し、キャッシュ機能を限定的に導入することで、初期運用時の問題を検出した。例えば、同期遅延が発生した際のデータ矛盾を防ぐため、店舗内での再同期プロセスを改良した。その結果、全店舗展開前にキャッシュ機能の安定性を確保した。
3)全店舗での要員教育と移行作業の進行
全店舗の要員に対して、段階的に教育プログラムを実施した。各ステップでは、研修資料を活用し、操作変更点やネットワーク遅延時の対応方法を詳細に解説した。また、移行作業は事前に作成したスケジュールに基づき、店舗ごとに進捗状況を管理しながら進めた。
(1579文字)
設問ウ
3.移行実施計画の結果と今後の活用
3.1.移行実施計画の結果
1)ITサービスの検証
各段階でのシステム検証の結果、新機能である在庫分析機能は問題なく動作した。特に、キャッシュ機能によって、遅延が発生した店舗でも在庫データの正確性が維持された。また、教育プログラムの効果により、操作上の問題が最小限に抑えられた。
2)稼働環境への展開
移行作業は営業時間外に実施され、予定通り完了した。また、全店舗の稼働確認も速やかに行われ、初日の障害発生率は従来比で50%低減した。特に、教育プログラムによる事前習得や、問い合わせ窓口による関係者との情報共有がスムーズだったことが、迅速なトラブル対応を可能にした。
3.2.移行実施後のレビュー結果
移行作業完了後、関係者間でのレビューを実施し、以下の評価を得た。
1)キャッシュ機能の実装
ネットワーク負荷試験に基づく遅延対策として実施したキャッシュ機能が、全店舗で効果を発揮し、データ通信の安定性が確保された。また、パイロット店舗でデータ整合性の問題を事前に洗い出したことにより、本番展開時のリスク低減を実現できた。
2)要員教育プログラムの実施
要員のスムーズな操作習得が実現し、移行後の業務停滞を防止できた。
しかしながら、繁忙期にあたる店舗では参加が難しく、教育プログラムの参加率が店舗間でばらつきがあり、一部要員の操作習熟に時間を要した。また、移行後の問い合わせ窓口での対応が集中する時間帯があり、即応性が課題となった。
3.3.レビュー結果の今後の活用
レビュー結果踏まえ、下記の改善策を講じていく。
1)教育プログラムの改良
教育プログラムについては、各店舗の参加率を向上させるため、また、問い合わせ窓口の負荷軽減をさせるため、研修動画をオンデマンド配信する。また、研修進捗を管理するシステムによって参加状況を可視化することで、育成状況を把握しやすくする。
2)ナレッジの組織的共有
移行プロジェクトの成功事例を組織全体で共有するため、ネットワーク遅延対策におけるキャッシュ機能の構築手順などを記録した、ナレッジベースを構築する。これにより、同様の課題を未然に回避する可能性が高めるとともに、問い合わせ窓口の負荷軽減も図る。
これらの取り組みにより、移行作業全体の品質向上とITサービスの安定稼働を実現する。また、成功事例を他のプロジェクトに応用することで、組織全体のITサービス運営の品質向上にも繋げていく。
(1086文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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