【SM】平成25年度 午後Ⅱ 問1 – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問1 サービスレベルが未達となる兆候への対応について

 サービスレベルについて顧客と合意し、合意したサービスレベルを遵守することは、ITサービスマネージャの重要な業務である。サービスレベルを遵守していくためには、サービスレベルが未達となる兆候に対して適切な対応を図ること(以下、兆候の管理という)が重要となる。
 兆候の管理に当たっては、まず、監視システムやサービスデスクなどを通じて、システム資源の使用状況や性能の状況、利用者からの問合せ状況などの情報を幅広く収集する。
 次に、それらの状況の変化や傾向などを分析するとともに、過去の事例も参考にしながら、サービスレベルが未達となる兆候であると認識した場合には、原因を究明して適切な対策を講じる。
 また、兆候の管理を効果的に行うためには、関連部門と連携することによって、様々な情報を多面的に分析するなどの工夫が重要である。さらに、兆候の管理を行う仕組みを継続的に改善していくことも必要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と、兆候の管理の概要について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた兆候の管理において、サービスレベルが未達となる兆候及びそのように認識した理由と、サービスレベルを遵守するために実施した対策及びその結果について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問アで述べた兆候の管理を効果的に行うための工夫と、仕組みの改善について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービスと兆候管理の概要

1.1.ITサービス概要

 私が担当したITサービスは、企業の人事管理システムの運用である。このシステムは、クラウド基盤上で運用される仮想環境において、労働時間管理、給与計算、従業員データの一元管理を支援している。特に、従業員の勤怠データの入力や更新、各種レポートの作成を効率化する役割があり、人事部門の負荷軽減と業務の迅速化が図られている。

 このシステムは、リアルタイムでのデータ更新やレポート作成が可能であり、従業員満足度の向上にも寄与している。しかしながら、システム運用中には、リソースの使用率の急上昇やデータ処理の遅延といった兆候が現れることがあり、これらの問題が放置されると、サービスレベルの低下やシステム障害を引き起こす恐れがあった。

1.2.兆候管理の概要

 サービスレベル未達の可能性がある兆候を早期に発見し、迅速に対応する活動(兆候管理)として、システムのパフォーマンスや利用状況を監視するために、複数の情報源を活用している。具体的には、以下の方法を通じて兆候管理を実施している。

1)監視システムの活用
 リソース使用状況(CPU、メモリなど)のリアルタイム監視により、リソース使用率が異常に上昇した場合に早期に警告を出し、問題の予兆を捉える。

2)問合せ情報の活用
 問い合わせ情報を分析し、サービスレベルに影響を及ぼす可能性を早期に発見する。特に、頻繁に発生する問い合わせやパターン化された問題は、潜在的な障害の兆候と捉える。

3)過去の事例とデータの活用
 過去の障害履歴などを基に、同様の問題が発生した場合にどのような兆候が現れたかを分析し、対策を講じる。

 これらの活動を通じて、問題の早期発見と迅速な対策により、サービスレベルを維持し、顧客と信頼関係維持に努めている。

(800文字)

設問イ

2.サービスレベルが未達となる兆候と対策

2.1.サービスレベルが未達となる兆候

 本ITサービスにおいて、サービスレベルが未達となる兆候として以下の3つが認識された。

1)サーバ稼働率(目標:99.9%以上)の低下リスク
 サーバ監視システムのログ分析により、CPU使用率が70%を超える時間帯が連続して発生し、ピーク時には90%を超えることが判明した。また、ディスクI/Oの応答時間が平常時の1.5倍に増加していた。この状況は、サーバの過負荷を示唆しており、放置すればハードウェア障害を引き起こし、サーバ稼働率が目標を下回るリスクがあった。サーバ稼働率は業務継続性に直結する指標であり、顧客満足度にも大きな影響を与えるため、早急な対応が必要であった。

2)MTTR(平均復旧時間:4時間以内)の増加
 過去6ヶ月の障害履歴を分析した結果、復旧作業の平均時間が徐々に増加し、直近では4.2時間を記録していた。復旧手順書の更新が2年以上行われておらず、手順の非効率や対応要員不足が復旧時間を延ばしていた。復旧時間の増加は業務継続性に関わる重要な指標であり、これも顧客満足度低下のリスクを引き起こしていた。

3)サービスデスクの問い合わせ応答時間(目標:15分以内)の遅延
 サービスデスクへの問い合わせ件数が直近3ヶ月で15%増加し、応答時間が15分を超えるケースが全体の10%に達していた。特に新規ユーザーからの「初回ログインができない」といった問い合わせが増加し、対応に平均20分を要していた。問い合わせ件数の増加と応答時間超過は、サービスデスクの処理能力を超える負荷を示しており、特に「初回ログイン」の問題は利用者にとって重要な第一印象となり、不満を蓄積させるリスクがあった。また、FAQの未整備や自動化ツールの導入不足も問題の一因であり、このままでは顧客満足度低下を招く恐れがあった。

2.2.サービスレベルを遵守するための対策

1)サーバ稼働率の改善策
 サーバのリソースを拡張し、CPUとメモリの負荷分散を実施した。さらに、ディスクI/Oの遅延を改善するために、ストレージシステムをアップグレードした。その結果、CPU使用率は平均55%に低下し、ディスクI/Oの応答時間も通常値に戻った。この改善により、サーバ稼働率が99.9%を超える安定運用が可能となり、業務継続性と顧客満足度が向上した。

2)MTTRの短縮策
 復旧手順書の全面改訂を行い、新たな手順を運用チームに共有した。また、復旧手順を訓練することで対応スピードを向上させた。さらに、復旧作業の標準化を進め、手順を自動化ツールと連携させることで、作業の効率化を図った。結果として、障害復旧時間は平均3.5時間に短縮され、サービスレベルの遵守が可能になった。

3)サービスデスク応答の改善策
 暫定処置としてパートタイムスタッフを増員し、増加する問い合わせ件数に対処した。これにより、問い合わせ応答時間は平均13分以内に改善した。また恒久処置として、増員に頼らない対策を実施した。具体的には、問い合わせの種類別にFAQを整備し、自己解決を促進した。さらに、AIを活用した自動応答システムの導入を進め、特に「初回ログイン」に関する問題に関しては、自動化ツールを使用してユーザーに案内を提供することで、応答時間の短縮を図った。この結果、問い合わせ応答時間は平均12分以内に改善され、ユーザー満足度が向上した。

 これらの対策を実施することで、サービスレベルを遵守するための兆候管理が強化され、顧客満足度と信頼性を維持することができた。増員が難しい中でも、リソースの最適化や自動化ツールの導入を通じて、効率的に問題解決を図ったことが、サービスの安定運用に貢献した。

(1600文字)

設問ウ

3.兆候の管理を効果的に行うための工夫と継続的改善

3.1.兆候の管理を効果的に行うための工夫

 効果的な兆候管理のため、「パフォーマンスや利用状況を多面的に監視し、異常兆候を迅速に捉える」以下の工夫を行った。

1)複数の情報源の統合
 システム監視ツールとサービスデスクシステムを統合し、異常兆候をリアルタイムで把握する仕組みを整備した。例えば、サーバのCPU使用率が80%を超えた際、同時にサービスデスクに「システム遅延」の問い合わせが集中する兆候を検知した。この統合により、異常を迅速に把握し、障害発生率を10%低減、サービスデスクへの対応時間も平均15分から5分に短縮した。

2)パフォーマンスのトレンド分析
 過去1年間のパフォーマンスデータを基に、リソース使用のピークタイムを予測した。例えば、月末の財務処理時にサーバ負荷が集中する傾向を把握し、事前にリソースのスケールアップを行った。これにより、サーバダウンタイムを0%に抑え、稼働率99.9%を維持した。結果、ユーザーからのパフォーマンスに関する苦情は年間で30%減少した。

3)兆候の可視化
 リアルタイムダッシュボードを導入し、システムの異常兆候を可視化した。これにより、ディスクI/Oの遅延やメモリ使用率の急上昇などを即座に確認でき、対応時間を30%短縮した。

3.2.兆候管理の継続的改善

 兆候管理の精度向上のための継続的改善活動として、以下の管理体制強化策を実施した。

1)フィードバックループの確立
 障害対応後に改善策をレビューし、見逃された兆候を特定した。このフィードバックループにより、システムの障害率が20%減少し、SLA達成率が95%から98%に向上した。

2)部門間の連携強化
 開発部門と運用部門の連携を強化し、兆候の発生源を早期に特定した。例えば、アプリケーションのメモリリークが原因でサーバの負荷が高くなる兆候を発見し、共同で修正を行った。この協力により、システムパフォーマンスが向上し、障害によるダウンタイムが50%削減された。

3)ツールの更新と自動化
 監視ツールの自動化を進め、アラート設定を最適化した。システム監視ツールがリソース不足を感知し、事前に設定したスクリプトでリソースの追加を行う仕組みを導入した。これにより、対応時間を30分から5分に短縮し、人的介入を削減した。

3.3.総括
 継続的な改善により、システム運用効率が向上し、サーバ稼働率が99.9%に達した。サービスデスクへの問い合わせ件数が減少し、顧客満足度も向上した。システム負荷の低下により、障害発生率が減少し、顧客満足度向上にも寄与した。今後も予兆監視の精度を高め、サービス品質の向上を目指す。

(1179文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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