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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問3 ユーザとの接点からの気付きを改善につなげる活動について
日頃からITサービスを実際に利用する人(以下、ユーザという)との接点、例えば、サービスデスクやユーザポータル(ITサービスに関する情報の提供・交換のためのWebサイト)には、ユーザからの様々な声が集まる。このような声からITサービスの問題に気付き、これを改善につなげることは、ITサービスの提供を依頼する人(以下、顧客という)にとってもメリットが大きい。
ITサービスマネージャは、顧客と合意して次のような活動に取り組む必要がある。
(1)問題の気付き
ユーザとの接点に集まる声を調査して、ITサービスの問題に気付く。例えば、操作に関する同様の問合せが多いこと、サービスの状況に関する問合せが増えたことから、それぞれ、操作性、情報提供の問題に気付く。
(2)改善策の立案
気付いた問題について、顧客の視点から、業務へのインパクト、問題の継続性、緊急性などを評価して、改善の優先度を検討する。優先度が高い問題に対して、顧客の業務への効果やコストなどを勘案して、改善策を立案する。
(3)改善策の実施や効果の検証に向けての準備
改善策の確実な実施や効果の検証に向けて、役割分担などに留意し、顧客や開発部門などの関係者と連携して、ユーザへの改善内容の説明、効果を検証する手順の具体化などを行う。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、ユーザとの接点に集まる声を調査することで気付き、改善につなげた問題について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた問題の改善の優先度について、評価項目として何を設定し、どのような検討を行ったか。また、どのような改善策を立案し、顧客の業務にどのような効果があると考えたか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた改善策の確実な実施や効果の検証に向けて、関係者と連携して行ったことについて、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要とその問題点
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、製造業向けのクラウド型生産管理システムの運用管理である。このシステムは、製造工程の効率化や在庫管理の精度向上を目的として導入され、多くの中小企業が利用していた。主な機能は、生産計画の立案、進捗管理、在庫状況のリアルタイム表示であり、ユーザポータルやサービスデスクを通じてサポートを提供していた。
1.2.ITサービスの問題点
1)ユーザの声
ユーザポータルには、問い合わせフォームが設置されており、月次レポートとして集計していた。また、サービスデスクでは問い合わせ内容をカテゴリ別に記録し、定期的に分析していた。
ユーザポータルへの問い合わせは、「在庫情報が更新されない」「操作が直感的でない」といった問い合わせが、全体の25%を占めることが、月次レポートから明らかになった。また、サービスデスクでは「在庫データがずれる」といった問い合わせ多く、1か月間の問い合わせの約30%を占めた。これらの声は、製造現場での作業効率に直接影響を与える重要な問題であった。
2)ユーザの声から判明した問題
フィードバック分析の結果、次の2つの問題が明確になった。
・在庫情報の更新遅延
システムの設計上、更新頻度が低く、リアルタイム性が不足していた。特に、データ同期のバッチ処理が原因で、在庫データが最大30分遅れるケースがあった。
・操作性の低下
UIデザインが複雑で、特にITに詳しくないユーザには、直感的に理解しにくかった。具体的には、重要な機能へのアクセスが多層のメニューに隠れており、操作に時間がかかるといった声が挙がっていた。
これらの問題は、システムの利用価値を低下させ、顧客の業務効率に悪影響を与えていることが分かった。
(795文字)
設問イ
2.改善策の立案
2.1.改善の優先度検討
1)顧客業務へのインパクト
・在庫情報の更新遅延
顧客の重要な業務プロセスに直接影響を与え、過剰在庫や欠品のリスクが増加すると考えた。製造現場では、在庫状況に基づいた生産計画をたてるため、在庫データの遅延は直接的な業務停滞を引き起こす。リアルタイムでの在庫情報更新は、正確な在庫管理を可能にし、製造効率の向上、納期の短縮、最終的には顧客満足度の向上につながる。そのため、この問題解決は最優先事項と考えた。
・操作性の低下
作業効率低下と作業ミスの要因となっている。ユーザーにとっては、直感的に操作できないと、作業に時間がかかり、トレーニングやサポートコストが増大する可能性がある。操作性の改善は、業務効率化とコスト削減の観点から重要であり、使いやすさの向上は競争優位性を確保するために必要不可欠と考えた。
2)問題の継続性
在庫情報の更新遅延と操作性の低下は、継続的に発生しており、長期間放置されると業務プロセス全体に悪影響を与え、最終的には顧客の信頼を損ねる。リアルタイムな在庫情報更新は製造現場の日常業務に不可欠であり、その遅延が引き起こす影響を最小限に抑えるために、迅速な対策が必要と考えた。
操作性についても、現場での作業効率・モチベーション維持・作業品質に影響を与え続けるため、改善を長期間後回しにはできず、早急な改善策が必要と考えた。
3)緊急性
前述の通り、在庫情報の更新遅延は製造現場の影響に直結している。この問題が続けば、過剰在庫・欠品の多発、生産スケジュール変更や納期遅延など、経営指標への悪影響が拡大するため、緊急性は非常に高いと判断する。
一方で、操作性の改善は緊急性はやや低いが、中長期的な観点から見れば、操作ミスの削減やトレーニングコストの軽減のために早期に対応すべきである。
2.2.改善策と予測効果
改善の緊急度と期待効果を総合的に判断し、以下の順に対策を実行することにした。
1)在庫情報更新のリアルタイム化
在庫情報更新の遅延を解消するため、システムのバックエンド処理を最適化し、リアルタイムで在庫データを更新できる仕組みを構築する。具体的には、データベースのクエリ速度の向上やキャッシュ処理の見直しを行い、バッチ処理の頻度を増やすことで、最大30分の遅延を1分以内に縮小することを目指す。これは、製造現場の在庫管理が効率化し、過剰在庫や欠品の防止が狙いである。さらに、リアルタイムでの在庫状況反映により、製造現場の柔軟な対応が可能となり、生産性向の効果が期待できる。
2)操作性の向上
直感的に操作できるよう、UIを再設計する。特に、複雑なメニュー構造をシンプルに再構築し、重要な操作に簡単にアクセスできるようにすることで、ITに詳しくないユーザーでもスムーズに操作できるようにする。これにより、操作にかかる時間が短縮され、作業ミスが減少し、トレーニングコストやサポート依頼の減少が見込まれる。また、ユーザーからの問い合わせやクレームの削減による、顧客満足度の向上を図る。
3)サポート機能の強化
ユーザポータルにFAQやトラブル対応マニュアルを追加し、ユーザーが自己解決できるようにする。また、オンラインサポートの強化や、サポートチケットシステムの改善により、問題発生時のエスカレーションをスムーズに行い、迅速な問題解決を図る。この改善策により、サポート担当者の負担軽減と、サポートコストの削減を見込む。ユーザーが迅速に問題を解決できる環境を提供することで、顧客の信頼を深め、利用者満足度を高める効果も狙う。
(1544文字)
設問ウ
3.改善策の確実な実施と効果検証
3.1.関係者との連携
改善策の実施においては、以下のように、顧客・ユーザ・開発部門と連携した。
1)顧客への事前説明
改善策の導入前に、顧客に改善内容の詳細を説明した。特に、在庫更新のリアルタイム化やUI改善による業務効率化を強調し、顧客の理解に務めた。
2)開発部門との連携
開発部門との連携では、システム改修内容を早期に共有し、実装方法を段階的に確認した。顧客が期待するパフォーマンスが出ているかの確認と、要求を満たさない場合の迅速な対応を行うためである。
3)ユーザ向け説明会
ユーザ向けに計3回の説明会を実施し、改善後の操作性向上をアピールした。ユーザの心理的障壁をなくす狙いがあった。
4)効果検証手順の設計
効果検証手順は、以下の関係者と共同で設計した。
・顧客代表者
顧客業務に即した具体的な評価指標として、「在庫更新のスピード」「顧客サポートにかかる時間」「FAQの参照件数」を設定した。
・ユーザ代表者
現場で使用する視点から、業務フローの効率性やUIの使いやすさを基準に評価基準を作成した。
・開発部門リーダー
システムのパフォーマンスに関する検証項目を設計し、ログデータの解析を通じて定量的な改善効果を評価することにした。具体的には、「在庫情報の更新スピード」「操作時間」「サポート対応時間」を検証項目とした。
3.2.改善策の実施結果と効果検証
改善策実施後、以下の定量的および定性的な結果を得た。
1)在庫情報のリアルタイム化
データ処理システムを最適化し、在庫情報の更新速度が最大30分から1分未満に短縮した。これにより、顧客からの問い合わせ件数が月平均で約80%減少した。また、在庫の誤差が10%減少し、業務効率が大幅に向上した。また、サポート対応時間が50%短縮し、サポート業務の負担が軽減とコスト削減の効果を確認した。
2)UIの改善
UIの再設計により、操作時間は従来の30分から21分に短縮され、操作ミスが40%減少した。また、顧客アンケートでは、操作性に対して「非常に満足」と回答した割合が70%に達した。「UIが使いやすくなった」などのフィードバックが寄せられ、ユーザ体験の向上を確認した。
3)サポート機能の強化
時間経過とともに、FAQの利用頻度が上昇していることから、ユーザの自己解決によるサポート業務の負担軽減につながったことを確認した。
3.3.今後の取り組み
改善策の実施により、顧客の業務効率が向上し、信頼も強化された。次のステップとして、データ解析機能を強化し、業務の更なる自動化を図るとともに、効果検証プロセスを関係者と共有し、改善の継続的な実施を推進していく。
(1200文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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