【SM】平成24年度 午後Ⅱ 問1 – 情報処理技術者試験(PM/SM)に連続で一発合格したおじさんによる 過去問論文事例

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問1 重大なインシデントに対するサービス回復時の対応について
 業務に与える影響が極めて大きく、緊急にサービスを回復させることが求められる重大なインシデントとして、基幹業務システムの障害、全社認証基盤の停止、メールシステムの停止などがある。
 このような重大なインシデントに対し、ITサービスマネージャは、事前に用意した作業手順に従ってサービスを回復させる。しかし、回復作業中にトラブルが発生し、作業手順どおりには対応できない場合がある。
 このような場合には、ITサービスマネージャは、関係者と協議し、対策を立案しなければならない。対策の立案に当たっては、安全で迅速であることに留意し、次のような観点から検討を行う。
・サービスを全面的に再開する。
・サービスを部分的に再開する。
・代替サービスを提供する。
 また、対策の実施に当たって、ITサービスマネージャには、進捗状況を確認したり、顧客やサービス利用者に提供する情報を一元管理したりするなど、作業を統括することが求められる。

あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と、重大なインシデントの概要について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた重大なインシデントの回復作業中に、どのようなトラブルが発生したか。また、トラブル発生時に、関係者とどのような観点から検討を行い、どのような対策を立案したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた対策の実施時に、作業を統括するために行ったことについて、その目的とともに、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.ITサービスと重大インシデントの概要

1.1.ITサービス概要

 私が担当したITサービスは、企業向け人事管理システムの運用管理である。このシステムは、従業員の勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、評価管理を支援し、特に給与計算機能は、迅速かつ正確な処理が求められ、企業全体の業務効率化に貢献している。本システムは仮想化されたサーバ環境で運用され、外部委託業者によるバックアップ管理や監視業務が実施されている。

重大インシデントの判断基準は、業務への影響度とサービス停止時間に基づき、下記と設定されている。
・基幹業務が中断され、顧客や従業員に重大な影響を与える
・サービス停止が4時間以上続き、業務運営に支障をきたす
・データ漏洩や法令違反のリスクが顕在化する
これらの基準は、過去の障害事例を基に設定された。例えば、過去に勤怠管理システムの停止が給与計算業務全体に波及し、業務遅延や顧客クレームに繋がった事例が考慮された。

1.2.重大インシデントの概要

 ある月の給与計算期間中、仮想化基盤上の主要サーバで障害が発生した。ストレージシステムの故障により、関連する仮想マシンが停止した。原因は、定期メンテナンス中に過負荷状態となったことにある。監視ログにはアクセス遅延の兆候が記録されていたが、初期対応が遅れたため、障害が発生した。この結果、給与計算システムと一部の勤怠管理機能が停止し、従業員の給与支払いに遅延リスクが生じた。
 給与支払いの遅延は従業員の信頼を損ね、企業のイメージにも影響を及ぼすため、早期回復が最優先とされた。また、給与計算が遅れることで、法定納期限を守れなくなる可能性もあり、法的リスクが生じることを避けるための対応が求められた。

(752文字)

設問イ

2.回復作業および回復作業中のトラブル対応

2.1.回復作業と回復作業中のトラブル

1)回復作業の概要
 重大インシデントが発生した場合の回復作業は、通常以下の手続きで実施する。
①インシデントの原因と、影響を受けたシステムの特定
②影響範囲を確認し、業務影響を最小限に抑えるための優先順位を設定
③最も重要な業務を最優先で復旧させるための手順を立案し、リソースの投入を決定
④システム担当、運用担当(必要に応じて外部委託業者)が連携した回復作業
⑤復旧の進捗状況の定期的な確認と対処

2)回復作業中に発生したトラブル
 重大インシデント発生時、ストレージシステムの誤動作によるデータアクセス障害が原因で、業務に直結する給与計算の処理が影響を受けた。回復作業の一環として、まずストレージシステムのリブートを試みたが、予想以上に時間がかかり、システム全体の復旧が遅延した。その結果、給与計算に必要なデータがロックされたままの状態が続き、復旧作業が長時間停滞した。この状況は業務の進行を著しく遅らせるリスクを孕んでおり、法的な影響も考慮し、早急な代替手段を講じる必要が生じた。加えて、人的リソースが限られており、全機能を一度に復旧させることが不可能であったため、リソースの優先的な配置が求められた。

2.2.関係者との検討とトラブル対応

1)関係者との検討事項
 回復作業を進めるにあたり、最も重要な要素は「業務への影響を最小限に抑えること」と「法的リスクを回避すること」であった。特に給与計算業務は法的な義務を果たすために不可欠であり、この遅延が発生すれば企業の信頼性や信用に深刻な影響を及ぼす恐れがあった。そのため、以下の3つの選択肢を検討した。
・サービスの全面的再開
 サービスを全面的に再開するためには、システム全体の完全復旧が不可欠であり、時間的な制約やリソース不足を考慮した場合、全面的な再開は現実的ではないと判断した。復旧には長時間を要することが予測され、全面的再開には多大なコストと時間が必要となるため、選択肢から除外された。
・サービスの部分的再開
 最も現実的な選択肢として、システムの一部機能を優先的に復旧させ、給与計算に必要なデータだけを先に復旧させる案が選ばれた。この方法により、最も重要な業務である給与計算を最優先に進め、その後に他の業務を復旧させることが可能となる。このアプローチは、業務の継続性を確保しつつ、影響を最小限に抑えることができるため、最も効果的と判断された。
・代替サービス提供
 一時的に外部のサービスプロバイダに給与計算業務を委託する案も検討された。具体的には、クラウドベースの給与計算サービスや外部アウトソーシング業者の活用を検討した。しかし、外部委託には法的リスクやコストの増加が伴い、短期的な解決策としては適切ではないと判断された。

2)検討結果と立案した対策
 経営陣およびIT部門との協議の結果、最も効果的で現実的な選択肢は「サービスの部分的再開」に決定した。給与計算に必要なデータのみを優先的に復旧し、他の業務は後から順次復旧させる方針を取った。この決定により、最優先である給与計算業務の遅延を回避させ、その後に影響を受けた他の業務の復旧を順次進めることにした。
 具体的には、下記のような対応によって、給与計算業務継続を図ることにした。
①IT部門と密に連携し、給与計算の進行に必要な最小限のデータを取り出す。
②従来の業務プロセスを一部変更し、給与計算業務に必要なデータのみを処理する。

(1512文字)

設問ウ

3.対策を踏まえた回復作業の統括

3.1.回復作業統括の目的
 回復作業統括の目的は、業務影響を最小限に抑え、迅速かつ効率的にシステムを復旧することである。このため、以下の3つの要素が重要である。
1)迅速な意思決定と調整
 迅速な意思決定と関係者との調整による、業務影響を最小化する
2)進捗の管理とリソースの最適化
 複数部門の作業進捗を正確に把握し、限られた時間とリソースので最大限の効果を上げる
3)関係者との連携強化
 多岐にわたる関係者の円滑な情報共有と連携強化による、迅速な対応を実現する

3.2.回復作業統括の内容と実施状況

1)回復作業統括の内容と実施状況
 回復作業統括においては、主に以下の活動を実施した。
・進捗状況確認
 進捗状況を定期的に確認し、各部門の作業状況を把握した。特に、給与計算システムの復旧を最優先事項とし、その進捗を逐次確認。リソースが不足している場合は、追加リソースの投入や作業優先度の変更を実施した。進捗の遅延を早期に発見し、即座に対応策を講じた。進捗管理には、ガントチャートを用いてタスクの進捗と依存関係を可視化し、効率的に作業を進めた。
・情報の一元管理
 回復作業に関する情報を一元化し、全関係者が最新情報を共有できるようにした。進捗確認や障害対応状況をリアルタイムで把握できるよう、クラウド型ドキュメント共有システムを活用した。各部門間の情報伝達の遅延防止と、関係者全員が常に最新の状況を把握する効果を狙った。さらに、専用ダッシュボードを導入し、状況報告の手間を軽減し、迅速な調整が可能となった。
・リソースの最適化
 回復作業には限られた時間と人員で対応する必要があったため、増員が見込めない状況でのリソースの最適化が重要であった。リソースの不足を補うために、既存メンバーのスキルや知識を活かしたタスク割り振りを行い、業務優先順位を基に、各メンバーの負担を分担した。また、重複作業を排除することで、作業時間の短縮と負荷軽減を図り、限られたリソースの中でも効率的に作業を進めることができ、復旧作業のスピードと精度を高めた。

2)対策を踏まえた回復作業の結果
 回復作業は計画通りに進行し、最優先で給与計算システムの復旧を実施。ストレージシステムの復旧に時間を要したが、給与データは早期に復旧。進捗確認をこまめに行い、予定より早く完了した。テスト運用で問題もなく、良好な結果となった。

3.3.今後の課題と展望
 今後の課題として、回復作業のさらなる迅速化と、予期しない障害に対する事前対応の強化が必要と考える。回復作業における意思決定の迅速化と、関係者間での連携強化をさらに強化することで、次回の障害対応が一層効果的となることが期待できる。

(1180文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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