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ITサービスマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。


問題文および設問
問題の原本はIPAにてご確認ください。
問題文
問1 ITサービスの構成品目に関する情報の管理について
ITサービスの構成品目としては、ハードウェア、ソフトウェア、データセンタなどの設備、更には顧客情報、運用体制図、運用手順書、SLAなどがある。これらの構成品目に関する情報を一元管理する構成管理データベース(CMDB)を活用することは、サービスデスクでの顧客対応、障害回復、設備の増設・変更など、ITサービスにおける様々なプロセスを効率よく的確に行う上で、極めて重要である。
しかし、必要な情報がCMDBに登録されていない、情報が更新されていない、使い勝手が悪い、などが原因で、連絡先が分からなくてサービス停止が長引く、ライセンスの有効期限切れでサービスが突然停止する、などの問題が発生することもある。
ITサービスマネージャには、例えば、次のような取組みによって、CMDBの内容、運用方法及び利便性を改善することが求められる。
・利用場面に応じて、必要となる構成品目とそれらの関係をCMDBに追加する。例えば、①サービスデスクで顧客からの問合せに答えるには、顧客、提供サービス、IT機器及びそれらの関係、②障害などに対処するには、ソフトウェアのバージョン、IT機器の型番、③電力設備の工事の準備には、設備、収容されるIT機器及びそれらの関係をCMDBに追加する。
・CMDBの運用ルールを徹底する。例えば、①PCへのCMDBの複製を禁じる、②責任者を定めて運用ルールの順守状況をチェックする。
・利用目的に応じて、ツールなどの導入を図る。例えば、①構成品目の情報を自動収集するツールを導入する、②保守契約の満了やディジタル証明書の有効期限を自動通知する仕組みを導入する。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。
設問ア
あなたが携わったITサービスの概要と、CMDBの利用において発生した問題及びその原因について、800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた問題に対してどのような改善を行ったか。工夫した点を中心に、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた改善の具体的な効果及びその評価と、CMDBの更なる活用に向けた課題について、600字以上1,200字以内で述べよ。
解答例
設問ア
1.ITサービス概要とCMDBの利用上の問題
1.1.ITサービス概要
私が担当したITサービスは、大手小売チェーンの店舗システム運用管理である。このサービスでは、POS・在庫管理・勤怠管理など、複数の重要システムを24時間365日で運用している。各店舗には、POSレジ・バックヤードPC・無線LANアクセスポイントなど、合計約40台のIT機器を設置しており、全社で約20,000台の機器を管理している。
したがって、迅速な障害対応や計画的な機器更新を実現するためには、機器情報、ソフトウェアライセンス、ネットワーク構成、保守契約情報、連絡先など、多様な情報をCMDBで一元管理する必要があった。
1.2.CMDB利用上の問題
このような大規模なIT環境において、以下の問題が発生した。
1)情報の更新漏れ
店舗システムの大規模障害時、CMDB上の店舗担当者の連絡先情報が古く、緊急連絡が取れず、システム復旧に8時間を要した。この背景には、店舗担当者の異動情報がCMDBに反映されていなかったこと、また情報更新の責任者が明確でなかったことがある。
2)情報の登録漏れ
特定店舗のPOSシステムが突然停止する事態が発生した。原因は、ウイルス対策ソフトのライセンス期限切れであったが、CMDBでライセンス管理ができていなかったため、更新時期を事前に把握できなかった。この背景には、ライセンス情報の登録ルールが不明確で、担当者による情報更新が属人的に行われていたことがある。
3)UIの操作性
CMDBの使い勝手が悪く、必要な情報を見つけ出すまでに時間がかかるため、各担当者が独自のスプレッドシートで情報を管理するようになり、情報の分散化と不整合が生じていた。これは、CMDBの検索機能や画面構成が現場のニーズに合っていなかったことが原因である。
(796文字)
設問イ
2.CMDBと構成管理プロセスの改善
2.1.根本原因分析
なぜなぜ分析によって、問題の根本原因分析を行った。
1)異動情報の更新漏れの原因
店舗異動の際に更新の必要性を担当者自身が認識しづらかった。具体的には、異動に関する正式な報告フローが確立されておらず、異動情報の把握が、担当者任せになっていた。
2)情報の登録漏れの原因
手作業でライセンス情報を登録・更新しており、人的ミスが発生しやすい状態だった。また、障害時や緊急時しか構成品目が利用されず、ライセンス管理業務の優先度が低くなっていた。
3)UIが改善されない原因
運用担当者が他の業務と兼務するケースが多く、システム改善の優先順位が低くなっていた。また、改善の検討は、システム障害や業務上の重大な問題の発生時に、運用フローに関する見直しが議題となる程度で、UIの改善にまで議論が及ばなかった。
2.2.改善策の立案と実行
根本原因分析の結果を踏まえ、下記の改善を行った。
1)CMDBの機能改善
・情報自動更新機能の導入
店舗異動情報やライセンス期限など、頻繁に変動する情報の自動更新機能を追加した。これにより、人為的な手作業による情報更新の負担を軽減し、リアルタイムでの情報管理を可能にした。
・フィルタリングと検索機能の強化
検索機能を改善し、担当者名や機器の型番、ライセンス情報などを簡単に絞り込めるようにした。これにより、必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整備した。
・通知機能の自動化
ライセンスの期限切れや保守契約の満了、システム異常の自動通知機能を導入した。これにより、障害の未然防止や事前の準備が行いやすくした。
・UIの使いやすさ向上
より直感的に操作できるよう、UIを改善した。具体的には、メニュー構成の簡素化や、情報の可視性を高めるようにデザインを見直した。
上記の改善には、コストと開発期間がかかるため、暫定処置として、「異動情報のメール通知」「ライセンス期限や保守期限が近づいた際のメール通知」をRPAによって自動化し、CMDBへの登録・更新作業はチーム単位で手順を確認しながら実施することにした。
2)構成管理プロセスの改善
・情報更新の責任者を明確化
各チーム内での担当者を固定化したうえで、変更時には必ず担当者を経由して情報を登録する運用フローとした。担当者に負担が集中しないようにする工夫として、2名体制(主担当、副担当)とし、主担当が多忙または不在でも、副担当での対応を可能にした。
・チェックリスト
構成品目の登録・更新時には、基本情報(例:機器名、型番)、履歴として登録する情報(例:機器交換日、バージョンアップ日)、確認事項(例:現物と一致しているか、障害時の連絡体制に変更がないか)を記載したチェックリストを利用することで、属人性を排除した。また、半期ごとにチェックリストのレビューを行い、チェックリスト肥大化による現場の負担が出ないようにした。
・棚卸
構成品目の棚卸を年1回実施し、CMDBへの登録・更新漏れがないことを確認するようにした。構成情報の自動収集ツールを導入することで、全数検査を実施できるようにした。ツール導入までの間は、重要度の高い機器に限定したサンプリング確認とすることで、現場の負担軽減を図った。
・定期監査
四半期に一度の定期監査を実施することにした。監査では、チェックリストなどのエビデンスを確認することで、フローに従った処理を実施しているかの確認を行う。違反があれば、現場への指導とともに、必要があればルール改訂を行うようにした。
(1555文字)
設問ウ
3.改善策の評価と今後の課題
3.1.改善策による実施結果とその評価
CMDBの改善策を実施した結果、情報管理の信頼性が向上し、運用効率が大きく改善された。
・定量的な観点
障害発生件数が約30%減少し、復旧時間も従来の半分に短縮されている。具体的には、異動情報の自動更新機能や通知機能の導入が、障害時の迅速な対応を可能にし、情報の一貫性を保つ効果を発揮した。これにより、運用担当者の負担が軽減され、より集中して業務に取り組むことができるようになった。
・定性的な観点
CMDBの使い勝手が向上し、情報検索やアクセスが迅速かつ容易になったことが評価されている。運用担当者からは、「以前は情報収集に時間がかかりすぎていたが、今は必要な情報にすぐアクセスできる」との声が寄せられている。これにより、業務の生産性が向上し、運用の負担が軽減された。また、異動情報の自動更新機能や通知機能の導入により、障害時の迅速な対応が可能になったことで、事故率が減少した。過去には、手動での情報更新が多く、異動後の情報遅れが障害発生の原因となるケースが多かったが、今回の自動化によりそのリスクが大きく軽減した。
3.2.CMDBの更なる活用に向けた課題
1)異動情報の即時反映
情報自動更新機能では、異動に関連する構造化データ(異動元・異動先、異動日、電話番号、メールアドレス、など)に対応しているが、非構造化データ(例:異動先での具体的な役割や責任範囲、チームメンバーとの調整状況など)は、完全自動化が難しい。今後はRPAやAIなどを活用して、部分的な自動化を試みる。
2)手作業によるライセンス情報登録の精度向上
予算の都合上、一部のPOSシステムは旧バージョンが使用されている。これらは、自動化の対象外となっており、手作業での登録・更新が依然として必要である。今後は、スプレッドシートを用いた簡易チェックなどで、人的ミスのリスクを低減する。
3)UIの継続的改善
今回のUI改善は単発での改善となったが、本来は長期的な取り組みや継続的な改善が必要である。今後は運用フローに基づいたUIのレビューや、ユーザビリティテストによって、現場のニーズを定期的に反映する活動を行う。例えば、ユーザーからのフィードバックを反映した新機能追加や、使いやすさ向上のためのワークショップを検討していく。また、UI改善に関するマネジメント層からの定期的なフォローアップを行い、運用品質のさらなる向上に繋げる。
4)管理者やユーザーの意識改革
CMDBの活用を妨げる要因の一つとして、関係者の認識や習慣があり、この改善には教育・啓発活動が必要と考える。今後、長期間の継続的な教育・啓発活動によって、組織文化への定着を図っていく。
(1186文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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