- 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
- 小論文のネタを探している
- 合格者のアドバイスを受けたい
プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。
問題文および設問
解答例
設問ア
1.プロジェクトチームの特性と外部環境の変化による影響
1.1.プロジェクトの概要と役割
大手保険会社における基幹系業務システム(契約管理・支払査定)のクラウド移行プロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャとして全体統括を担当した。
プロジェクト規模は総要員70名(社内20名、ベンダー50名)、開発期間36か月、予算規模20億円であった。
チーム構成は、PMO、要件定義、アプリケーション開発、インフラ構築、データ移行の5チームで、各チームにサブリーダーを配置し、マトリックス型の組織体制を採用していた。
1.2.外部環境の変化と阻害要因
プロジェクト開始から12か月が経過した時点で、経営会議において競合他社の動向を踏まえた新商品の早期リリース方針が決定され、それに伴うシステム対応が追加された。
この変更により、以下の3点が重大な活動阻害要因になると判断した。
①新商品対応に伴う追加開発により、当初のクリティカルパスが変更を余儀なくされ、全体スケジュールへの影響が懸念された。
PERTによる分析の結果、このままでは完了期限が4か月延長される見込みとなった。
②追加された新商品対応は、現行システムでは実現できない新しい計算ロジックを必要とし、要件定義チームとアプリケーション開発チーム間での技術的な知識ギャップが顕在化するリスクが高まった。
③予算の追加が限定的(全体の10%増)であったため、リソースの最適配分が必要となり、チーム間での優先順位付けや作業配分の調整が複雑化すると予測された。
(659文字)
設問イ
2.プロジェクトチームの状態悪化と対応策
2.1.チームの状態悪化
各チームメンバーへの個別ヒアリングとアンケート調査を実施したところ、前述の外部環境の変化により、プロジェクト内で下記の三つの問題が連鎖的に発生していることが判明した。
1)要件定義チームとアプリケーション開発チーム間での対立
要件定義チームは新商品の早期実現を主張する一方、アプリケーション開発チームは十分なテスト期間の確保を求めた。
結果、チーム間のコミュニケーションが減少し、週次報告会では相互に批判的な発言が増加していた。
2)インフラ構築チームの士気低下
新商品対応の追加により、インフラ構築チームの作業優先順位が後方に移されたことで、チームメンバーの約70%が「自分たちの貢献価値が低下した」と感じていることが判明した。
2.2.状況に応じたリーダーシップの選択と行動
状況に応じたリーダーシップの選択にあたり、チームの成熟度と課題の性質に基づいて使い分けを行った。
1)要件定義チームとアプリケーション開発チーム間の対立には、下記のような指示的リーダーシップを選択した。
①CCPMを導入し、新商品対応を含めたプロジェクト全体の制約条件を特定。
②その上で、WBSを再構築し、両チームが合意できる作業分解レベルまで詳細化した。
③これにより、各機能の開発優先順位と品質基準を定量的に設定。
④週次での進捗会議では、EVMによるパフォーマンス測定結果を共有し、客観的な議論の土台を構築した。
指示的リーダーシップが有効と判断したのは、下記のような理由からである。
①両チームとも高い専門性を持つが、その専門性の違いがコミュニケーション不全を引き起こしていた。CCPMという共通の物差しを導入することで、客観的な判断基準を示すことで、感情的な対立を回避し、建設的な議論への転換を図ることができると考えた。
②新商品対応という時間的制約がある中で、両チームの合意形成を迅速に進める必要があった。指示的リーダーシップにより、明確な方向性と判断基準を示すことで、意思決定プロセスを加速できると判断した。
③両チームのモチベーションは依然として高く、問題解決への意欲も持ち合わせていた。そのため、過度に強制的なアプローチではなく、定量的なデータに基づく「説得」により、自発的な協力を引き出すことが有効と考えた。
2)インフラ構築チームには、支援的リーダーシップを選択した。
具体的には、PPMを活用し、インフラ構築作業の戦略的重要性を可視化した。特に、新商品対応におけるスケーラビリティ確保の観点から、インフラ構築チームの役割が極めて重要であることを示した。また、チームメンバーを新商品検討会議に参加させ、インフラ視点からの改善提案を促した。
支援的リーダーシップを選択した狙いは、以下の3点である。
①インフラ構築チームは技術的な課題解決能力が高く、自律的な業務遂行が可能なレベルにあった。そのため、具体的な指示を出すのではなく、チームの自主性を活かした提案を促すことが、より効果的な解決策の創出につながると判断した。
②新商品対応による優先順位の変更で、チームの存在価値への不安が生じていた。PPMを活用して戦略的重要性を示すことで、チームの貢献価値を再認識させ、モチベーションの向上を図ることができると考えた。
③インフラ構築チームには、クラウド環境に関する豊富な知見があった。新商品検討会議への参加を促すことで、その知見を活かした革新的な提案を引き出し、プロジェクト全体への貢献を実感させることができると考えた。
(1521文字)
設問ウ
3.プロジェクトチームの状態改善と評価
3.1.改善後の状態
各チームに対する適切なリーダーシップの発揮により、プロジェクトは以下の状態まで改善した。
1)要件定義チームとアプリケーション開発チーム
CCPMによる制約条件の可視化により、双方が納得できる開発プロセスが確立された。
週次進捗会議での建設的な議論が増加し、問題提起から解決策の合意まで平均所要時間が3日から1日に短縮された。
2)インフラ構築チーム
新商品のインフラ要件定義に積極的に参画し、クラウドの特性を活かした柔軟なリソース配分方式を提案。
これにより、初期コストを30%削減しながら、将来の拡張性も確保することができた。
3.2.改善に対する評価
外部環境の変化への対応として、新商品対応を含めた開発計画の最適化に成功した。
具体的には、CCPMとEVMの組み合わせにより、重要機能の品質を維持しながら、全体の遅延を当初予測の4か月から1.5か月に抑制することができた。
予算面では、インフラ構築チームの提案による初期コスト削減と、データ移行の効率化により、追加予算を当初計画の10%増に収めることができた。
さらに、この経験を通じてチーム間の協力体制が強化され、その後のシステム保守・運用フェーズにおいても、チームの枠を超えた課題解決が日常的に行われるようになった。
プロジェクト完了時の顧客満足度調査では、「期待を上回る」との評価を獲得し、次期開発案件の受注にも成功した。
この成功の最大の要因は、各チームの状況に応じて適切なリーダーシップスタイルを選択し、一貫性を持って実行できたことにあると評価している。特に、
定量的なプロジェクト管理手法を基盤としながら、人的側面にも十分な配慮を行ったことが、チーム全体の一体感醸成につながったと考えている。
(774文字)
まとめ
自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。
参考図書
自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。
上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。
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