プロマネ午後Ⅱ論文の書き方がわからない人へ|一発で合格した実務経験者のサンプル解答【平成26年度:問2】

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問2 システム開発プロジェクトにおける要員のマネジメントについて

 プロジェクトマネージャには、プロジェクト目標の達成に向けて、プロジェクトの要員に期待した能力が十分に発揮されるように、プロジェクトをマネジメントすることが求められる。
 プロジェクト目標の達成は、要員に期待した能力が十分に発揮されるかどうかに依存することが少なくない。プロジェクト組織体制の中で、要員に期待した能力が十分に発揮されない事態になると、担当させた作業が目標の期間で完了できなかったり、目標とする品質を満足できなかったりするなど、プロジェクト目標の達成にまで影響が及ぶことになりかねない。
 したがって、プロジェクトの遂行中に、例えば、次のような観点から、要員に期待した能力が十分に発揮されているかどうかを注意深く見守る必要がある。
・担当作業に対する要員の取組状況
・要員間のコミュニケーション
 要員に期待した能力が十分に発揮されていない事態であると認識した場合、対応策を立案し、実施するとともに、根本原因を追究し、このような事態が発生しないように再発防止策を立案し、実施することが重要である。

 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったシステム開発プロジェクトにおけるプロジェクトの特徴、プロジェクト組織体制、要員に期待した能力について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べたプロジェクトの遂行中に、要員に期待した能力が十分に発揮されていないと認識した事態、立案した対応策とその工夫、及び対応策の実施状況について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた事態が発生した根本原因と立案した再発防止策について、再発防止策の実施状況を含めて、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.プロジェクト概要と体制

1.1.プロジェクト概要

 私がPMとして参画したプロジェクトは、大手小売業向け顧客情報分析システム開発である。目的は、AIによる顧客行動分析でマーケティング精度を向上させ、売上拡大を図ることだった。期間12か月、予算1億円で、プロジェクトの特徴は次のようなものだった。
1)技術的特徴
 社内初のAIエンジン導入と既存DWHとの大量データ連携であり、AI技術習得が鍵だった。機械学習ライブラリで購買予測モデルを構築、コストとサポートを期待し選定した。
2)体制的特徴
 自社社員10名と協力会社5名で構成し、AI技術は中堅B氏に習得とコア機能開発を担当させる計画だった。B氏は新技術導入経験と能力を評価しての人選である。
3)業務的特徴
 マーケティング部門の要求が高度かつ変化しやすいため、アジャイル開発を採用した。
 経営資源の制約として納期厳守が絶対で、社内AI専門要員不足からB氏への期待と負荷集中は初期からのリスク認識事項だった。

1.2.プロジェクト組織体制とB氏に期待した能力
 組織体制は、私(PM)の下に開発リーダーA氏を置き、A氏配下にAI技術担当B氏を含む開発チーム5名、インフラ2名、品質管理1名を配置した。報告ラインは担当者からAリーダー経由で私に集約し、B氏のAI技術習得状況は週次定例で報告を受ける計画だった。私とB氏も隔週で1on1ミーティングを設定した。B氏には、重要な下記の役割を期待した。
1)1ヶ月以内のAIエンジン基本操作・主要アルゴリズム習得と、プロトタイプ作成
2)3ヶ月以内の顧客セグメンテーション用AIモデル設計と、コアモジュール高品質開発
3)習得技術の他メンバーへの展開と、チーム技術力向上貢献である
 これらは、B氏の過去実績と学習意欲から達成可能と判断した。

(796文字)

設問イ

2.B氏の能力が発揮されなかった事態と対応

2.1.期待した能力が発揮されていないと認識した事態

 プロジェクト開始2ヶ月後、B氏担当のコアモジュール開発が計画比で2週間遅延した。進捗ツール上の遅延とB氏からの報告遅れで判明した。設計書等のレビューではAIライブラリ誤用が散見され品質に懸念が生じた。具体的には、モデル学習データ前処理ロジック不備で、特定条件下での精度低下の可能性が指摘された。週次会議でのB氏の報告は曖昧で、質問への回答も不明瞭だった。リーダーA氏から、B氏が技術課題を抱え込み周囲に相談せず、チームへの技術共有も滞っていると報告を受けた。
 このことから、B氏の能力が十分に発揮されていない状況と認識した。

2.2.立案した対応策とその工夫

 前述の事態に対して根本的問題の把握が最優先と考え、B氏と非公式な個別面談を設定した。公式な場では本音を話しにくいと考え、心理的安全性の確保が必要と判断したからである。面談では、B氏が心を開きやすく本音を話しやすい雰囲気作りに努めた。面談から、B氏の問題は①新技術の難易度と情報不足、②重圧と期待、③責任感からの孤立、④失敗への恐れ、の複合要因と推察した。これに基づき以下の対応策を立案した。
1)技術支援体制強化
 リーダーA氏によるB氏とのペアプログラミングを実施。特に「指導」でなく「共同技術検証・課題解決セッション」と位置付けし、B氏の自尊心を傷つけないように配慮する工夫をした。これは、B氏に「管理されている」のではなく、あくまで「共に問題解決に取り組むパートナー」としてA氏の役割を明確にすることで、B氏の主体性を引き出す狙いがあった。A氏にはコーチング的アプローチを依頼し、B氏・A氏専用タスクボードで細かな進捗と達成感を共有させた。
2)心理的サポートとコミュニケーション再構築
 私とB氏の1on1を週1回に増やし「何でも話せる場」と伝えた。業務上の指示や確認だけでなく、B氏が抱える不安や懸念を自由に表現できる場を提供することが、信頼関係の再構築と精神的な安定に不可欠と考えた。最初は雑談から入り、リラックスを促し、発言を否定せず共感・受容を徹底する工夫をした。
3)タスク再計画と期待値再調整
 B氏のタスク優先度を見直し、AIエンジンの特定機能習得と開発に集中できるよう一時的にスコープを調整し、具体的目標を再提示した。過度なプレッシャーの軽減と小さな成功体験を積ませる狙いがあった。
 これらの対策は、単に技術的なテコ入れを行うだけでなく、B氏の心理面に配慮し、自律的な回復を促す必要があると判断した結果である。

2.3.対応策の実施状況と結果

 前述の対応策は、B氏とAリーダー協力のもと速やかに実施した。ペアプログラミング開始後、B氏はAリーダーのサポートで、技術課題への具体的な質問や相談が活発になり、表情も明るくなった。難解だったデータ前処理ロジックは、A氏との議論が新たな解決方法を導くきっかけになった。私との1on1では、B氏は徐々にプレッシャーや不安も話すようになった。私はB氏の努力を認め、小さな進捗も称賛し自己肯定感を高めるよう努めた。タスク再計画はB氏の精神的負担を軽減し、目の前のタスクに集中できる環境を提供した。これらの結果、約1か月後、B氏担当コアモジュールは、計画に対し3日遅延で完了。品質も、再テストで他モジュール同等レベルに改善された。
 特筆すべきはB氏自身の変化だった。終盤には習得技術のチーム内勉強会を自ら企画・開催するなど、期待したチーム技術力の向上に貢献し、他メンバーからも好評価を得た。この対応でB氏の能力発揮不全という危機を乗り越え、プロジェクトへの致命的影響を回避し後続フェーズへ円滑に移行できた。

(1596文字)

設問ウ

3.根本原因と再発防止策

3.1.事態が発生した根本原因

 事態の根本原因は、以下と結論付けた。
1)私の過度な期待とリスク評価の甘さ
 PMとしてB氏の過去実績を過信し、AI技術の難易度やB氏の性格を考慮せず、高難度タスクを実質単独でアサインした。B氏が成果を出せない場合のリスク評価やサポート体制計画が初期段階で不十分だった。これがB氏を精神的に追い込み、能力発揮を妨げた最大の要因と分析した。
2)組織的な技術習得支援体制の不備
 社内初のAI技術導入という重要課題に対し、特定個人に依存する体制だった。B氏が技術的困難に直面した際、相談できる専門家や体系的教育プログラム、ナレッジ共有の仕組みが組織として未提供だった。これがB氏の孤独感を深め、問題解決を遅延させた一因であり、組織の構造的問題だった。

3.2.立案した再発防止策

 今回のケースを踏まえ、以下の再発防止策を立案した。
1)要員アサインメントプロセスの見直しと強化
 スキル評価を多角的に行い、PMが対象要員と面談し期待役割との整合性を確認する。特に新規技術や高難度タスクでは、単独アサインを禁止し、メンター付与か複数名体制を必須とする。初期学習期間や研修予算を計画に明示し、現実的目標設定を徹底する。アサイン時点のミスマッチを減らし、要員が安心して挑戦できる環境を提供することで、能力発揮を最大化する狙いがある。
2)PMによるプロアクティブな要員ケアと早期問題発見の仕組み化
 PM等が全メンバーと月1回以上の1on1を制度化し、業務進捗、課題、キャリア、メンタル等を対話する。リスクが高い要員には、より頻繁なコミュニケーション機会を設け重点モニタリングする。要員の潜在の問題や阻害要因を早期察知し、深刻化する前に対処することで、リスク低減と成長支援を行うことが目的である。

3.3.再発防止策の実施状況と効果

 立案した対策は、所属開発部門のPM標準プロセスに反映し、後続プロジェクトで実践した。 次期システムで新フレームワーク導入時、若手C氏をアサインする前に本人と面談し、D先輩をメンターとし初期学習時間を計画、結果C氏は計画通り開発完了。B氏のような孤立や遅延は対策後発生していない。1on1はメンバーの不安や課題兆候を早期に捉え、大きな問題への発展前に対処可能となった。定量的には早期介入で手戻り工数が平均約10%削減された。
 これらの施策は部門内の他のPMにも共有され、組織展開中である。要員のモチベーション維持とスキルアップへの組織的意識が高まり、若手・中堅が新技術等へ前向きに挑戦しやすい風土が醸成されつつあり、組織のプロジェクト遂行能力向上と人材育成に貢献すると期待している。

(1165文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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