プロマネ午後Ⅱ論文の書き方がわからない人へ|一発で合格した実務経験者のサンプル解答【平成22年度:問2】

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

問題の原本はIPAにてご確認ください。

問題文

問2 システム開発プロジェクトにおける業務の分担について

 プロジェクトマネージャ(PM)には、プロジェクトの責任者として、システム開発プロジェクトの管理・運営を行い、プロジェクトの目標を達成することが求められる。プロジェクトの管理・運営を効率よく実施するために、PMはプロジェクトの管理・運営に関する承認、判断、指示などの業務をチームリーダなどに分担させることがある。
 この場合、分担させる業務をプロジェクトのルールとして明確にし、プロジェクトのメンバにルールを周知徹底することが重要である。チームリーダなどに分担させる業務として、例えば、次のようなものがある。
・変更管理における変更の承認
・進捗管理における進捗遅れの判断と対策の指示
・調達管理における調達先候補の選定
 ルール化する際にはチームリーダなどの経験や力量に応じて分担させる業務の内容や範囲などを決めたり、分担させた業務についても任せきりにせず、業務の状況について適宜適切な報告を義務付けたりするなどの工夫も必要である。

 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったシステム開発プロジェクトの特徴とプロジェクト組織の構成について、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べたプロジェクトにおいて、チームリーダなどに分担させた業務の内容と分担させた理由、分担のルールとその周知徹底の方法について、工夫を含めて800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた業務の分担に対する評価、認識した課題、今後の改善点について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.プロジェクト概要と組織構成

1.1.プロジェクト概要

 私がプロジェクトマネージャを担当したプロジェクトは、オフコンの基幹システムをプライベートクラウド環境へ移行するプロジェクトだった。現行システムは、属人化運用とデータ不整合とブラックボックス化が深刻な経営課題だった。本プロジェクトの目的は、業務プロセスの標準化、経営判断の迅速化、及び将来変化に柔軟なシステム基盤確立だった。
 総予算は約3億円、開発総工数は約300人月、計画期間は18ヶ月であった。納期厳守と予算超過不可が絶対条件であり、特にマイクロサービス等の、新技術へのスキル不足が課題だった。

 刷新対象の業務範囲は広範で全国多拠点に及び、各部門で異なる業務プロセスの標準化に関する合意形成のため、多数のステークホルダーとの調整が極めて重要であった。技術的特徴としては、COBOLから新言語への移行に加え、移行元データの品質問題や、新旧コード体系の複雑なマッピング作業を伴う膨大なデータ移行の難易度が特に高かった。開発はウォーターフォール型を基本としつつ、一部機能でプロトタイプも活用した。

1.2.プロジェクトの組織構成

 PMである私の下に、業務領域と技術要素を考慮した5つの専門チーム(「受注・販売管理チーム」等)を編成し、各チームに当社の若手・中堅社員及び協力会社のベテランエンジニアの中からリーダを1名ずつ任命した。チームメンバーは当社情報システム部門と協力会社から成り、合計約40名の混成チームであった。

 組織運営上の課題として、チームリーダのマネジメント経験や技術スキルに差があり、これが協力会社を含む混成チーム特有のコミュニケーションスタイルや、開発標準の徹底の難しさを生んでいた。この状況が、チームリーダへの適切な業務分担のための、明確なルール化の必要性を強く意識させた。

(800文字)

設問イ

2.チームリーダへの業務分担

2.1.分担業務の内容と選定理由

 運営効率化、リーダ育成、自身の重要業務への注力を目的に、リーダのスキルや担当業務特性を考慮した業務分担を行った。
1)進捗管理と軽微な遅延対策
 各チーム内の詳細タスク管理と、2日以内の遅延に対する、リカバリ策の立案と実行および管理を分担した。これはPMの管理負荷を軽減し、現場での迅速な意思決定を促すためである。また、リーダ自身の計画実行力や、問題解決能力の育成効果も狙った。予算制約からPMO要員が不足していたため、この分担は不可欠だった。
2)単体テスト計画のレビューとテスト結果承認
 担当チーム開発分の単体テスト計画に対するレビューと、テスト結果の承認を分担した。専門知識を持つリーダによる品質保証の効率性と専門性の向上、及びリーダの品質への当事者意識醸成を狙った。これにより、開発の初期段階から品質を確保し、手戻りを減らすことを期待した。
3)小規模な技術課題解決と軽微な仕様問合せ対応
 担当範囲内の技術課題解決や、影響が限定的な仕様の問合せ対応を分担した。PMへの業務集中を避け、開発速度維持とリーダ自身の技術力向上及び判断力育成を狙った。

2.2.業務分担のルール

 分担業務の範囲、権限、責任、報告義務、エスカレーション基準を「プロジェクト運営ルールブック」として明文化した。
 分担範囲や権限(例:エスカレーションを不要とする遅延日数)については、リーダの経験やスキルアセスメント結果に基づきて差を設けた。進捗は週次報告、品質はテスト結果報告を義務化し、課題は管理システム登録を必須とした。エスカレーション基準も具体的に定め、判断に迷う状況を減らし、私が早期に重要課題に介入可能とすることを重視した。この基準は、プロジェクト全体への影響を最小限に抑える重要なものと考えた。
 実効性を高めるの工夫として、ルールブックのドラフト段階でリーダにレビューを依頼し意見を反映した。例えば、あるリーダからは「エスカレーションの判断基準が曖昧だと遅延を招く」との意見があり、これを踏まえ基準をより具体化した。また、各リーダのスキルと権限を一覧化したマトリクスを作成し、認識齟齬を防止した。この工夫は、リーダの納得感を高め、ルール遵守を促す上で重要と考えた。

2.3.ルールの周知徹底方法

 キックオフで全メンバーに方針を説明後、リーダ向け説明会でルールブックを詳細解説し質疑応答の時間を設けた。説明会はワークショップ形式とし、具体的なトラブルシナリオに基づいたケーススタディを行い、リーダ自身に判断基準やエスカレーションのタイミングを能動的に考えてもらうことで、ルールの実践的な理解を深めた。ルールブックは共有ポータルに掲載し常時閲覧可能とした。
 周知において工夫したことは、単なる説明に留めず、業務分担のメリット(PMの負荷分散による重要判断への集中、リーダのスキルアップ等)を丁寧に伝え、リーダの当事者意識とモチベーション向上を重視したことである。週次リーダ会議で運用状況や改善点を共有し、ルールの形骸化防止と継続的改善、及びリーダ間の知見共有を促進することを狙った。

2.4.分担業務を効果的に機能させるための工夫

 分担業務について、週次進捗報告、月次品質報告、重要課題発生時の臨時報告を義務付けた。リーダに「任せきり」にせず、週次リーダ会議や月1回の1on1ミーティングを通じて積極的に私が関与し、相談対応や意思決定支援、精神的サポートを行い、リーダの判断能力向上とプロジェクト全体の一貫性を維持した。特に1on1では、リーダが抱える潜在的な不安やチーム内の人間関係といった、デリケートな問題も早期に把握し対応することを心掛けた。

(1594文字)

設問ウ

3.業務分担の評価と今後の改善

3.1.業務の分担に対する評価

 チームリーダへの業務分担は、プロジェクト目標達成に大きく貢献し、PMの戦略的業務への集中、意思決定迅速化、リーダ成長といった肯定的な効果があったと高く評価している。PMの業務負荷が約15%軽減され、重要業務に注力できた。また、現場の問題解決リードタイムが平均0.5日短縮され、テスト工程の効率化に寄与した。責任ある業務を通じリーダのスキルが向上し、主体的な行動が目立つようになった。
 これらの効果が複合的に作用し、本プロジェクトは納期及び予算上限を遵守して、本番稼働を達成できた。品質面も目標をクリアし安定稼働を実現した。特に、進捗管理分担による遅延の早期発見と、リーダレベルでの迅速なリカバリは、小規模遅延のクリティカルパスへの影響を未然に防ぎ、納期遵守に大きく貢献した。

3.2.業務の分担を進める中で認識した課題

 効果はあったものの、いくつかの課題も認識された。
1)チームリーダのスキル差による効果のばらつき
 権限差を設けても、経験の浅いリーダはPMへの依存度が高く、期待した負荷軽減効果が得られない場面があった。このスキル差は、開発標準の解釈や遵守度合いにも影響し、「開発標準の徹底の難しさ」の一因ともなった。
2)報告内容の質と粒度の不均一性
 標準フォーマットでも、問題分析の深さや対策案の具体性に差があり、私から追加でヒアリングする場面があった。
3)権限委譲の範囲と責任に関する解釈の曖昧さ
 ルールブックで範囲や権限を定義したが、「軽微」「小規模」等の定性的基準ではリーダ間で解釈に揺れが生じ、判断遅延や意図しない対応リスクを生んだ。これはルールの更なる明確化の必要性を示唆した。

3.3.今後の改善点

 これらの課題を踏まえ、今後のプロジェクトでは以下の改善策を講じたい。
1)段階的・個別化された権限移譲
 チームリーダのスキルに応じた権限移譲を進めるため、スキルアセスメントを多角化し個別育成計画を策定、習熟度に応じ段階的に権限を移譲しPMが伴走型で支援する。これによりスキル差による課題を軽減し、開発標準の理解と実践力向上も図る。
2)報告スキルの向上策
 チームリーダの報告スキルを向上させるため、期待する報告の観点や分析手法に関する研修を実施し、また具体例を提示する。PMからの定期的かつ具体的なフィードバックで、報告の質向上を継続支援する。
3)権限範囲の明確化とナレッジ共有
 権限範囲の明確化のため定性的表現を避け、可能な限り定量的基準を明記し、解釈のブレをなくす。また、判断事例をナレッジ化して共有し、リーダ間の判断基準の目線合わせとルール理解深化を図り、開発標準の円滑な適用に繋げる。

(1182文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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