プロジェクトマネージャ午後Ⅱ論文対策|実務経験を持つ一発合格者が書いた解答例【平成21年度:問3】

こんな人におすすめ
  • 午後Ⅱ(小論文)でいつもつまづいている
  • 小論文のネタを探している
  • 合格者のアドバイスを受けたい

プロジェクトマネージャ試験の午後Ⅱの小論文を作成してみました。小論文のネタ探しや午後Ⅱ対策の参考にしてもらえるとうれしいです。

問題文および設問

具体的な問題はIPAにてご確認ください。

問題文

問3 業務パッケージを採用した情報システム開発プロジェクトについて

 近年の情報システム開発では、業務プロセスの改善、開発期間の短縮、保守性の向上などを目的として、会計システムや販売システムなどの業務用ソフトウェアパッケージ(以下、業務パッケージという)を採用することが多くなっている。このような情報システム開発では、上記の目的を達成するためには、できるだけ業務パッケージの標準機能を適用する。その上で、標準機能では満たせない機能を実現するための独自の“外付けプログラム”の開発は必要最小限に抑えることが重要である。
 プロジェクトマネージャ(PM)は、例えば、次のような方針について利用部門の合意を得た上でプロジェクトを遂行しなければならない。
・業務パッケージの標準機能を最大限適用する。
・業務パッケージの標準機能では満たせない機能を実現する場合でも、外付けプログラムの開発は必要最小限に抑える。
 外付けプログラムの開発が必要な場合には、PMは、開発が必要な理由を明確にし、開発がプロジェクトに与える影響を慎重に検討する。その上で、開発の優先順位に基づいて開発範囲を見直したり、バージョンアップの容易さなどの保守性を考慮した開発方法を選択したりするなどの工夫をしなければならない。

 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わった情報システム開発プロジェクトの特徴を、採用した業務パッケージとその採用目的とともに、800字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた情報システム開発プロジェクトの遂行に当たり、外付けプログラムの開発が必要となった理由、開発を必要最小限に抑えるために利用部門と合意した内容、合意に至った経緯、及び開発した外付けプログラムの概要を、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた外付けプログラムの開発に当たり、業務パッケージ採用の目的を達成するためにどのような工夫をしたか。その成果、及び今後の改善点を含め、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

解答例

設問ア

1.プロジェクト概要とパッケージ(PKG)採用

1.1.プロジェクト概要

 私が担当したプロジェクトは、中堅製造業A社の販売・在庫管理システム刷新である。既存システム老朽化による月次決算遅延、機会損失、法規制対応遅延リスクが経営課題であった。プロジェクトの至上命題は課題の抜本的解決であり、新システムで「業務標準化と効率向上」を断行した。対象は販売・購買・在庫管理全般、予算約2億円、期間18ヶ月の制約下で、社内外で体制を構築。私はPMとして、プロジェクト全体を推進した。

1.2.PKG導入目的と選定仕様

1)導入目的
 経営層の期待と深刻な経営課題を踏まえ、PKGの採用の最大の目的を「業務標準化と効率性向上」とした。なぜなら、A社の非効率性は複雑・属人化した業務プロセスに起因し、その標準化・効率化こそが課題解決の根源と考えたためである。PMとして、単なるシステム導入ではなく、全社的な業務改革を成し遂げる強い意志で臨んだ。プロジェクト期間の短縮やコスト削減も重要課題だったが、本業務改革達成の前提条件と位置付けた。この目的が、プロジェクトの方向性を明確にし、関係者の意識統一に不可欠と判断した。
2)選定PKG仕様
 最重要目的である「業務標準化と効率性向上」の確実な達成のため、PKG選定は慎重に行った。選定にあたっては、業務適合性、拡張性、そして業界標準を反映し業務改革の推進力となるかを重視したが、その理由は持続可能な業務基盤を構築し、将来の事業変化へも即応できるシステム投資効果を最大化するためであった。結果、実績豊富で一部カスタマイズ可能な汎用PKGを選定。主要機能、マスタ管理、レポートも標準装備だった。PMとして、本PKGがA社の業務改革を支援し、設定した唯一の目的達成に最も貢献すると総合的に評価し、経営層から承認を得た。

(790文字)

設問イ

2.外付け開発(アドオン)の判断と対応

2.1.アドオンの必要性判断

 プロジェクトの目的である「業務標準化と効率性向上」を踏まえ、PKG標準機能の最大限適用を方針としたが、経営戦略上重要だった、以下の業務要件が標準機能では対応不可であり、限定的なアドオンは不可避と判断した。
1)PKG標準外の業務
 業界団体への月次報告書のフォーマットが、PKG標準・カスタムレポートでは独自集計・レイアウトに完全対応できず、手作業では毎月2人日の工数が見込まれた。また、主要取引先とのEDI連携のプロトコルは、PKGは非対応だった。取引先との契約上、即時切替は困難だったため、事業継続への影響を鑑み、連携の維持を必須とした。これらはアドオンが必要と考えた。
2)継続必須の競争力要素
 A社の競争優位性の一つである、特定大口顧客向けの複雑な価格ロジックが、標準設定では対応できなかった。価格体系の単純化は顧客離反による売上減に繋がる、と経営層も懸念した。本機能を維持するため、アドオンは経営戦略上必須と結論付けた。

2.2.アドオン範囲の最適化と合意

 アドオンはPKG導入メリットを損なうため、必要最小限のアドオンを狙って、以下のプロセスで合意形成に注力した。
1)合意形成の基本方針
 PJ開始時より「業務をPKGに合わせる」を大原則とし、安易なアドオンは認めない方針を明確化した。アドオンは費用対効果、業務継続性、戦略的重要性を踏まえ、真にやむを得ないものに限定すると全関係者と共有した。
2)代替案の検討
 FIT&GAP分析でギャップ項目をリスト化し、業務部門とのワークショップで「標準機能利用」「運用回避」「業務プロセス変更」「アドオン」の各案を提示した。コスト・期間・リスク・影響を比較表で明示し、客観的な判断材料を提供した。例えば、ある帳票の特定項目出力要求に対し、背景を確認するとデータ参照頻度が低いことが判明、標準機能のドリルダウンで代替可能と合意した。
3)最終的なアドオン範囲
 協議の結果、当初の開発要求15件のうち、運用変更等で12件が代替可能となり、アドオン開発は前述の3件(報告書、EDI連携、価格設定)に限定された。これら3件も、開発範囲を最小化(報告書は一部手入力許容で複雑化を回避、EDIは最小限の変換部のみ、価格ロジックは標準機能と追加部品の組合せで影響を局所化)でき、将来の保守コストとPKGのバージョンアップへの追随容易性を考慮した上で、私は「必要最小限」のアドオンだったと判断した。
4)関係部署との合意プロセス
 利用部門の「現行業務完全再現」要望に対し、私はPKG導入目的とアドオンリスクを粘り強く説明した。特に反対の強かった価格設定ロジックは、経営会議で私がリスクと代替案を提示し、限定的アドオンとする経営判断を得た。データに基づく説明とこのトップダウン承認が現場の理解に繋がり、約2ヶ月での合意形成に成功した。

2.3.アドオンプログラムの概要

 上記合意に基づき、以下の3つのアドオンプログラムを開発した。
1)特定報告書作成モジュール
 PKGのDB(参照用)から実績データを抽出し、指定ロジックで加工、業界団体指定のCSVファイルを出力する夜間バッチ。
2)既存システム接続部品
 PKG受発注データを既存EDIフォーマットに変換しファイル連携。PKG標準のファイルI/Oと連携し、フォーマット変換部を開発。
3)独自価格ルール計算部
 PKG受注画面からAPIで呼出。顧客・商品・取引実績等から複雑な割引計算を行い、適用単価を返す独立モジュール。PKG本体の改変は回避した。

(1551文字)

設問ウ

3.外付け開発(アドオン)の管理と評価

3.1.PKG活用とアドオン開発における工夫

 今回の3件のアドオンでは、PKGの採用目的、特に「業務標準化と効率向上」を損なわず、PKGメリットを最大限活かすため、設計・開発・品質管理で以下の工夫を凝らした。
1)保守性の確保
 PKGバージョンアップ時の影響を最小限に抑え、アドオンの継続的な保守を容易にするため、以下の設計・管理方針を徹底した。
・アドオンプログラムはPKG本体と疎結合とする。
 API等を介した連携を原則とすることでシステム間の独立性を高めた。
・アドオンが担当する機能範囲を真に不可欠なものに絞る。
 将来的な機能廃棄の容易性も考慮した。
・開発ドキュメントはPKG導入ベンダーの標準に統一
 情報共有を進め属人化を排除することで、自社での保守体制構築を目指した。
2)開発工程の効率化
 アドオン開発における課題は、リソース制約下での品質確保と手戻り防止であった。このため、まずアドオンの優先度を業務影響とリスクから明確にし、EDI連携のような最重要機能から段階的に開発・検証する方針を採った。さらに、全開発フェーズで利用部門との週次レビューを義務付け、プロトタイプを用いた具体的な確認を通じて、認識の行き違いを初期段階で解消し、開発効率を高めた。
3)システム品質の確保
 アドオンによるシステム障害リスク低減のため、PKGとの結合テストで問題を徹底的に洗い出した。データ整合性、性能、異常処理を検証し、アドオンの安定性を確認した。

3.2.アドオン開発の成果

1)計画達成とリソース最適化
 アドオン対象を3件に大幅に絞り込んだ結果、アドオン開発工数を約70%圧縮。結果、プロジェクト全体の遅延や予算超過を回避できた。
2)長期的な運用保守性の確立
 稼働1年後のPKGバージョンアップ時にも、3件のアドオンは無改修で対応可能だった。これは疎結合を徹底した成果であり、年間保守費も約15%削減見込みである。
3)業務変革の実現と利用者からの信頼獲得
 報告書作成時間は月2人日から0.5時間へ、価格計算ミスも削減され営業効率が向上。利用者アンケートで8割以上が肯定、PMとして業務改善効果を実感した。

3.3.今後の改善点

1)PKG導入プロセスの見直し
 PKG選定時のFIT&GAP分析の深化と、複雑要件に対するPoCの標準工程化により、アドオン要否判断の精度を組織的に高める。
2)アドオンのガバナンス強化
 アドオンの全社的な判断基準を整備し、客観性と迅速性を担保した意思決定プロセスを確立する。
3)専門家ネットワークの活用促進
 PKGベンダー等の外部専門家との連携体制を強化し、アドオン設計や品質向上に積極的に活用する。

(1196文字)

まとめ

自分自身の論文のネタにするためには、サンプル論文はいくらあってもよいと思います。
このブログに記載したサンプル論文が役に立つとうれしいです。

参考図書

自分が受験したときに使用した参考図書は、下記の旧版です。
「最速の論述対策」で、回答文章のモジュール化と章立ての基本テクニックを学び、「合格論文の書き方」で自分の経験でモジュール化できなかった部分の補強を行い、過去問で実際に手書きの練習をしました。

上記はプロジェクトマネージャ試験の対策本ですが、ITサービスマネージャ試験でも通用する内容です。

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